「お前らが原因でコロナにかかるなら俺は全力で受け止める!」”投げ銭ライブ”で観た挫・人間の勇姿を徹底レポート!

「お前らが原因でコロナにかかるなら俺は全力で受け止める!」”投げ銭ライブ”で観た挫・人間の勇姿を徹底レポート!

今、音楽業界に大きな波が押し寄せている。

新型コロナウイルスの影響により、数々のイベントやライブが軒並み中止。始めは2週間の自粛要請だったものの、その後の感染拡大によりさらに自粛期間が延長。Twitterには毎日のようにイベントやライブの中止・延期情報が流れ、誰も悪くないのに「申し訳ございません」が飛び交い、ライブハウスやイベントの運営、アーティストの身はどんどん小さくなっていく。

そんな中で「開催します!」「決行します!」と宣告すれば、すぐに世間やメディアの目に止まりバッシングの嵐。その姿をただ見つめることしかできず、もどかしさを感じる音楽ファン。今、私たちの音楽は徐々に行き場を失い、太陽のような明るく眩しい光がぼんやりと霞み、遠くなっていくのを感じているばかりだ。

そのような”自粛ムード”の影響を受け、3月4日にリリースされたばかりの挫・人間の新アルバム「ブラクラ」を引っ提げてのインストアライブも新宿・渋谷・池袋・名古屋・難波の5か所を巡るツアー日程の中で、池袋以外の4か所が中止になった。
「ブラクラ」は1年4ヶ月という挫・人間にしては長い期間をかけて製作され、満を持してリリースとなったアルバムだった背景もあり、中止の発表にはメンバーもかなり遣り切れない気持ちがあったようだ。

しかし、インストアイベントの中止発表から数日後、挫・人間の公式HPには新たな情報が更新されていた。

その内容は、インストア中止の代わりに、各地で演奏する予定だった曲目を、ライブハウス・新宿紅布(レッドクロス)にて全曲演奏、観客はYouTubeでの配信を視聴するか、来場して投げ銭制の2パターンで観ることが可能、というものだった。
その名も「インストアイベントで披露予定だった曲全見せ(配信あり)&野菜増しニンニク少しライブ」。

様々な意見や論争が飛び交う中での開催、ということになったが、このような「安全を配慮して配信で観るもよし、投げ銭を払ってライブハウスに来るのもよし」という2パターンの選択肢を与えることは非常に懸命な方法だと言えよう。ライブをしたい挫・人間のメンバーと、挫・人間のライブが観たいファン、それからこの状況下で少しでも収益が入ればと考えるライブハウス。
まさに「三方よし」のバランスが保たれた体制で、このイベントの開催に踏み切った挫・人間に私は心から感謝の意を伝えたい。

そしてイベント開催当日。
緊急開催として告知された上にあいにくの天気だったが、新宿紅布はほぼ満員状態。スタート前からすでに挫・人間ファンの音楽愛を強く感じさせる状況だ。
13時、メンバーの登場と共に配信用のカメラが回り始めた。いつもなら野獣かのごとく大声を上げて登場するGt.夏目が、不慣れな状況にソワソワしているのか、ゆっくりと、若干モジモジしながら先頭を切る。それを後ろで見ていたVo.下川が「何それ!?いつもと全然違うじゃん!」とツッコミを入れ、最後にBa.アベが続く。

アコースティックということで、メンバー三人はパイプ椅子にそれぞれ楽器を持って腰かけ、配信用カメラに落ち着かない様子を見せながらも喋り始めた。

「今日はね、急遽開催ということでやってますけどもね…配信って初めてじゃない?ドキドキするな、変な感じ(笑)」
いつもよりたどたどしい喋り口調の下川が、そう言って視線をカメラに移しながら配信を視聴しているファンに向けて手を振ると、他のメンバーもその姿を真似る。

”MCが長すぎる”ことでも知られている挫・人間。だが、この日は画面越しの視聴者が「早く曲やれよ!」と飽きられてしまうことを恐れ、下川が「もういいよ、曲やろう」と幾度となく催促していたのが印象的だった。

「今回のインストアライブは、本当は全箇所違うセットリストでやるつもりだったんです。そのために既存の曲もアレンジを加えて練習してきたし…もったいないので聴いてください!」

この日最初に演奏されたのは、過去にひめキュンフルーツ缶へ楽曲提供をした「ハヤオ」のセルフカバーだ。ライブで演奏されるのは非常に珍しく、イントロが鳴った瞬間に場内には嬉しい悲鳴が湧き上がる。

次ぐ二曲目は「可愛い転校生に告白されて付き合おうと思ったら彼女はなんと狐娘だったので人間のぼくが幸せについて本気出して考えてみた」。
演奏途中、夏目がふざけて合いの手をしたり、ギターソロで恍惚な表情を浮かべるのを下川が白けた顔で見つめたりと、リラックスした微笑ましい(?)姿を見せた。

「今日のライブに来てるみなさんにお願いっていうかルールなんですけど、”投げ銭”をして帰っていただきたいんです。」

「今、色んなアーティストが配信ライブとかやってるじゃないですか、無料で。
でも俺はオタクだから”金を落としたい”という気持ちの方が強すぎてね…。だから会場に来た皆さんは、今日は投げ銭をして帰っていただきたい。

あと、1円・5円・10円玉を差し出すやつはうちの梶原(挫・人間のマネージャー)が全員顔覚えてブロックしますからね。俺たちはお賽銭箱じゃないんで。」

そう言い終えた後、「あ、でも5万円とか入れるのもやめてくださいね!困っちゃうから!あくまで常識の範囲内で!」と付け加えて笑いを誘った。

その後は、最新アルバム「ブラクラ」収録曲の「マカロニを探せ!」、下川の繊細な歌声が響く「十月の月」、普段のライブでも滅多にやらないという「eve」や「多重星」などを披露。”新旧問わず”という言葉通りのラインナップだ。

「挫・人間のファンってオタクばっかりだからね、、圧倒的に在宅が多いでしょ?だからね、オタクの歌をやるか…」そう言って演奏されたのは、下川流の甘酸っぱい恋愛ソング「ゲームボーイズメモリー」。

”大人になったこの僕に もし願いが叶うなら
あのこがずっと忘れないサヨナラがしたい
届きませんように”

途中、下川がふと思い立ち、自身のiPhoneで動画のコメント欄を確認すると、「お金払いたい!」などのコメントが多数寄せられており、「振り込み先の口座とか開設しよっかな?」とご満悦そうな表情を浮かべた。

アコースティック形式での配信ライブは、「そばにいられればいいのに」で一度幕を閉じた。
予想以上の曲目に、投げ銭でいいのかと思ってしまうほど贅沢な時間だったが、配信終了後は会場に来た観客限定で、さらにバンドセットでの演奏が待ち構えていた。イベントタイトルの「野菜増しニンニク少し(配信なし)」の部分だ。

バンドセットの準備が整い、再び幕が上がる。最初に登場した時とはまるで人が違うように、夏目が野獣のようなシャウトを発しながら登場し、その背後をアベ、下川がついていく。
「ここからは選ばれし者だけの空間だ!」より一層熱のこもった下川の一声が合図となって、観客全員の拳が上がる。

バンド編の一曲目は今回のアルバムで衝撃の問題作となった「ソモサン・セッパ」。

「あーあ、なんで俺は戦う美少女じゃないんだろう、
肌色率の高い青春もないし、やることもないから、
リカちゃん電話に日頃の不平不満でもは〜なそっと」

という下川のぼやきから始まるこの曲は、まさにカオスそのもの。
曲中には様々な声色をもった”何人もの下川リオ”が登場するが、下川はすべてのキャラを生声でも完璧に再現し、会場にどよめきを起こした。この男の滑舌の良さは尋常じゃない。

バンド編では「ブラクラ」の楽曲を中心に演奏され、夏目がボーカルを務める「童貞トキメキ☆パラダイス」はふんだんに盛り込まれた下ネタのぶっ飛び具合に笑い、青春ラブコメのように純度の高いラブソング「一生のお願い」では、この日最高潮の盛り上がりを見せる。

さらに、この日のラストを締めくくった「絶望シネマで臨死」では、サビ前に下川が額に汗をかきながら、観客側へ身を乗り出し「あなたたちが原因で俺がコロナになったとしても、そんなもの喜んでかかってやりますよ!」と声を張り上げた。


これはこの日にライブを決行した彼らが心の底から思っていることでもあり、私たちにとっても、最も欲しかった言葉であることは間違いない。

また、下川は後半度々「やっぱり久々のライブは楽しいよ!」の満面の笑みを浮かべ、「俺はね、”不謹慎”と”自分よりも弱い存在”が大好きなんですよ!お前らのことだぞ!!」と下川らしい毒を含んだ愛情表現を重ねながら、全編計2時間の演奏を終了させた。

現在、未だ各地のサーキットフェスやライブの自粛が続いている中で、この先どうなるのか、一体いつになったら私たちが愛する日常が戻ってくるのか、不安な気持ちは音楽に関わるすべての人たちが持っていることだろう。いつか終わりは来る、でもいつになったら終わりが来る?私たちの日常を奪われているこの現状を、私たちは許してはならない。

全身で音楽を感じ、その場で受け取った力で様々な壁を乗り越えられる人たちがいる。
音楽は無力だと言う人もいる、でも音楽は毎日誰かの背中を押している。

「ライブハウスは悪」という人がいる。今開催するすべての公演に、白い目を向ける人たちがいる。

だけど、だからと言って自分たちまで”自粛ムード”になっていいのだろうか?私はいち音楽ファンとして、今後も開催されるライブに極力足を運ぶ”ということを徹底していきたい。もちろん自己責任であることは承知の上だし、批判の声が上がることも分かっている。
それでも、私の居場所を作ってくれた「ライブハウス」という空間を前にして目を逸らすようなことはしたくない。これは私にとってのポリシーに近い。
自分にとって”正しい選択肢”を選ぶ為、私はこれからも執り行われるライブにはいつもと同じように行く気でいる。また嬉々とした表情でライブハウスに足を運び、音に身を任せて踊れる自由な毎日が戻ってくるのを心待ちにしながら。

なお、挫・人間は日程通りに今回のアルバムを引っ提げてのツアー「挫・人間TOUR2020~さような来世!風と共に去りヌンティウス〜」を行う予定とのこと。ライブ予定が軒並みなくなり悶々とした気持ちでいるのなら、ぜひ挫・人間のライブに足を運び、昨今の鬱憤を晴らしてほしい。

せきね