【『(W)AVE Vol.2』発売記念】コラボビール醸造への道──古き良きCDの味を求めて

【『(W)AVE Vol.2』発売記念】コラボビール醸造への道──古き良きCDの味を求めて

先日musitが制作/執筆を行なったZINE『(W)AVE』のVol.2が発売された。Vol.1の「スピッツ特集」から約1年──今回のテーマは「CDリバイバル/めくるめくCDの世界」。

前号よりもかなりニッチな素材に焦点を当てたこともあって、身内にとどまらず七尾旅人さんやディスク百合おんさんなどmusitとはこれまで関わりを持たなかった錚々たる方々からも寄稿を募った。musitがエッセイや小説など文芸方面への展開にも注力しているため、イグBFC王者の吉田棒一さんにも「CD」をテーマにした短編『ベガスヒップグライダー』を寄せていただき、ページ数はもとより内容的にも厚みのある書籍に仕上がった。

『(W)AVE Vol.2』についての詳細はmusitのTwitterや各寄稿者が発信している情報を参照いただくとして、ここでは『(W)AVE Vol.2』の制作と併走させていたカンパイ!ブルーイングとのコラボビール、『神宮坂ドッペルボック』の製造経緯を書き留めておく。結論から言うと「めっちゃ美味いクラフトビール」が完成しました。

取材/文=星野

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今回『(W)AVE』の発売に伴うクラフトビールのコラボレーションに快諾いただいたのは、東京都は文京区にブルワリーを持つカンパイ!ブルーイング。カンパイ!ブルーイングは荒井さんが1人で醸造スケジュールを組み製造〜出荷まで行うマイクロブルワリーで、飲む人が口を付ける前に思わず「カンパイ!」と言ってしまいたくなるような、スタイルの定義に沿いながら個人の嗜好を選ばないビールをコンセプトに製造を行っている。

今回のテーマは『(W)AVE Vol.2』のの特集タイトルに合わせて「CD」とすることに。いやいやCDの味って何だよ…と思いつつも、6月2日、編集部オフィスにて方向性を決める検討会を実施。ベアードブルーイングの『修善寺ヘリテッジヘレス』、常陸野ビールの『常陸野ネスト ラガー』、COEDOの『伽羅-kyara-』などがイメージ候補として会議机に並び、編集部と暇な弊社社員で1種類ずつ試飲しながら慎重に吟味した。

選考のポイントは「CD最盛期を想起させる奥行きや懐かしさ」と「休日、室内でCDと共に味わいながら飲みたいと思えるか」の2点。それもあって、候補のビールはどれもキレ味よりもコクを重視した比較的マイナー志向のものばかり。試飲を終えてからどれが一番美味しかった?と順に尋ねると、満場一致でヴァン・スティーンベルグ醸造所の『ルートボックビア』に軍配が上がった。

ムキムキのヤギが怖可愛いデザイン。「ボック」はドイツ語で「雄ヤギ」を意味する言葉らしい。

ボックはドイツの伝統的な、まさに「古き良き」ビアスタイル。特徴としては7〜高いもので14.5%まであるハイアルコールで、コーヒーやパン、チョコレートなどを思わせるスタウトに近い味。検討会から2週間後、早速編集部でカンパイ!ブルーイングを訪問。6月中旬ながらほとんど夏!と言っても差し支えない気温も相俟って、荒井さんにイメージを伝える目的で余分に持参した上記のビールが美味しいこと美味しいこと。今回の経緯と目的を説明後、改めて荒井さんへ打診。

「実はねえ、僕自身ボックを作ったことがないんですよ…」

「でも、逆張り的な姿勢で面白そうですね。笑 やってみましょう!」

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カンパイ!ブルーイングは4つの貯蔵タンクを醸造サイクルに合わせて使い分け、コンスタントにビールを醸造/出荷するマイクロブルワリーだ。だから、その場ですぐに醸造して『(W)AVE』の発売まで長期保管しておくことはできない。『(W)AVE』の発売想定日から逆算して、その日に納品できるようスケジュールを調整。仕込み日は、全原稿の回収締切に近い10月20日に決定した。

仕込み当日の朝、本コラムの素材収集のために再びカンパイ!ブルーイングを訪問。仕込みにかかる時間は全体で約8時間。荒井さんは早朝5時から醸造室に立ち、14時頃まで丹念に作業を行う。ブルワリーのすぐ目の前を流れる江戸川沿いの木々が少しずつ色づき始めた秋口、醸造室は巨大な茹で釜の中でビールの原液が煮えているためじっとりと蒸し暑く熱気を帯びていた。

醸造室の隅に立って邪魔にならないようにしながら見学していると、荒井さんから飲みますか?と黒い液体を渡された。受け取ると熱々で甘い香りがする。すぐに先程まで釜の中で茹っていた糖化液だと気づいた。飲んでみると黒蜜のような優しい甘さと醤油に似た深いとろみが口内に広がって美味しい。荒井さん曰く、アルコール度数の高いビールを作るには大量の砂糖を加える必要があるため、仕込み時点ではガツンとした甘味になるとのこと。

ホップを加えたらまたしばらく煮込んで、3階の醸造室から2階の貯蔵室内のタンクへいくつもホースを繋げて液体を輸送する。ちなみにカンパイ!ブルーイングはこの特殊な構造であるため、醸造過程で出た廃棄物もゴミ袋にまとめてロープでつるし、窓から下ろすクレーン方式(詳しくはインタビュー記事を参照)。

今回は特別にホップを星野が投入させていただきました

2階のタンクへ輸送

ここから発酵、冷却を経て約2週間前後でビールが完成。果たしてその味は…?

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11月に入り、いよいよ『(W)AVE Vol.2』の制作も大詰めに。並行して、ビールの名称やラベルのデザインも決めておく必要があったため、編集部内でいくつか案を出し合って名前を『神宮坂ドッペルボック』に決定した(カンパイ!さんの記名ルールに「坂」を付ける、というのがあったので、今回はそれを踏襲する形に)。ちなみにカンパイ!さんの方では『山羊坂ドッペルボック』として販売・流通されている。

そして12月9日、ビール合計120本が編集部オフィスに到着。

黄色いバイクに跨って編集部オフィスまで配送してくださった荒井さんに、改めて今回のお礼を伝えると「作ったことがないスタイルでしたが、挑戦的で僕自身も楽しかったです」と言っていただけた。かなり癖の強い注文でしたが、応じていただき本当にありがとうございました。

ちなみにラベルは『(W)AVE Vol.2』の表紙デザインを採用しました。飲んだら一輪挿しにするのもグッドです。

早速飲んでみるとスタウトよりも口当たり軽く、余韻に至るまですっきりした印象。カカオのような深みやドライフルーツに近い華やかさもあり、度数に対して非常に飲みやすく美味しいです。休日の午後、CDを聴きながらゆっくり味わうのに最適かと。

『神宮坂(山羊坂)ドッペルボック』はmusitの通販サイトにて販売中。CDをテーマに様々な寄稿者が異なる観点から執筆した『(W)AVE Vol.2』も好評販売中です。是非お手に取って味わって(読んで)みてください…!

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神宮坂ドッペルボック

購入URL:
https://store.dandy-music.com/product/musit-jgz-doppel-bock/

musitのZINE『(W)AVE Vol.2』とカンパイ!ブルーイングのコラボビール。「CDリバイバル」と重なる味わいを追求した奥行きのある味わいに。価格は¥1,000。

[品目]発泡酒
[原材料]麦芽(ドイツ製造)、ホップ、カラギナン
[内容量]330ml(ビン)
[アルコール度数]7.5%
[製造]株式会社グランブルー/カンパイ!ブルーイング

(W)AVE Vol.2

購入URL:
https://store.dandy-music.com/product/musit-wave-vol2/

musit オリジナルZINE『(W)AVE Vol.2(※よみ:ウェイヴ)』。特集は「CDリバイバル/めくるめくCDの世界」。価格は¥1,500。

 

musit編集部