大人から子どもまで。あなたの生活の≪肴≫になるバンド・SAKANAMON

大人から子どもまで。あなたの生活の≪肴≫になるバンド・SAKANAMON

“ 華々と舞い踊る美少女
穢れの無い欲望のイメージ
狂い咲け 瞬く間にきっと
何も彼もが意の儘です ”

“ 歓談糞賑やか 混ぜ込めば選り取り見取り
破裂感打ち鳴らすだけ 奇なフレーズ響け夜な夜な ”

現代の音楽シーンで、これほどまでに読み辛い日本語詞を他に見たことがあるだろうか。
歌詞だけ見れば、演歌かと思う人もいるかもしれない。漢字が多い。「穢れ」とか「儘」とか、読めない人もきっといるはずだ。
ちなみに2曲目の冒頭は≪歓談クソにぎやか≫と歌っている。本当に口が悪い。

今日はこの、「ちょっと変わった」ロックバンド・SAKANAMONについて迫る。

「現代の文學ロック」ともいうべきバンド・SAKANAMON

SAKANAMON。バンドキャリアは10年以上。
こんな解読しにくい歌詞を書くのはどこぞのシニア…と思うところではあるが、メンバーは全員30歳。
ライブ中にはDr.木村が、観客と掛け合いで「アゲ!!!」と勢いよく叫ぶコール&レスポンスもあるほどの、
まだまだエネルギッシュなライブパフォーマンスを魅せるバンドだ。

SAKANAMONの最大の魅力は、日本語の美しさを最大限に活かした歌詞にある。
私はこの、解読しにくい日本語詞がとても好きだ。そこらのアーティストでは到底真似できないだろう。
読み辛い歌詞には、「読み解く楽しさ」が必ず付随する。そこがとても良い。
さらに、ほとんどの楽曲で作詞作曲を手掛けるVo.藤森元生という男。彼は非常に言葉遊びが得意だ。

「空想イマイマシー」では、冒頭で曲名をそのまま歌っているように見せかけて“糞忌々しい”と皮肉っていたり、
「カタハマリズム」では、同じメロディのフレーズ内で“歓談糞賑やか”から“判断力浅はか”、さらに“段々色鮮やか”へと移り変わることで≪型にハマらない生き方≫を楽曲を通して誇張している。

SAKANAMONの歌詞は、耳で聴くだけでは分からない仕掛けを多く引き出しに持っているのだ。

もちろん、彼らの楽曲の魅力は歌詞のセンスだけではない。
難解な歌詞とはまるで正反対の、分かりやすいポップなリズム感と「正統派ギターロック」とも言うべき軽快なメロディは、一度聴いたらまさにやみつき。
本人たちは、『聴く人の生活の「肴」になりたい』、という意味を込めてこのバンド名にしたそうだが、見事に上質な≪スルメ≫としての役割を全うしている。いや、しすぎている。

ウザいくらいに距離の近い味方

皮肉的で、理想ばかり掲げて、その癖自我が強い。
なんて奴は大体上手くいかない。恋愛も勉強も運動も、仕事だってミスをしてばかり。もはや生活がつまらない。
SAKANAMONは、そんな人たちにこそ聴いてもらいたいバンドだ。

例えば同じ「恋」をテーマにした楽曲でも、


“ 妄想に浸った青春は ノンシュガー、まるで青汁”
「花色の美少女」

という痛々しい青春の一コマもあれば、

“ 実は甘い物がそんなに好きじゃないから要らないのにな
今日だけは君に免じて一つ買って帰るんだよ”
「ケーキ売りの女の子」

と見事に一人取り残されるクリスマスの切ない光景まで窺える。ダメだ、全く幸せになれそうにない。

また「TSUMANNE」という(遠目で読めばサザンの「TSUNAMI」に空目してしまいそうな)曲では、

“ 分かってるよ 合わせれば解決することなんか
分かってるけど詰まんねえよ 誰もが妥協し合うこの世界なんか ”

と皮肉を込めながらも、周囲に合わせられない自分自身との葛藤を歌っている。
SAKANAMONは「特定の誰か」を相手にしない。いつだって≪上手くいかないヤツら全員≫を歌うからこそ、心強い味方でいてくれるのだ。

SAKANAMONが訴えるのは「つまんねえ世界に生きる自分かっこいい」

時にネガティブで、時にイライラしている。そんな情緒不安定な感情を、あえてキャッチーなサウンドに乗せて歌う。
だからこそ、SAKANAMONの楽曲はいつも、どんな時も受け入れてくれるような気持ちになれる。

SAKANAMONの世界に登場する人物は、おそらく奥手で、きっと一生思春期の感情のままで自我との葛藤に苦しみ「つまんねえ」と嘆いている。
好きな子には何をしても振り向かれないし、努力は報われも認められもしない。
そんな日々の鬱憤をギターに乗せて歌い、時に叫んで発散する。

しかし時には『君の足を舐めたいです』なんて欲望の塊のフェチズムをうっかり洩らしてしまう。
ああ、なんて馬鹿で、愛おしいんだろう。

家でも外でも心酔する音楽

SAKANAMONは、不平不満を嘆く楽曲だけではない。
言いたいだけ言って、聴きたいだけ聴いて、「もうお腹いっぱい」と感じたら、適当なタイミングで出ていっていい。
散々飲んで酔っ払った帰り道のポカリのような、そんな安心感だって兼ね備えているのだから。


“どんな不満を持ったって 如何にも成らんと知ったなら
ポッケに詰まったナンバーを流し出せ
怒りや痛みが溢れて 塞げない不安から逃げ出したいなら
縛りない世界からお届け 今は悩まないように”
「PLAYER PRAYER」

“ 罰が何度付けられただろう でも違うと言うことは特別だろう
無くしたんだ色んな物 でも手元にほら誰にも見えぬ結晶
退っ引きならぬこの世界 出来合いの正論は要らない
確固たる僕達の世界 もう何も心配は要らない ”
「並行世界のすゝめ」

もしまた道に迷ったり、不安や不満を抱えるようになったら、すぐに帰ってくればいい。
SAKANAMONの音楽は、いつでも個人に見合った度数で酔わせてくれる。

生活の≪肴≫として添えるのにあなたとの相性は抜群。まだ知らないという人は、一度味わってみてはいかがだろう。

せきね