3markets[]を聴くと、私たちはなぜか救われてしまう

3markets[]を聴くと、私たちはなぜか救われてしまう

「売れてるロックバンド」の共通点とはなんだろうか。

キラキラしていて、リスナーに希望を与えて、常に胸躍るような光景を見せてくれる。
サービス精神が旺盛で、メンバー間の仲の良さも垣間見えて、時に泣けるし、時に背中を押してくれる。

ざっとこんなところだろう。
少なくとも「売れてるロックバンド」とは、振る舞いや楽曲の面でマイナス要素を見せることは、ほぼない。
だから売れている。オープンで、寄り添ってくれるし、明るくなれるから。

3markets[]というバンドがいる。
彼らは、上記に列挙したバンドとは違い、どちらかというと「マイナス要素が強い」ロックバンドだ。

しかし彼らは、まだ認知度は低いものの、徐々に日の目を浴び始めている。
10月10日に新代田FEVERで行われた「なんかのなにかが出るワンマン」のチケットは、なんと堂々のソールドアウト。
筆者もこのライブに行ったが、終始凄まじい量の熱気がフロア全体に篭り、抜群のセットリストで観客を魅了した、素晴らしいライブだった。ギターロックさながらの熱いパフォーマンスを見せるその姿は、とても「マイナス要素が強い」バンドには思えない。

では、なぜ3markets[](以下スリマ)は「マイナス要素が強い」ロックバンドなのか。
理由は簡単。スリマの楽曲は一言で表すと「歌詞が暗い」からだ。

基本的にスリマの曲はアップテンポなものが多く、ライブでの盛り上がりも十分に期待できる。
しかし歌っている内容はひたすら暗い。自身の自虐や、生きることに対するやる気のなさ、不穏な感情の捌け口、そんな内容ばかりが、スリマの楽曲の大半を占めている。

”全部全部やめたくなった めんどくさくなった”(「死ぬほどめんどくさい」)
”もう詰んだ 人生詰んだ はいはい、殺してくれ”(「人生詰んだ」)
”俺は社会のゴミ カザマタカフミ”(「社会のゴミカザマタカフミ」)

マイナスで自虐的で、ネガティヴなバンド。聴いているだけで生きる気力を削がれてしまいそうな、溜息もついてしまうような歌詞。それはvo.カザマも自覚しているようで、自身のツイキャスで「こんな歌聴いて、本当に元気になれるんですか?」とリスナーに問いかけたこともあるほど。

だが、それだけならきっと、目をつけられることもなく、あっという間にシーンの溝に埋もれてしまうだろう。
前身バンド・3markets(株)を含めるとバンドキャリアはかなりのものになる。逸脱した魅力が聴く人の心に刺さるからこそ、今もなお活動を継続し、その名を広めているのだ。

では、スリマの楽曲はどこに逸脱した魅力を感じさせるのか?

それでも3markets[]に救われてしまう

スリマの公式Twitterを見ていると、「売れてるバンド」とさほど変わらないコメントを次々と目にする。
「ライブも新曲も最高でした!」
「いつも救われています」
「スリマを聴くと明るくなれます」

マイナス要素の多いバンドが、何故か聴く側にいる人々を勇気づけ、明るくさせている。
一体、どういうことなのだろうか。

それは紛れもなく「リアルな共感」を呼ぶ歌詞にある。
スリマの歌詞は、全体的に暗い。だが、圧倒的な歌詞のリアルさで言えば、「売れてるロックバンド」に列挙されるどのバンドにも負けていない。

”右へ左へフラフラする 真ん中の無い生活だ
外れることが怖い 外されるのはもっと怖い”(「メトロノーム」)

”セックスをするのが本当はそんなに好きじゃないんだ
疲れてしまうんだ 身体よりも心が”(「僕はセックスができない」)

”友達が欲しかった それは違っていたみたい
なんでも話し合えるような親友が欲しかっただけ
4月になれば変わると思った 5月になるとやめたくなった 連休明けは消えたくなった”(「4月」)

彼らの楽曲をよく知らない人からしたら、
「あー3markets[]?って、あの暗いメンヘラ御用達バンドでしょ」
きっとそう言われてしまうのだろう。

だが、スリマはただ死にたいとか、消えたいとか、鬱々とした不満の垂れ流しをしている訳ではない。
今じゃなくても、私たちが過去一度は経験した思いを、言葉にして思い起こしてくれているのだ。

「たまに会うあの人」みたいな感覚

だからといって、別にヒーロー気取りをしている訳でもない。
vo.カザマはことあるごとに「売れたい」と零すが、実際「急に売れ線になった」みたいな変化は、少なくとも私の主観ではあまり見受けられない。

自分が今まで感じていたけど、うまく表現できなかったもの。
表現する方法は知っているけど、他人に理解してもらえそうにないもの。
それをvo.カザマは上手にすくい取って、歌ってくれる。他人が歌ってくれるのであれば、鬱屈とした感情も少しは楽になれるし、「自分だけがこう思っている」「自分だけが外れている」という罪悪感を感じることはなくなる。

共感は「大丈夫!頑張ろう!」とか「前に進もう!」といった、明るい楽曲だけに生まれるものではない。
暗かったり、死にたかったり、消えたかったり。「頑張りたくない」「できれば全部やめたい」世間に晒せばすぐに淘汰されてしまうような、マイナスな感情にだって、当然共感は生じる。

さらにスリマの楽曲は、否定や肯定といった類の言葉をあまり選ばない。それはスリマが私たち聴く側の人間に深く求めず、互いに否定や肯定ができる関係だと考えていないからだろう。彼ら自身が「めんどくさいこと」を選ばないから、私たちは自由な感性で聴くことができるのだ。

「ワンポイントアドバイスなんかいらない、ただ自分と同じ感情を持った人間がいることに気付きたい」そう感じている人にとって、スリマは「隣の隣の部屋のあの人」のような役を買って出てくれる。

過干渉になりすぎず、余計なお世話をしない姿勢こそが、「3markets[]に救われています」と言われる大きな理由なのだと思う。
「メンヘラっぽいから」と毛嫌いせず、なんとなく日常に疲れたり、ミスをしたり、心に塵が溜まってきたりしたら、ぜひ聴いてみて欲しい。

そして私は自分がセックスが嫌いな理由を、この曲を聴いて初めて把握した。

せきね