私を構成する9枚【寄稿/タカレン編】

私を構成する9枚【寄稿/タカレン編】

#私を構成する9枚--その文言通り自身の音楽遍歴を語る上では決して切り離せない音楽作品を9枚選ぶハッシュタグ。musitでは書き手自身を掘り下げるべく個人の音楽的嗜好に迫る企画としてお送りしている。

アーティストからリスナーに音楽が手渡される。その過程で物語が生まれ、同じ作品でも受け手の数だけドラマがある。そういった「音楽は個人史である」という側面を、より読者の皆様に広く共有し楽しんでいただきたいという思いから、本企画の寄稿を募集。今回はその公募分から掲載する。選出した9枚の中から、特に思い入れの強い3枚について語っていただいた。

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Eminem『The Marshall Mathers LP』(2000)

今回私の音楽観の形成に役立った、<原体験>となった作品を中心に選出した。私はいわゆる「名盤」と呼ばれる作品を最初に聴くことが多く、そのため、リストに目新しさが欠けていることをお詫びしたい。2018年9月16日、中学2年生であった私はとある曲をYouTubeにて発見した。それはエミネムの「Killshot」で、その後の私の人生を大きく変えた曲となった。ヒップホップに初めて触れ、そのクールさに虜にされた私はここから音楽へ傾倒していくこととなる。その中で特に印象に残っているのが、彼の2ndである本作。初めて聴いた瞬間が深夜だったこともあり、そのダークな世界観が自らに投影されるような感覚になり、そこで初めて音楽に対する共感を覚えた。

Mile Davis『Bitches Brew』(1970)

私が本作を初めて聴いたのは中学3年生の時、ヒップホップやロックだけでなく、より多くの音楽に触れようと意気揚々としていた時のことである。『Kind of Blue』は難なく突破し、その次に名盤とされる本作に挑んでみたが、これがまあ難しい。1曲が10分超なのは当たり前で、最長約27分の曲もある。内容自体も非常に難解で、キャッチーさなんてあったものではない。その時点では理解できなかったが、「これは名盤である」という風格だけは伝わってきた。このアルバムが悪いのではなく、理解できない私が悪いのだ、と考えるようになり、最終的に本作は私の音楽の許容範囲を大きく押し広げるのと共に、難解そうな作品にも果敢に挑む勇気を与えてくれた。

Parannoul『To See the Next Part of the Dream』(2021)

私が本作を知ったのはほんの数ヶ月前のことである。当時シューゲイザーに傾倒し始めてきた私にとって、その荒々しくも切ない音像は晴天の霹靂であった。唸るような音の壁、叙情的に流れるピアノ、その後ろで激しく主張するドラム、韓国語を全く知らないため歌詞の内容は分からなかったが、とにかくその音楽にえも言われぬ感動を覚えた。中学2年生の頃から音楽に傾倒し始めて、高校2年生になった今、こんなにも距離が近いようで遠い存在に出会い、また明日生きるための指標ができるとは思いもしなかった。明らかに後追い世代である私には同世代のヒーロー呼べるべきミュージシャンが明らかに少なかった。そこで現れた彼は、私にとってのリリイ・シュシュである。

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◯執筆=タカレン
Twitter:@binradhinsaikyo

musit編集部