【アプリレビュー】音楽特化のSNS《Muzine》と《Roadtrip》はメインストリームとなるか?
音楽特化のSNS、欲しくない?
弊サイトの読者の皆様は音楽好きの方が特に多いと思われますが、普段SNSを利用していて、「音楽に特化したフォーマットが欲しい」と思うことはないでしょうか?
おそらく、音楽好きのSNSユーザーの大半がTwitterもしくはInstagramを利用しており、自分の好きな音楽について発信しながら趣味の近い人と繋がったり、あるいは情報収集などを行っているかと思います。
しかし、TwitterもInstagramも音楽に特化しているサービスではなく、当たり前ですが音楽好きどうしで繋がっていてもそれとは関係のない情報(ノイズ)が入ってきます。特に、ここ最近は誹謗中傷などSNS上のモラル低下が浮き彫りになっており、辟易している方も多いはずです。
純粋に音楽の話だけがしたい…そう思うのはごく自然なことであり、音楽に特化したSNSが欲しい! と思うのは、決して筆者だけではないと思うのです。
音楽特化のSNSは成功事例が少ない
実は、これまで音楽に特化したSNSはいくつか存在してきましたが(代表的なものは《MySpace》など)、サービス自体が終了してしまったり、リリース前に破綻したりと、なかなか定着するものが登場していないのが現状です。
本なら《読者メーター》、映画なら《Filmarks》などが主流ですが、音楽に特化したものとなると、やはり具体的なサービス名を思い浮かべられる方は少ないと思います。結局、汎用性が高くユーザー数も膨大なTwitterやInstagramなど、使い勝手の良いものに人口が集中するのは当然の結果でしょう。
※音楽に特化したSNSが成功しない詳細な理由に関しては、下記の記事を参照。
なぜ音楽SNSは破綻するのか?
しかし、そんな厳しい音楽特化SNSのマーケットに挑戦するサービスが、ここ最近で新たに登場したのをご存じでしょうか?
この記事では、《Muzine》と《Roadtrip》という2つのアプリについて紹介していきます。
自分だけの音楽マガジンを作れる《Muzine》
《Muzine》(ミュジーン)は、2020年にiOS向けにリリースされたiPhone向けのアプリです。
<自分だけの音楽マガジンを作ろう!音楽特化のSNS!>という謳い文句の通り、音楽に関する投稿のみに特化したSNSとなっています。

Muzineという名称も、MusicとZine(=ジン、個人もしくは少人数のグループで作成される比較的小規模な自費出版物)を組み合わせたものと思われます。
筆者はTwitterで偶然知って使ってみたのですが、かねてよりFilmarksの音楽版が欲しいと思っていた自分にとっては、今後に期待したくなるようなアプリでした。
《Muzine》では何ができる?


Muzineの基本的な構成は、多くのSNSと同じように、ホーム画面(タイムライン)やマイページ(プロフィール)、通知欄などで構成されており、いわゆる投稿への「いいね機能」やアカウントの「フォロー機能」も備わっています。
投稿に曲のリンクやタグをつけられる
Muzine最大の特徴は、投稿できる内容の形式です。
投稿内容の基本的な構成としては、Twitter、Instagram、noteなど既存のSNSを組み合わせたような仕様になっており、下記のものが設定できます。
・楽曲(5曲以内)
・タイトル(40字以内)
・本文(30000字以内)
・タグ
・サムネイル(5つ以内)

読者メーターやFilmarksのようにレビューだけを書く、というより、気軽に音楽の記事を書けるようなブログ風の機能がついています。ここがまさに、<自分だけの音楽マガジンを作ろう!>というコンセプトに沿っている部分です。
本文の文字制限が30000字以内と、ロッキング・オンのインタビュー並のボリュームで書けるというのは大きな魅力です(おそらくそこまでの長文を書く人は少ない、と思いつつ)。

設定できる楽曲は4500万曲以上。サブスクリプションで配信されている楽曲であれば、ほぼそろっているという充実ぶり。ただし、アルバムやEPなどの作品ごとではなく、あくまで曲単位での投稿という点には注意が必要です。
メリット
・好きな音楽を集めた記事を手軽に作成/共有できる
・サムネイルなどを凝れば、オリジナリティのあるWebマガジンとして運用できる
・作品を聴いた感想、もしくはライブの感想などを書き留めておける
・「注目」タブから、話題になっている楽曲を知ることができる(主にJ-POPチャートの上位)
<自分だけの音楽マガジン>というのが基本的なコンセプトですが、もっと気軽に使いたいという方は、サムネイルやタグなどを設定しなくても投稿することができます。楽曲の感想を自分用のメモ程度にまとめておく「備忘録」的な使い方もできるのが魅力でもあります。
デメリット
魅力的なサービスではありますが、まだまだ改善点があるのも事実です。
例えば、こんなバグがありました(いずれも2021年2月末時点では改善済)。
・フォローしているユーザーなのにフォロー中と表示されない場合がある
・いいねしたのにその表示が反映されない場合がある
・フォロワー/フォロイーの位置ずれ
また、下記の点も個人的には気になりました。
・曲単位での投稿なのでアルバム単位での共有ができないのがストレス
・投稿へのコメント欄が少し見にくい
・iOS向けのサービスなのでandroidユーザーは使用できない(人口が限定されてしまう)
その他、新しいサービスゆえにユーザーの絶対数がそもそも少なく、タイムラインがあまり動かないというのが現状です。ただ、これはアプリの知名度や使い勝手が向上すれば改善されてくるかと思います。今後に期待、です。
音楽版Clubhouse《Roadtrip》
《Roadtrip》は、2020年にiOS向けにリリースされたアプリです。
こちらは海外で開発されたものとなります。

ここ最近で急激に勢力を拡大した《Clubhouse》のように、オンラインのルームを作り、その場でリアルタイムで音楽を共有できるSNSです。
《Roadtrip》では何ができる?

Roadtripにも、SNSの基本となるプロフィール画面やフォロー機能が備わっています。ただ、発信できる内容が音楽そのもの(プレイリスト)に特化しているという点が大きな特徴です。
プレイリスト単位での共有が基本なので、サブスクリプション・サービスの公式プレイリストとはまた違う、世界中の音楽フリークによる選曲に触れられるため、ディグをしたい人にとってもまたとないツールなのではないでしょうか。
誰でもDJになれる
Roadtripが支持されるのは、やはり「誰でもDJになれる」という機能が備わっているからでしょうか。


自分で作成したプレイリストをプロフィール欄に表示できるだけでなく、オンライン上に架空の<ルーム>を作成し、その場で再生することで不特定多数のユーザーとリアルタイムで共有することが可能です。もちろん、公開されているルームであれば、リスナーとして参加することもできます。

まさに、Clubhouseよりもクラブハウスなのではないか?といった具合です。
ただし、音楽を共有するためには、Spotifyのプレミアム会員(有料会員)であることが前提条件となっています。
メリット
・クローズドなオンラインの仮想空間でDJになりきることができる
・Clubhouseのような音声トークだけでなく、チャットでの交流も可能
・世界中のユーザーが作成したプレイリストに触れることで、思いがけない音楽との出会いが期待できる
Twitterはノイズが多いし、Clubhouseにはあまり良いイメーシがない(そもそも招待されていない)…という人が、純粋に音楽を(しかもリアルタイムで)共有できるという点で、非常に魅力的なSNSです。音楽に特化したフォーマットなので、悪事の温床になりにくいことも予想できるのではないでしょうか。
デメリット
・Spotify(しかもプレミアム)ユーザーでないと音楽を共有できない
・iOS向けのサービスなのでAndroidユーザーは使用できない(人口が限定されてしまう)
こちらもやはりiOS向けです。ただ、現時点ではやはり全体的なユーザー数が少ない印象ですが、それほど大きなデメリットもないため、今後さらに盛り上がってくることは十分に期待できる気がします。
最後に
なかなか息の長いフォーマットとして定着しない音楽特化のSNS。
しかし、今回紹介した《Muzine》と《Roadtrip》は、ユーザー数が増えて認知度も高くなればそれなりのコミュニティを構築できるのでは? という期待を少なからず持てるアプリでした。
まだこの先も続くであろうステイホーム期間を利用して、試しにダウンロードしてみるのも一興かもしれません。
(執筆=對馬拓)
musit編集部




