私を構成する9枚【寄稿/新都心編】

私を構成する9枚【寄稿/新都心編】

#私を構成する9枚--その文言通り自身の音楽遍歴を語る上では決して切り離せない音楽作品を9枚選ぶハッシュタグ。musitでは書き手自身を掘り下げるべく個人の音楽的嗜好に迫る企画としてお送りしている。

アーティストからリスナーに音楽が手渡される。その過程で物語が生まれ、同じ作品でも受け手の数だけドラマがある。そういった「音楽は個人史である」という側面を、より読者の皆様に広く共有し楽しんでいただきたいという思いから、本企画の寄稿を募集。今回はその公募分から掲載する。選出した9枚の中から、特に思い入れの強い3枚について語っていただいた。

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サカナクション『DocumentaLy』(2011)

スピッツで音楽を主体的に聴くスイッチが入り、サカナクションによって本格的にその扉が開いた。当時サカナクションのPV(「アルクアラウンド」や「バッハの旋律~」)が話題になっており、気になっていた所にこのアルバムがリリースされ、それからずっとこのアルバムばかり聴いた。中学で友達にも勧めて、歌詞カードを持ち歩き、時折口ずさんでいた。そこからサカナクションや山口一郎のインタビュー記事、またそれが載った音楽雑誌を読むようになり、「邦楽ロックシーン」を意識するようにもなっていった。アルバムは、キャッチーさが全面に感じられる一方、一貫して内省的な歌詞のギャップが魅力だ。

ピノキオP feat. 初音ミク『Obscure Questions』(2012)

ボカロ音楽から最も好きな1枚をセレクト。私が中学生だった頃はボカロ全盛期でありネットに触れるものは皆知っていたような時代で、最初はボカロが嫌いだったが、livetuneの「Tell Your World」に感動してから聴くようになり、ピノキオPがその決定打となった。音楽性としては、フォークやロックとテクノ・エレクトロニカの混合と言えようか。実験的な音作りもありながら「ボカロらしい」ポップスとして成り立っているバランスが絶妙。また、歌詞にはエッジの効いた風刺や社会批判を織り込んだものも多く、それが初音ミクという無機質な歌い手のおかげで抵抗なく聴ける妙もある。大人になってこそ刺さる部分もあり、今になってもよく聴き返す。

Syrup16g『coup d’état』(2002)

ほかに挙げたアルバムとは違い、Syrup16gを聴き込み始めたのは大学生になってから。最初はロックとしてのカッコ良さから好きになったが、一層引き付けられたのは歌詞の部分。自然体の中に潜む絶望のような感情を呟くような文体で、上手く歌に昇華されている。大学で悩むようなことがあれば、その度Syrup16gに手を出していた。シロップの中でもこのアルバムは音も詩もアグレッシヴな側面が強く、最も惹き付けられた1枚である。また、Syrup16g好きの方とSNSで繋がる中で、シロップ周辺のバンドなどを教えてもらい、90年代~00年代のロックへの関心を広げるキッカケにもなった。

◯執筆=新都心
Twitter:@space_opera_
note:https://note.com/shintoshin

musit編集部