バンプオブチキン「宇宙飛行士への手紙」が紡いだ『過去・現在・未来』

バンプオブチキン「宇宙飛行士への手紙」が紡いだ『過去・現在・未来』

「宇宙飛行士への手紙」は、4人組ロックバンド・BUMP OF CHICKENが2010年に発表した18枚目のシングル。

発売当時のメンバーの年齢は、およそ全員が30歳。30代に入って初めてリリースした「HAPPY」然り、本作は30という年齢に達して見えたバンドの「これからの姿」が映し出されていることがはっきりとうかがえる楽曲だ。

今回は、そんな「宇宙飛行士への手紙」の歌詞について、じっくりと考察していきたい。

「宇宙飛行士への手紙」に込められた意志

「宇宙飛行士への手紙」は、生きる上での出会いと別れ、そして過ぎていく時間について歌った楽曲だ。

その証拠として、まず冒頭の”踵が2つ”は最終的に”踵が4つ”に変わる。
最初の”踵が2つ”は過去。「過去」は「後ろ」にあるものという意味から、つま先ではなく”踵”という表現を使っている。
だから、”今が未来だった頃のこと”=過去のことはまだ鮮明に思い出せる。

一方、最後の”踵が4つ”。
これは一人が二人になった、という意味ではなく、「過去」と「未来」という2つの時間に生きる自分自身を表している。
”明日と昨日の隙間で歌った”=明日は未来、そして昨日は過去。その隙間が「現在」。
そのすべては一瞬一秒というかけがえのないもので構成されていて、今もなお進んでいるが、目に見えるものではない=”言葉でしか知らなかった事”なのだ。

また、”できるだけ離れないでいたいと思うのは 出会う前の君に僕は絶対出会えないから”。
互いに過去を知り得ない関係であるからこそ、未来までも共に居られるように過ごさなくてはいけない。
しかし、そんな風に考えている「今」もいつかは過去になる。未来まで共に過ごす約束をもしも果たせなくても、再スタートはできない=”今もいつか過去になって 取り戻せなくなるから”
だから、”今のうちにちゃんと取り戻しておきたい”=今、共に過ごす時間を当たり前だと思わずに過ごしていきたいと強く願っている。

2番の冒頭で出てくる”ひっくり返した砂時計 同じ砂が刻む違う2分”。
砂時計は時間を刻むもの。つまり、「未来に向かうもの」の象徴。
それを「ひっくり返す」ということは、「過去に戻す」ということ。
だから、同じ分数を刻んでいても、「進むもの」と「戻るもの」では全く違う時間を過ごしているのだ。

”トリケラトプスに触りたい ふたご座でのんびり地球が見たい”
”トリケラトプス”は「過去」。”ふたご座”は「今」も「未来」も存在する星。
過去に戻ることも、星座に乗ることも出来やしないけれど、自分に与えられた時間の尺で出来るのかを本気で考えてみる。
だから”どこにだって一緒に行こう お揃いの記憶を集めよう”。どちらかがもし忘れたり、遠く離れ離れになっても良いように。

”死ぬまでなんて嘘みたいな事を本気で思うのは 生きている君に僕はこうして出会えたんだから”
「死ぬまで◯◯する」なんてありきたりで嘘くさくて、陳腐な表現。でも共に過ごしている「今」があるからこそ、この先もずっと、”死ぬまで”一緒なのかもしれない、なんてありもしないことを密かに信じてしまうようだ。
”そしていつか星になってまた一人になるから”=いつかこの命を全うする時、もう同じ時間を過ごすことはない。
でも、”笑い合った今はきっと 後ろから照らしてくれるから”=お揃いの記憶を積み重ねた「今」は、例えまた一人になったとしても、それぞれの心の内にきっと残るはずだ。

さらに、「過去」では稲妻を見たとき”ジャンル分けできないドキドキ”を感じていたのが、「今」は”稲妻を一緒に見られた”ことで同じ「ドキドキ」を共有できている。
”笑い合った過去がずっと 未来まで照らしてくれるから”=「今」もいつかは「過去」になる。「未来」に何が起こるか分からないけれど、「過去」の思い出が「未来」の自分をきっと支えてくれるから、不安に煽られる心配はしなくていい。
だから”踵”は「未来の自分」と「過去の自分」の4つ。「過去」や「今」がなければ、「未来」へは繋がらない。そのどれもが等しく”かけがえのないもの”なのだから。

「宇宙飛行士への手紙」は限られた時間の中で、私たちが大切な人とどう向き合て、またどのように生きるべきなのかを教えてくれる楽曲なのだ。
これはバンド結成から約14年、当時30歳の藤原基央だからこそ書き上げることができた曲、といっても差し支えないだろう。

せきね