平手友梨奈、というアイドルがいた~なぜ私たちは彼女のパフォーマンスに惹かれるのか

平手友梨奈、というアイドルがいた~なぜ私たちは彼女のパフォーマンスに惹かれるのか

平手友梨奈、というアイドルがいた。

彼女は欅坂46の元メンバーで、デビューシングル「サイレントマジョリティー」でセンターを務め、以降も同グループで活動し、2020年1月23日にグループ脱退を発表。その後自身の公式サイトをオープンし、女優やモデル活動などを精力的に行っている。

ファンは皆、口を揃えて彼女のことを「1度観たら目が離せない」「圧倒的なオーラを放っている」と言う。確かにアイドルらしからぬ存在感でファンを興奮の渦に巻き込み、グループ在籍中から現在に至るまでその人気は尽きない。本稿では、そんな平手の特異なパフォーマンス能力と彼女の抱く意志に焦点を当て、「なぜ私たちは平手友梨奈のパフォーマンスに魅了されるのか」を紐解いていきたい。

多方面で精力的な活動、様々な「色」を持つアーティストとして成長

彼女のパフォーマンスにおいてもっとも特筆すべきなのは「入魂」と「憑依」だ。まるでそこに揺るがない柱が立ち上っているかのように、一心不乱に踊り、歌う。人によっては恐怖すら覚えかねないような気迫溢れるパフォーマンスは、彼女のもっとも得手とするものだろう。

ライブ《欅共和国》やNHK紅白歌合戦での全身全霊をかけ「不協和音」、ソロとして発表した「角を曲がる」などに加え、FNS歌謡祭でのコラボパフォーマンスでは平井堅の「ノンフィクション」、森山直太朗の「生きてることが辛いなら」という、それぞれにメッセージ性を持つ曲をコンテンポラリーダンスで表現した。

また、先日12月9日に放送されたFNS歌謡祭では、自身が1から制作に携わったというオリジナル楽曲「ダンスの理由」を披露。曲名の通り自らの胸の内を虚飾なく吐露したかのように思える歌詞に合わせ、怒涛の激しいダンス・パフォーマンスを見せた。

 

 

‘‘中途半端ではやりたくない’’‘‘(作品を)届けたい’’(ROCKIN’ON JAPAN 2020年10月号別冊「平手友梨奈 19歳、今、感じていること」)という言葉通り、最近では多方面でのアーティストとコラボしたりと、幅広い活動に一層磨きがかかっている。

Mrs.GREEN APPLEの楽曲「WanteD!WanteD!」では爆発的なエネルギーに満ちた姿をダンスにより惜しげもなく見せ、パリ・ファッション・ウィーク(パリコレ)では、森永邦彦によるファッションブランド《アンリアレイジ》のデジタルショーに起用され話題となった。《ViVi》や《装苑》を始めとした、それぞれ異なるコンセプトの雑誌においてもモデルを担当するなど、まるで自分自身の色を多彩に変化させているような活躍ぶりだ。

 

欅坂46の「平手友梨奈」と、1人になった「平手友梨奈」

欅坂46というグループに所属していた頃と、1人で活動する体制に移った現在に対して、彼女はこう語っている。

“(グループ在籍当時、背負っていたものに対して)何も変わらないじゃん、この重さ、っていう。「これ、欅坂のせいじゃなかったんだ、わかっちゃいたけど、これ、私の重さだったんだ」っていう” (ROCKIN’ON JAPAN 2020年10月号別冊「平手友梨奈 19歳、今、感じていること」)

これは彼女自身、自分の身体を使って何かを表現することや「そこに在ること」に対していつでも真摯に、孤高に向き合っているからこそ発された言葉なのではないかと感じる。唯一無二のアイデンティティが針のように研ぎ澄まされ、洗練されたパフォーマンスが生まれる。性別、年齢、所属あらゆる制限や立ち位置を無にする「ただ、研磨された表現」だけがそこに残る。そうして、彼女のパフォーマンスは芸術へと昇華されていった。

孤高の精神を宿し、飽くなき追求で挑み続ける姿から生まれるもの

彼女の孤高とも言える思考は、常にパフォーマンスを高みに押し上げていく。どこまでいっても満足することがない、というのは飽くなき鍛錬を積むアスリートのような思考だが、彼女は「表現者」として同じ考えを抱いているのではないかと考えられる。

指の1本、足の爪先まで思考の行き届いた彼女のダンスや、普段ラジオで聴いている穏やかな声とは一転し、芯の通った、しかし「1人の女の子」としての覚束なさも感じさせる絶妙な歌声には、それこそ極細の「表現における神経」が通っている。

私たちは、彼女のパフォーマンスを通してその神経の繊細さを目の当たりにし、驚愕する。その驚愕が、何度も反すうすることで胸震わせる感動へと変わるのだ。

孤独を抱えた人に向けた、「痛み」を知っている側からのメッセージ

欅坂46のプロデューサーである秋元康から「孤独になれ」と言われた彼女には、元々そのような素質が備わっていたのではないかと筆者は推測する。つまり、普通の人間ならば執着しがちな「名誉」や「愛されたい」という欲求を抱える代わりに、ストイックに表現の追求ができる人物だった、ということだ。

12月9日にサプライズで発表されたオリジナル楽曲「ダンスの理由」には、こんな歌詞が紡がれている。

‘‘誰かの悲しみを癒す その一瞬のために夢のようなターン決めよう’’

彼女の踊る、時に夢のように美しく、そして時に激しく慟哭するようにも思えるダンスには、「パフォーマンスを見ている向こう側で孤独に苛まれている人」に向けた明確なメッセージが込められていることが伝わってくる。

孤高であったがゆえの「痛み」を知っているから、同じ「痛み」を感じている人を救いたい--そんな確かな思いがあるから、彼女のダンスには1本芯が通っているように感じられるのではないだろうか。

平手友梨奈とは、もうアイドルではない。1人のアーティストだ。まとう色を毎秒変え、繊細で魂の込もったダンスを踊り、豪奢な衣装にも「着られず」そこに在る。

その身体から火花のごとく迸る魂は、人々の心を魅了し続ける。

今後の彼女の活躍が光あるものであることを祈りながら、心奪われる日々を楽しみに待ちたい。

安藤エヌ