【WorkFromHome】在宅ワークの背中を押す9つの音楽--おすしたべいこ編

【WorkFromHome】在宅ワークの背中を押す9つの音楽--おすしたべいこ編

緊急事態宣言が発令され、気付けばそれまでの「普通」が失われ新たな「当たり前」が定着し始めている今日この頃。在宅勤務もそろそろ慣れた--という人がいる一方で、「捗らない」という人も多いのではないでしょうか?

弊メディアライター陣がお届けする、在宅勤務にぴったりのプレイリストを紹介する連載企画「WorkFromHome」。第2回目はディスクユニオンスタッフと音楽ライターという2つの顔を持つ、おすしたべいこによる9曲。

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プレイリストの個人的ルール

僕はどうも凝り性な性分でして、妙なところでこだわってしまうことが多いです。

それゆえ、いざプレイリストを作ろう! と意気込んでも、作っては消して、作っては消して…を繰り返してばかりで、なかなか完成しません。ただ、結局その過程が楽しくもあり、定期的に曲を選びながらウンウン唸っているわけです。

ということで、今回も悩みましたが、結果的に満足のいくものを作ることができました。今回はWFH用のプレイリストということで、下記4点の個人的ルールを設けています。

曲と曲の繋がり

作業をするうえで、やはり大まかな流れがあった方が気分が乗りやすいのではないかと思い、サウンドの繋がりがある程度自然になるようにしてみました。

楽曲のタイトル

全曲ではないですが、在宅ワークを連想できるようなタイトルの楽曲をいくつか選んでいます。そして、これは曲の繋がりにも活きてきます。シャレというか、ちょっとした遊び心みたいなものです。

日本語の楽曲は極力使用しない

どうしても母国語である日本語が作業の邪魔をしてしまう…という懸念を回避するためです。僕は普段から日本語以外かインストの楽曲を作業用BGMに選ぶことが多いです。

フックとなる盛り上がり

基本的には静かで落ち着きのある楽曲を中心に選びましたが、所々に盛り上がるような展開も入れています。緩急というか、要はメリハリです。

さて、もう前置きはいいでしょう。以上を踏まえ、全9曲をセレクトしました。楽曲ごとに紹介していきます。

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①Misty Coast「Eleven Months」

ミスティー・コーストは、ノルウェーのベルゲンを拠点に活動するシューゲイザー・バンド、メガフォニック・スリフトのメンバーによるドリームポップ・デュオ。彼らが2019年にリリースしたアルバム『Melodaze』から、冒頭のリード曲をセレクトしてみました。

甘美でドリーミーなヴォーカルが心地良く、ポップなサウンドも後押しして、スムーズな在宅ワークのスタートを切れるのではないでしょうか。

スキマ時間にMVもおすすめ。8ミリフィルム風の映像がノスタルジックな雰囲気を醸し出しています。

②Without Stopping「Bowery Electric」

ニューヨーク出身のポストロック・デュオ、バワリー・エレクトリック。90年代の時点でシューゲイザーやアンビエント、トリップ・ホップなどをブレンドしたサウンドを確立していましたが、同時期に活躍したマッシヴ・アタックやポーティスヘッドの陰に隠れてしまっているのが非常に惜しいです。

今回は、1996年にリリースされたアルバム『Beat』からセレクト。約5分間、ゆっくりと刻まれるビートとアンビエントなサウンドがひたすら鳴り続けます。

「Without Stopping」--止まらずに作業し続けましょう、ということです。これぞ作業用BGM。

③レイ・ハラカミ「joy」

日本が生んだエレクトロニカの巨匠、レイ・ハラカミ。彼はローランドの音源モジュールであるSC88-Proをほとんどの作品で使用し、日本的な繊細さを持つ独自のサウンドを創り出しました。サカナクションの山口一郎氏もフェイバリットに挙げるアーティストの1人です。

非凡な才能の持ち主でしたが、2011年に40歳という若さで急逝。これは大きな文化的損失と言えるでしょう。

2005年の4thアルバム『lust』に収録された「joy」は、レイ・ハラカミの魅力を端的に伝える楽曲ではないでしょうか。後半で一気に音が押し寄せてくる展開は、作業が波に乗ってきてナチュラル・ハイの状態に突入する感覚と似ている気がします。

こうなればこっちのもの。何事も楽しむことができたらどれほど良いでしょう。

「joy」のライブ映像も息抜きの際に是非。亡くなる前年ですね…。アレンジを加えながら楽曲を再現していく様子に鳥肌が立ちます。

④Galileo Galilei「4」

Galileo Galileiが2011年にリリースしたシングル「さよならフロンティア」より、カップリング曲をチョイス。当時の彼らはシングルごとにインスト曲を収録するのが恒例となっており、この「4」もそのシリーズの1つでした。

ギター、ドラム、ベース、そしてシンセサイザーの絶妙な掛け合いが魅力の楽曲で、その軽快さに自然と身体が動いてしまいます。

当時、彼らが海外のインディー・ロックへと接近していく過渡期にあったことを踏まえると、どこかそれとリンクする高揚感もあるように感じられ、純粋に音を楽しんでいる様子が伝わってくるようです。

さあ、この調子でさらに作業を進めましょう。

⑤Aldous Harding「Damn」

ニュージーランド出身のシンガーソングライター、オルダス・ハーディング。彼女が2019年に名門4ADからリリースしたアルバム『Designer』からセレクトしました。

ピアノの同じフレーズがループし続けるシンプルでミニマルな楽曲ですが、彼女にしか出せない深みのある美しさに満ちています。まさに4AD的と言える、ダークでメランコリックなサウンドが素晴らしい。

せっかく波に乗っていた作業も、急なトラブルで台無しになることも時にはあるでしょう。そんな時も心を落ち着かせて。「Damn」と思いながらも、作業は続けなければいけません…。

少し疲れてきましたか? そんな時にも、彼女の歌声は優しく耳に馴染んできます。それにしても、ため息が出るほど美しい楽曲ですね。

⑥Maison book girl「おかえりさよなら(Instrumental)」

ニューエイジ・ポップ・ユニット、通称ブクガことMaison book girl。2018年にリリースしたシングル「elude」より、収録曲「おかえりさよなら」のインスト・バージョンを選んでみました。

雨音と美しいピアノのフレーズは、怒りや悲しみなど全て洗い流してくれるかのようです。

ブクガの楽曲は、インストだけで聴いても単体の楽曲として成立してしまうほどクオリティが高いことでお馴染みですが、この楽曲も例外ではありません。

余談ですが、原曲のMVを初めて観た際、僕は涙を堪えることができませんでした。心のデトックスに、いかがでしょうか。

⑦The 1975「How To Draw / Petrichor」

マンチェスター出身のロック・バンド--という説明も不要なほど、新世代の代弁者として不動の地位を築いたThe 1975。彼らが2018年にリリースしたアルバム『ネット上の人間関係についての簡単な調査(邦題)』からセレクトしてみました。

アンビエントなサウンドから始まり、アタック感のあるリズムで攻めるエレクトロニカへと移行していく展開は、一筋縄ではいかない実験的な側面の彼らをよく表現しています。不思議な魅力を放つ楽曲です。

ちなみに「Petrichor(ペトリコール)」とは、雨が降った時に地面から上がってくる匂いを指す言葉。ようやく梅雨も明けましたね。

⑧Björk「Cocoon」

言わずと知れたアイスランドの至宝、ビョーク。2001年にリリースしたアルバム『Vespertine』からセレクトしました。

選曲の理由としては、僕が最近ビョークばかり聴いているという私情を挟みつつ、冷たく神秘的な雰囲気がヒーリング作用をもたらしてくれるからです。

特にこの楽曲は、タイトル通り<繭>のように身体を優しく包み込んでくれるような気がします(同時にそこから出られなくなる恐ろしさもありますが)。

時には不可思議なビョークの映像世界に浸るのも良いでしょう。この楽曲のMVを監督したのは、2012年にこの世を去ったアートディレクター兼デザイナーの石岡瑛子。詳しくは語りませんが、衝撃的な作品です。

⑨The xx「VCR」

ロンドン出身のインディーロック・バンド、エックス・エックス。2009年にリリースした1stアルバム『xx』から、冒頭の楽曲をセレクトしました。羊文学がライブの登場SEとして使用していた時期があったので、ご存じの方も多いかもしれません。

アルバムの中で最も古い楽曲であり、ライブで演奏する際もデモ音源と同じ機材で再現するそうです。

そういった素朴さは、インディーロックの良い部分を濃縮還元したかのようで、僕らの心の古くて深い部分を静かにノックします。

MVも素晴らしいの一言。ノスタルジックな心地良さに溢れた美しい映像です。そろそろ身体をほぐして、少しだけ思い出の海を泳いでみては。

最後に、今回ご紹介した楽曲をSpotifyのプレイリストにまとめました。そのままご活用いただくも良し、気になった楽曲をピックアップして自分のプレイリストに組み込むも良し。皆さんも思い思いに作ってみてはいかがでしょうか。

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Playlist

對馬拓