【インタビュー】「ほかの誰にも真似できない、最高のプレイを」──ハドソン・モホークが語る、クリエイティブで挑戦的な音楽理論

【インタビュー】「ほかの誰にも真似できない、最高のプレイを」──ハドソン・モホークが語る、クリエイティブで挑戦的な音楽理論

パンデミックの影響による二度の延期を経て、満を持して開催されたスクエアプッシャーの日本ツアー。本ツアーにはスペシャル・ゲストとしてレーベルメイトでもあるハドソン・モホークが出演した。musitでは最新作『Cry Sugar』を引っ提げ実に7年振りの来日となった彼に、同じくDJ/トラックメイカーとして活躍する、インターネットレーベル・TREKKIE TRAX主宰メンバーのSeimeiによるインタビューを敢行。ライブ本番直前の取材となったため短い時間ではあったが、鋭い考察と確固たる意志に溢れた、ハドソン・モホーク独自の音楽理論を語ってくれた。

取材=Seimei
文/写真=Ace-up
ライブ写真提供=TEPPEI
編集=星野

* * *

──昨晩の公演に遊びに行ったけど、最高のDJだったよ! 『Cry Suger』をリリースしてから初の来日となったわけだけど、オーディエンスの反応はどう感じた?

元々今回のショーはパンデミックで延期になっていたスクエアプッシャーがメインのライブで、既にチケットが売れた状態だったから、あとから追加出演となった僕のことをあまり知らないオーディエンスが多かったはずだけど…それでも反応はとても良かったね。来年は自分がメインのショーをやりに日本に戻ってきたいと思ってるよ。

──僕は飛び跳ねまくってたよ!笑(手を上げる動作をしながら)

ハハ、ありがとう。またこうやって日本でプレイできて嬉しいよ。

──僕は前回来日した時のWOMB公演にも遊びに行ってて、ハッピーハードコアが流れた時にモッシュピットができてとてつもない盛り上がりだったのを覚えてるよ。また来年日本でショーをやるときはあんな瞬間を期待してる!

そうだったね。笑 オーケー。

──じゃあ、次の質問。多くのアーティストがそうだったように、ハドソンもパンデミックの期間はミックステープだったり、アルバムだったりを制作する時間がたくさんできたと思うけど、その期間を経て、何か精神的に変化はあった? 僕の場合は、色々なことが制限されたフラストレーションが以前よりもパンチの効いたサウンドを作ることに繋がったりしたんだけど。

まずパンデミック以前から、僕はフラストレーションが常に溜まっていた状態でね。長年ツアーに出てパーティーしまくる生活だったから、精神的に余裕がなくなって、もうツアーを行うこと自体が楽しめなくなってしまったんだ。2016年のショーを最後にツアーはストップして、そのタイミングでアメリカに移住した。

──ツアー生活に疲れちゃったんだね。

そう。6年くらいツアーには出なかった。プレイすることはもちろん好きなんだけど、ツアーに出ると不摂生な日々を過ごしちゃうことが多くて、そんな生活にもう飽き飽きしていた。だから「自制できるような精神状態になるまでツアーに出ない」って心に誓った。

…とまあ、自分はパンデミック以前からこんな状態だったんだよ。その後しばらくして、オンラインのショーなら出演しても良いかな、なんて考えていた矢先にパンデミックになった。僕はその期間、スタジオに籠もって制作に集中することができていたから、そういった意味ではパンデミックがもたらした良い機会だったかもしれない。パンデミックは世界中の人々にとってトラウマとなる出来事だったし、そのインパクトの全貌を理解するのには時間がかかると思う。世界規模でのトラウマがどんなものかなんてまだ誰も説明できないよね?

ただ1つ、良かったと言えると思う点は、世界中で全てのことがストップして、自分を含めた日々の生活に忙殺されていた人々がこれまで考えてこなかった「自分自身の幸せ」を考えるきっかけにもなったんじゃないかということ。パンデミックを期に転職した友人なんかもたくさんいたし、皆が一度立ち止まって「自分の人生はこれで良いのか」と見つめ直す時間にはなったんじゃないかな。 

──そうだね、アーティストみたいなクリエイティブ職だけじゃなくて、一般職の人も自分自身を見つめ直す機会だったのかもね。以前他メディアのインタビューで、トラップのEDM化によってTNGHT(ハドソン・モホークとルニスによるエレクトロニック・ユニット)の音楽を含む、トラップシーンにおけるソウルフルさの欠如について言及していたね。実際僕も自分のレーベルを10年運営していて、若いプロデューサーのデモを聴く時に特にそう感じることがあるんだけど、ハドソンの場合は具体的にどのような場面でソウルフルさが欠如していると感じる?

これはトラップだけでなく、全てのジャンルにおいて言えることだと思うのだけど、僕たちはジャンルの方式を確立したように見えるアーティストを見つけるとその方式を繰り返し真似るようになって、ほかの可能性を模索することをやめてしまう。

──コピー合戦みたいなね。

そうそう、同じことの繰り返し。皆リアクションが欲しいから、既に確立された方式に乗っかって制作して、いつも同じことをやるアーティストになってしまう。その状態から抜け出せず、違うやり方に挑戦せずに同じことを続けることになる。そういった悪循環がそこら中で起きている印象だから、今はどのジャンルも面白いとは感じられないかな。 

──なるほどね。じゃあDJに関して質問です。僕はDJをしていて、時々オーディエンスの期待とは違う方向にトライすることに対して迷いを感じる時があるんだけど、ハドソンのようにオーディエンスの期待に左右されない勇敢で挑戦的なDJをするにはどうしたらいいかな? 

自分がそれほど挑戦的だなんて思わないけどな…。誰も知らない曲をかけて、たとえリアクションがなくたって、それは自分が大好きな曲でかけたくてかけたんだからそれでOK。他人は関係ないよ。

──昨晩のショーではオーディエンスが期待していないような、あなたの代表曲「Cbat」の高速4×4エディットをかけたりしていて、そういった姿勢の片鱗が感じ取れました。僕みたいな一部の人達はこれ最高だ!って感じで盛り上がっていたけどね。笑

ありがとう。DJやプロデューサーにとって大切なことは、パーソナリティを自分がプレイする曲に込めることだよ。周りと同じことをやったって良いと思うけど、EDMのTOP10ソングをプレイしたりするのは僕のやりたいことじゃない。僕はほかの誰でもない、自分が大好きな音楽をプレイしていくよ。

──近年ではGQOMやamapianoなど、アフリカ的なビートをフィーチャーしたダンス・ミュージックや、日本産の70年代や80年代のシティポップが世界的に人気だったり、アメリカや欧州以外の地域で作られた音楽がフィーチャーされることが増えているけど、ハドソンは日本のアーティストやレーベルにどういったサウンドを期待する? スコットランドで育った背景もあって、おそらくレイヴ・ミュージックに傾倒していたと思うけど、音楽において地理的な要因は大事かな? 自分は東京でレーベルを運営しているから参考にさせてほしい。

今もアクティブなのかはわからないけど、日本のJazzy Sportっていうレーベルが好きなんだ(現在も店舗運営やイベント等を通して活動中)。とてもソウルフルで、素晴らしいブラック・ミュージックをリリースしているんだけど、アメリカからやってきたそれとは違うのがとても面白い。イースト・コーストやニューヨークのラップ・スタイルにジャズっぽいコードが混ざっていたり、自分が影響を受けた要素が全て詰め込まれているから、彼らの音楽性にはすごく共感する。SOIL & ‘‘PIMP’’ SESSIONSとか、日本のアプローチはソウルフルで良いよね。

──なるほどね、「ジャジーヒップホップ」ってやつだね。

あとこれは僕の思い違いかもしれないのだけれど、アメリカでは1つのことに集中したり熱中したりすることがダサいって考えられがちなんだよ。でも日本では許されるよね。1つのことに集中して、しっかりと知識を持つってスタイルが日本ならではなんじゃないかな。それが良いクオリティを生み出すことに繋がっていると思う。

──要するに、日本人の気質として「めちゃくちゃオタク」ってことだね。笑

そうなんだけど、ただ単にオタクってだけじゃなくてさ、真摯に取り組んでいるじゃん。純粋にリスペクトできる姿勢だよ。それが日本の音楽文化の一側面じゃないかなとも思う。今回の日本ツアーでもオーディエンスはオープンなマインドで、色々なことに興味を持って聴いてくれていた。素晴らしいことだよ。

<2022年10月某日 ライブ前の渋谷O-EASTの楽屋内にて>

* * *

 

RELEASE INFO

ハドソン・モホーク 『Cry Sugar』

リリース:2022/8/12
レーベル:Warp Records

トラックリスト:
01. Ingle Nook
02. Intentions
03. Expo
04. Behold
05. Bicstan
06. Stump
07. Dance Forever
08. Bow
09. Is It Supposed
10. Lonely Days
11. Redeem
12. Rain Shadow
13. KPIPE
14. 3 Sheets To The Wind
15. Some Buzz
16. Tincture
17. Nork 69
18 Come A Little Closer
19. Ingle Nook Slumber

詳細:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=12883
配信URL:https://hudmo.ffm.to/cry-sugar-megamix

ハドソン・モホーク

Twitter:https://twitter.com/HudMo
Instagram:https://www.instagram.com/hudmo/
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCmYqb1kf9XBVBSsqsk-pOfA/videos?app=desktop

Seimei

Twitter:https://twitter.com/seimei1992
Instagram:https://www.instagram.com/seimeikawai/
SoundCloud:https://soundcloud.com/i-am-seimei
TREKKIE TRAX:https://www.trekkie-trax.com/

musit編集部