「白紙の時代」に色鮮やかな音楽をーPELICAN FANCLUB・ニッポンコーリング配信

「白紙の時代」に色鮮やかな音楽をーPELICAN FANCLUB・ニッポンコーリング配信

コロナ禍の影響により、もう半年以上ライブハウスへ足を運べていない。
好きなアーティストのSNSは次第に更新が減っている。元気にしているのだろうか。

そんな不安や心配が胸を過りながら迎えた今年のシルバーウィーク。その3日目に、私の愛すべきバンド・PELICAN FANCLUBは楽器を手に取り、私たちの前に姿を現した。『NIPPON CALLING』という、国内各地のライブハウスを繋げたオンライン配信の中で。

その日、多くのコメントが流れる中、私は目を見開いて、音量を最大に上げて彼らが演奏する始終を見守った。

およそ7ヶ月振りのライブだと、Vo.エンドウは言った。

 

啖呵を切るようにして最初に演奏されたのは3rd AL「Home Electoronics」のリード曲『Night Diver』。

Night diver 息を止める ただただひたすらに冷たい方がいい
誰もいない交差点の外に そのまま飛び込んで行く

エンドウの芯をもった歌声が、画面の中の渋谷O-nestに、そして画面越しに彼らを観る私の部屋に響く。
彼らを観るときと同じように、私は自室の白い天井に向かって拳を高く突き上げた。

曲中、エンドウは久々のライブに少し緊張したのか、歌詞に詰まってしまう場面が見られた。
しかし、Ba.カミヤマやDr.シミズがカバーするように演奏を続け、それにつれて次第にエンドウも持ち直し、最後まで歌い上げた。これを後のMCで、Night Diverの歌詞を引用し「戦略的撤退はしないからね」と冗談交じりに言い放っていたことに彼らしさを感じ、7ヶ月ぶりというブランクを埋めてくれるような安心感を得た。

次ぐ2曲目は、バンド初期から長く歌われ続けている『Telepath Telepath』。

さよならだ もう嫌だ 終わりにしよう 地球でしか住めない生活は>というフレーズが、コロナ禍で世界中の人々が四方八方に振り回された今となっては、ある種の愛情が込められた皮肉にすら感じとれる。

この曲は初期から長く歌われる名曲であると共に、彼らのメジャーデビュー1作目となったアルバム「Boys just want to be culture」のオープニングトラックの役割も担い、バンドにとっても、更に彼らを応援する私たちファンにとっても特段思い入れの深い曲だ。

バンドはもうじきメジャー2年目を迎えるが、今年は2周年当日に、彼らのMV制作及びジャケットデザインを手掛けている”Graphers Rock”とコラボレーションしたワンマンライブも控えている。
PELICAN FANCLUBがバンドとして大きな進化を遂げる起点となった記念日のライブ。今年も無事に祝福することが叶うのを、今はただ祈るばかりだ。


 

終始不穏な空気感を放ちながらも、リズミカルなメロディと語感が癖になる『ハイネ』の演奏を終えると、『Amulet Song』のイントロが鳴り、その一瞬、それまで穏やかに流れていたコメント欄がざわめくように走り出す。

何を隠そう、この『Amulet Song』は、この日まで一度も披露されたことがなかったのだ。

歌の冒頭、エンドウは私たちにいくつも疑問を提示する。
君の覚悟はどう? そこに革命もどう?
君の描く理想はどう? そこに確信もどう?
と。

Amulet Song』は今年4月、リクルートの”新たな一歩を踏み出そうとする人々を音楽の力で応援する”企画によって書き下ろされた楽曲だ。
自由な生活は不自由><不安と期待で泡を吹いたようだ>と、新しい生活を送る上で多くの人が衝突する壁を突きつけながら、<いつまでもここで生きていたい いつまでも綺麗に生きていたい いつまでもここで生きていたい かける言葉がない>と本能に従い歩み続けることへの勇気をくれる。それは長い活動年数の中で紆余曲折を経て、今日ここまでたどり着いた彼らだからこそ描ける情景なのではないだろうか。

また、リリースインタビューにおいてエンドウはこの曲を「背中を押す歌ではなくて、背中を刺激する歌」であると語っている。だから<かける言葉がない>と言い切ったのだろう。

戦う君は美しい 間違いの全て正解だったんだ

実に清らかな表情で歌うエンドウの姿を画面越しに眺めながら、私はこの苦境の中で生き延びる希望を同時に見出した。その希望は彼らとまたライブハウスで再会することを願い、この状況下を耐え続ける私たちファンにとって、唯一信じ続けられる光でもあった。

Amulet Song』のアウトロから繋げられたのは、昨年放送された人気アニメ「Dr.Stone」のOPに起用された『三原色』だ。

想像をしていた位置から見える景色 想像をしていた「1」を手にした時

メジャーデビュー後のペリカンファンクラブは、極めて希望に満ちている。
Amulet Song』にも『三原色』にも共通しているのは”前を向き進み続けるエネルギー”が感じられるという点で、バンドとしての姿勢がそのまま表現されているようにも思うのだ。

僕らの明日に色があったら 目に見えるようにさ 描いていく>ーー

明日、明後日、そのずっと先へ。
日頃彼らが私たちに様々な表現技法で見せる”色”は、次はいかにユーモアラスな色合いで示してくれるのだろうか。

三原色』が終わり、噴き出た汗を拭いながらエンドウは締めのMCに入り、画面越しの私たちへこう告げた。

「このフロア(渋谷O-nest)をいつかーーいつか、埋められると思って、これからも活動していきます。ありがとうございました。」

そう言って最後に演奏されたのは『記憶について』。

大事なことは全て叫んだ 思い出を一口譲ってよ

バンドの、そして私が募らせる”個”としての記憶。それから、バンドと私が”共通認識”として積み上げていく記憶。このバンドと同じ時間を刻む中では、どちらも共有していたい。そして、彼らが連れて行く先に見せてくれる景色をまた共に見たい。

日々移り変わる情勢ではあるものの、徐々にライブハウスに対する規制は緩和されている。ペリカンファンクラブも、前述した通りにワンマンライブ、その前には地方対バンツアーも控えている。
長い戦いはきっと今後も続いていく。しかし、それでもいつかは「たった7ヶ月」と言えるように、彼らとこの期間を忘れるほどの色鮮やかな思い出を残せるまで、私は今後も一切の希望を捨てず、バンドと共に歩み続けるだろう。

翳目