【アプリレビュー】未来へ繋ぐ、新時代のカメラアプリ。『Dispo』で日々に喜びと煌めきを

【アプリレビュー】未来へ繋ぐ、新時代のカメラアプリ。『Dispo』で日々に喜びと煌めきを

二月初旬、招待制SNSアプリ『Clubhouse』とほぼ並行して、ひとつのアプリが日本国内で話題となった。

その名も『Dispo』。‘‘招待制’’という点はClubhouseと変わりないが、Dispoの目的は不特定多数のユーザーとメッセージを交わしながら繋がることではない。あくまで日常の一片を撮影し、共有することだけを目的としたアプリなのだ。

Dispoは二月初旬にβ版を国内リリースして以降、急速なスピードでユーザー数を増やし続けた。記事公開の現時点では、β版で登録できる上限の一万人に達してしまったため、招待を受けても新たにユーザー登録ができない状態までに。しかしなぜ、繋がりを求めることが目的ではないDispoが、爆発的な人気を誇る運びになったのだろうか。本記事では、Dispoがwithコロナの時代と呼応する、革新的なアプリである理由を記していきたいと思う。

毎朝、昨日のワンシーンを振り返る。

昨今のカメラ業界は、いかに素早く、正確に、質の良いモデルを生み出すか、という点に注力している。それは、スマートフォンに内蔵されているカメラ機能も例外ではないーーーというのは、凝った写真撮影や加工、一眼レフにも大して関心を示してこなかった、私でもよくわかる。

‘‘手ブレ補正’’‘‘オートフォーカス(AF)’’‘‘最小限のタイムラグ’’。先鋭的な機能にユーザーは惹かれ、一瞬一瞬を色褪せない思い出にすべく、高いスペックを持ったカメラを手に取り、日常の特別な瞬間を撮影し、記録していく。

 

そんなシーンの背景と180℃真逆の方向に舵を切ったのが、今年二月に国内リリースされたアプリ『Dispo』だ。
Dispoは撮影した写真をすぐに確認することはできない。一時間?二時間?いや、‘‘翌日の朝9時’’まで待つ必要がある。私のようにせっかちな性分の人であれば、危うく失神してしまいそうなウェイティングタイムだけど、カメラの歴史をちょっとばかし辿れば、その理由が見えてくる。

 

世界で初めてカメラ(※当時は感光材料)での撮影を実現したのは1820年頃。フランスのニエプス兄弟によって実践され、8時間もの長い時間をかけて一枚の写真の撮影に成功した。その後は度重なる改良によって、短時間での撮影が可能になり、1990年代には日本が誇る精密化学メーカー・富士フイルムからインスタントカメラが登場。そして時代と共に更なる追求は続き、現在の高速、高機能カメラモデルが続々生まれる運びとなった。

感光材料、なんてワードは聞き慣れなくても、『インスタントカメラ』、特に『写ルンです』なんかは、少なくとも20代以上のmusit読者であれば聞き覚えがあるはず。まさしく私自身も、小学生の時分には写ルンですを持って近所の公園に出向き、人のいないブランコやベンチ、犬の写真なんかを、嬉々としながら撮影していたものだ。

 

Dispoは、上述した使い捨て(=disposable)カメラのレトロチックな撮影から現像までの流れを、あえて機能性が最重視されるこの時代にスマホアプリへ落とし込んだ。
撮影した写真を、翌日の朝に確認する。インスタントカメラ時代、どんな写真が浮かび上がるか期待に胸を弾ませながら待っていたあの高揚感と、私たちはアプリを通して再び邂逅できる。長い時間をかけて写し出されたひとつのデータは、ブレ、逆光、画質の粗っぽさ…全てが何だか愛おしく思えてくる。洒落たランチの写真も、夜中何軒もハシゴをして、知らない人たちと歯を見せながら撮った写真も、リアルタイムより時間をかけて見る方が、余程自身の中にあるエモーショナルな部分を刺激する。

‘‘高性能’’というワードに長く取り憑かれていた反面で、私たちは‘‘時間が与える愛着’’を失ってしまっていたのではないか。Dispoは、そんなことさえ思わせる、まさに原点回帰的なカメラアプリなのだ。

 

SNS敏感気質にも。『Dispo』は低刺激性のコミュニティアプリ

「自分はSNSに向いていない」と自覚している人は、特にwithコロナの時代となった昨今を経て、だいぶ増えたことと思う(かくいう私もその内の一人である)。

そうは言っても、在宅ワークが奨励されていることや、飲食店の時短営業により人との接触が激減した中で、SNSの一切を断ち切るのはなかなか根性が要るだろう。分刻みにTwitterのタイムラインをシュッと更新してみたり、無駄にInstagramのストーリーを更新して、自分を見てくれている人間の存在を確認して安堵したり。そんな習慣がいつの間にやら根付いてしまった人も多いはずだ。
しかしそのような毎日の繰り返しでは、繋がりを求めすぎるあまり、投稿数と反比例して心が擦り減っていくばかりである。‘‘制限がない’’からこそ、私たちは無意識のうちにSNSという存在に執着し、依存する。両足どっぷり浸かってしまう前に、何としてでも回避する術を見つけなくてはいけない。

 

『Dispo』は、そんなwithコロナ時代のSNSユーザーにも優しい低刺激処方。
ひとつのテーマ(例えば『今日の空』など)に沿った写真を各々が持ち寄ってロールに登録し、一人ひとりが‘‘知らない誰かが過ごした昨日’’を順に見る。一枚の写真とテーマから、その人がどんな時間を過ごしていたかを想像したり、自分と近い感性のユーザーと繋がることで安心感を得たりする。ただそれ「だけ」、いや、それ「しか」できないからこその心地好さが、Dispoにはある。

例えば、Twitterのようにバズを狙う必要性も、非難に怖れるリスクもない。また、インスタントカメラのそれを受け継いだ、フラッシュを強く焚いたようなフィルタがアプリ内に実装されているので、写真の綺麗さを求める必要や、個人の世界観を主張するための加工を施す手間もない。Instagramのように、キャプションを逐一記載することもない。誰もが自由なスタンスで、遠すぎず近すぎないコミュニティを成立させる場所が、Dispoというひとつのアプリ内に存在している。

 

『Dispo』を通して、明日、そして未来を繋いでいく

【アプリレビュー】未来へ繋ぐ、新時代のカメラアプリ。『Dispo』で日々に喜びと煌めきを

「明日どうなるかわからない」。漫画やドラマで見られがちな台詞が、現実世界でも多用される時代になってしまった。

だけどそれでも、やっぱり少しの希望を持って、せめて気持ちは前に明日を迎えていきたいと思う。そして今日、生きていたことを、一人でも多くの‘‘誰か’’に知らせたいと思う。できる限り自由な形で、ここにいることを伝えたい。

そんな心の隙間を埋める役として、『Dispo』は実にタイミング良くリリースされた。
開発者であるDavid Dobrikは、「Living in the moment(この瞬間を生きる)」をコピーに掲げながら本アプリの開発を進めたという。私たちが、withコロナの時代でも一瞬の煌めきに感動し、それを記録していくこと。知らない誰かと同じ‘‘昨日’’を共有し、また‘‘明日’’を生きる楽しみを見出して過ごすこと。Dispoはインスタントカメラから着想を得てローンチされたものでありながら、今の時代に於いては必要性が極めて高い、理想的なカメラアプリと言っていいだろう。

 

 

(執筆:翳目)

 

musit編集部