ミームトーキョー、東阪ワンマン『MEMETIC DAYBREAK』でファンと迎えた「夜明け」の先

ミームトーキョー、東阪ワンマン『MEMETIC DAYBREAK』でファンと迎えた「夜明け」の先

先月17日、恵比寿LIQUIDROOM(以下、リキッドルーム)にてミームトーキョーのコンセプト・ワンマンライブ『MEMETIC DAYBREAK』が開催された(本公演は東京と大阪の2ヶ所で開催され、大阪公演は5月4日、OSAKA MUSEにて開催された)。

いくらか暖かさは感じられるものの、曇天の日曜、しかも未だ昼前の恵比寿は人気が少なく閑散としている。そのためか、おそらく同じ会場へ足を運ぶであろう人の姿はかえって目視可能な状態であった。

リキッドルームの前には開場20分前にして既に多くの人が列を為していた。VIP席のチケットからスタンダード、最後に当日券の順に会場内へ呼ばれ、リキッドルームの階段を下っていく。この会場には私自身、何度も足を運んだことはあるものの、日中早い時間からの観覧は未知の世界のため一層新鮮味が増す。

開演まで1時間を切ったところで場内へ。フロアは日曜の恵比寿駅周辺とは違い、既に多くの人で溢れていた。ファン同士で再会を喜びあったり、推しメンバーのパフォーマンスを確認しながら各々の配置につくなど、緊張感よりも和やかな空気が上回って場内を漂っていた。VIPチケットだけで80枚ほどは捌けていただろうから、ほとんどソールドに近かったのではなかろうか…。

12時より少し手前、場内に本公演における注意事項を述べたアナウンスが流れる。歓声は避け、想いは拍手とペンライトに託された。定刻と同時に場内の照明が消える。すぐにメンバーが列を揃えて登場するかと思いきや、ステージの上から聴こえたのは、SOLIによる影ナレーションだ。

「みんな、緊張していますか? でもみんなの頑張って練習してきた姿はちゃんと見てたから、自信持って頑張ってね!」

物理的距離はあれど、誰よりも近い距離で暖かな眼差しを注ぎ、しっかりとメンバーの背中を押すSOLI。カタコトの日本語ながら、紡ぐ言葉の一言一句がステージに立つメンバー5人の不安を掻き消すような力が宿っているように思えた。

SOLIの影ナレーションが終わると、チャイナを基調にした煌びやかな新衣装を纏ったメンバー5人がステージに姿を表し、四方八方に差し込むレーザーと共に「THE STRUGGLE IS REAL」の妖美なイントロが流れ出す。昨年8月にリリースされたメジャー・デビュー1stシングルとなる本楽曲には、meme tokyo.からミームトーキョーに名称を変え、メジャー・シーンのフィールドへ立ち向かおうとする強い覚悟と明確な意思表示を感じる。

‘‘僕ら見世物人生? 言わせとけ まだ消えないで
夢の続き 取り戻すために さあ悲劇の主人公やめて
構わないで なんでもありでしょ?’’

meme tokyo.としてデビューした2019年、ホームグラウンドである秋葉原ディアステージからデビューした彼女たちは、「でんぱ組.incの妹分」というコピーを掲げて「でんでんぱっしょん」や「バリ3共和国」のカヴァーをフィジカル・シングルに収録。その話題性から徐々に集客力をつけ、各々が切磋琢磨しながらアイドルとしてのスキルを磨いてきた。

幾度かのメンバー入れ替えを経て、昨年8月に悲願のメジャー・デビューを果たした彼女たち。「THE STRUGGLE IS REAL」はスラング英語で「ちょっと辛いかも」。ただ、ミームトーキョーが本楽曲で示そうとするのは、他者評価のしがらみから脱することを望む強い闘争心であるように思えた。

ラウドやミクスチャー・ロックを融合させたメロディが痛快な「ROAR」では、ハンドマイクを片手に観客を煽りながらダイナミックなパフォーマンスで展開。まだ頭の冴え切っていない観客の身体を揺り動かすようなパーティー・チューンは、良い意味で「地元のワル」っぽさのある無邪気な側面を垣間見ることができる。

自己を奮い立たせるようなフレーズで構成された「リアリティ・ウォー」、昭和レトロをベースに「ないノスタルジー」を掻き立てつつも自身を「最先端のアイドル」と豪語しながら時空を往来する「レトロフューチャー」の2曲を披露。その後、最新シングル「アニモア」のカップリングであり、NENEが以前から夢に見ていたセルフ楽曲提供となった「OVERNIGHT」へ繋ぐ。表題曲とのコントラストも目新しい、レトロ・ポップの質感が夜のドライブへと連れて行くかのように艶やかなトラックを、NENE本人を含めたメンバーそれぞれが個々の表現力をもって丁寧に歌い上げていく。

後半ではトラックメイカーのKabanaguとhirihiriが彼ららしい突飛なリミックスを提供したことも記憶に新しい、鮮烈でトライバルなナンバー「アンチサジェスト」、RITOの軽快かつ中毒性のあるラップが際立つ「モラトリアムアクアリウム」などの人気曲を披露。MCではMITSUKIが「さっき‘‘さあ始まるぜ 深夜徘徊 つか気分はハイかい? ちょっと早いかも?’’なんて歌ってたけど…RITOくんどうですか?」と、RITOのラップ姿を如実に再現しながらフロアをどっと沸かせ、一旦肩の荷を下ろすようにしてトークを展開。「そんなんじゃないから!笑」と返すRITOを始め、各々が今日この日を迎えるまで様々な不安と緊張を抱いていた胸の内を明かしていたが、会場に訪れた大勢のファンをステージの上から見たことで、靄がかっていた心が晴れたと安堵の表情で答えていた。

また、今回のツアー・タイトル『MEMETIC DAYBREAK』についても言及。本公演のセットリストは『DAYBREAK』=夜明け、つまり「一日の時間軸」をコンセプトにメンバーが創意工夫を凝らして決めたものだという。‘‘夜はずっと続かないんだから’’と歌う「ブランニューワールド」や‘‘見つけてよ 星屑のなか’’と徐々に薄暗い夜に染まっていく「ニュー・ポスト」などの楽曲を経て、最新曲「アニモア」で今日の一日を締め括る。

アンコールではTシャツにショートパンツとラフな格好に着替えたメンバーが、それぞれにありったけの感謝の意を述べる。その流れに乗って「また曲を作っちゃいました」と、NENEが再び作曲を手掛けた未発表の新曲「Sweet Dream」を披露。「OVERNIGHT」同様、揺蕩うような長い旅路の途中で見る夢にも似たメロウな楽曲は、グループとしてのアーティスト性を更に押し広げる可能性を感じた。

「Sweet Dream」の披露をもって本公演は終了──かと思いきや、先程耳にしたばかりのエレクトロなイントロが流れ始め、本日2回目の「アニモア」へ。アンコールver.ではメンバー全員がフリースタイルとなり、訪れた観客とこの日の多幸感を共有するかのように満面の笑みを浮かべながら、まさしく‘‘赤い光線の中ですら煌めく’’憧れの「君」として我々の前に降り立ってくれているように思えた。

‘‘戻れないよ 未来の映像に追いついちゃったのに
キリのない光がまだわかんないな
もうちょっと近くに行くから 夢と思わないでくれ
はじめてあった時くらいにもっとスピードを出すからね’’

4月13日にリリースされた最新曲「アニモア」は、今回のツアー・タイトル『MEMETIC DAYBREAK』との親和性を大きく感じられる。それはmeme tokyo.としてデビューした彼女たちがミームトーキョーに名称を切り替えるまでの変移の裏にあった「ライブアイドル」として世界を魅了するという彼女たちの矜持と、国やジェンダーの垣根を超えた、無二の存在へとなり行く姿に馳せるリスナーの期待が両者に込められていることが理由であろう。

一日、いや何日、何年かけても劣ることのない彼女たちの熱量は、この先もリスナーより何歩も先の未来へ進む速度を持ち合わせている。瞬く間に人から人へと伝染(ミーム)する彼女たちの姿を見失ってしまわぬよう、今はよく目を凝らしていたいと思う。

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翳目