【インタビュー】元ルルネージュ・渡辺樹莉、グループと共に夢を追いかけた3年間を語る
11月30日、秋葉原を拠点に活動するアイドルグループ・ルルネージュから、渡辺樹莉が卒業した。
常に全力投球のエネルギッシュなパフォーマンスを披露し、ファンに勇気を与え続けてきた彼女。卒業から約一ヶ月が経った今、彼女は何を考えて、この先どこへ向かっていくのだろう。卒業後の彼女に迫る貴重なインタビュー、是非目を通してほしい。
取材/文=翳目
写真=musit編集部
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「樹莉を止める理由がない」と言われて
──10月初旬にグループの卒業を発表していましたね。実際、卒業自体はいつ頃から考えていましたか。
実は卒業を発表する前までの1年間ぐらい、何となく「卒業」っていうワードが頭の中の少し後ろぐらいにあって。本格的に考えるようになったのは夏前で、決心したのは秋になる少し前ぐらいでした。だから実際、決心してから卒業に至るまでは本当にあっという間だったんです。
──なぜこのタイミングで卒業が浮かぶようになったんでしょう?
元々事務所側から契約期間が3年間っていうのを伝えられていたので、最初にアイドル活動を始めるって決まった時に「3年後、自分の目指すべきところにいなかったら辞めよう」とどこかで思っていたんですね。それから3年間、スタート地点からどこまで現状を変えられるかっていう気持ちで活動を続けて、今年の秋に3年が経ったんです。そこで今までのルルネージュでの活動を振り返ってみたら、この場所で今後も活動を続けていくのはベストじゃないような気がして。このチームでやってこられたのは、目指すべきところへ向かう苦しさもひっくるめて心の底から楽しめていたので、「期限が来たからバイバイ!」みたいに簡単には決断できなかったんですけど…。

──自身の葛藤も大きかったと思います。
やっぱりメンバーのことがどうしても気にかかっていて。私自身、これまでメンバーが卒業や脱退していくのをたくさん見てきたので、置いていかれる側の苦しみや悲しみは痛いほど分かるんです。だから、今度は自分が与える側になってしまうと思うと…。
──今度は自分が残りのメンバーに辛い思いをさせてしまう。
そうですね。それもあるし、私がグループを辞めるということは他の人の人生を変えてしまうことになるんですよ。もしかしたら、この先私が抜けたことでグループが成功して「あの時、樹莉が辞めて良かったよね」ってなるかもしれないけど、やっぱり「卒業」ってどちらかというとマイナスなイメージが大きいじゃないですか? (自分が抜けることで)メンバーの行く先も変えてしまうし、少なくともファンの方には悲しい気持ちにさせてしまうし。特に私のファンの方の中には「樹莉がいるルルネージュの現場が一番居心地良いよ!」って言ってくれる人も多かったので。
──確かに。卒業公演を終えた後も、Twitterで「ルルネージュの現場は今日が最後」と投稿している人も多くいましたよね。
私を通してコミュニティを広げてくれたファンの方たち同士が、今後顔を合わせることがないって思うと苦しかったですね。「もうこの人たちをルルネージュの渡辺樹莉として楽しませることはないんだな」って。だけど、それでも最終的には自分の今後歩んでいく人生を大切にしたいっていう気持ちが強くて…。この先なりたい自分の理想像だったり、過去や現在、未来を通して今後の人生を見据えた時に、今自分が選ぶべきベストアンサーは「卒業」だなと思い決断しました。

──メンバーに伝えた時の反応はどうでしたか?
皆パニックながらも「そうだよね、分かるよ」って理解していてくれた様子でした。やっぱり一緒にいる期間が長いからなのかな。「樹莉を止める理由がない」とも言ってくれて。
──ファンの方からもたくさん反響があったと思います。中でも印象に残っている言葉はありますか?
iQ(『AKIBAアイドルクエスト iQ』)でファンの方たちへ卒業発表をした時に、「きりてぃがいなかったらこの場所はなかったんだよ」と言っていただいたのが一番印象に残っています。iQは元々六本木にあって、私はその頃からアイドル活動をしてたんですけど、メンバーがどんどん辞めていって、私1人になった時も「1人でもやってやる!」っていう気持ちであの会場を守ってきたので…。そこから秋葉原に移転したので、ある意味自分たちの居場所を守ってこれたのかな、って。それがファンの方たちに伝わっていたなら、めげずに頑張ってきて良かったなあと思いました。
いくつになっても夢を追いかけていようね
──11月30日に行われた卒業公演ですが、どんな思いで当日を迎えましたか?
「ルルネージュの渡辺樹莉はこれで最後なんだ」という気持ちがとにかく強かったから、4人のルルネージュを自分たちにとっても、ファンの方たちにとっても忘れられないようなステージにしたいなと思って臨みました。セトリも私1人で決めたんですけど、普段のライブでやる曲以外に、ルルネージュとして活動する前のグループで披露していた曲も入れたりして。
──樹莉さんのこれまでの軌跡を辿るようなセットリストだったんですね。
そうです、あとは意外と支持率が高かった曲をこの機会にセトリへ組み込んだりとか。1曲目が「青春の下で」だったんですけど、この曲って私がドラムスティックで4カウントするような振り付けから始まるんですね。そこが「ラストライブの始まりであり、渡辺樹莉としての始まり」みたいな意味合いも込めていたので、1曲目に持ってこられて良かったなあと。あとは本編の最後に披露した「星の輝く空に」は、率直に感謝の言葉を伝えやすい曲なので、歌いながら一人ひとりの目を見て「ありがとう」って伝えたり、ルルネージュとしてのデビュー曲の「まだ見ぬ世界」は「これからは違う道を歩んでいくけれど、いくつになっても夢を追いかけていようね」っていうメッセージを残したくて、アンコールで披露しました。
──ファンの方も1曲1曲を噛み締めるようにして聴いていたのが印象的でした。
卒業公演の日はライブ前にも物販があったんですけど、そこでファンの方から手紙を頂いていたんです。ライブが始まる前まで少し時間に余裕があったので、実は先にちょっと読んでたんですよ。笑 で、読んだらほとんどの人がいつもは私のことを中心に書いてくれているのに、その時はどちらかというとお客さん自身のことを書いていて。「実は昔こういうことがあったけど、樹莉ちゃんに出会って前を向けるようになったんだ」とか。それを読んで、私も誰かの人生を少しでも変えられたんだなって。ルルネージュとしての私は今日で終わってしまうけど、なおさら辛いことがある度に思い出して、乗り越えてもらえるぐらいの記憶に残るステージにしなくちゃいけないなって思いましたね。

──手紙がまた一層奮い立たせてくれたんですね。終わってからはどうでした?
終わった直後は特典会やら着替えやらでバタバタしてて。笑 余韻に浸る間もなかったんですけど…。ちゃんと卒業を実感したのは家に帰ってきてからかな? いただいたプレゼントとか花束とか、手紙とかを読んだり眺めたりしてるうちに「ああ、終わったんだな…。」って。でも特段悲しいとかではなくて、むしろ良い意味ですっきりした気持ちでした。
──卒業公演の翌日、グループへ新メンバーが2人追加となり、新生・ルルネージュが始動しました。新しいルルネージュにはどんなことを期待しますか?
私は初期メンバーだったので、私のパートを引き継いでくれる子にとっては多少プレッシャーもあると思うんですね。なので、引き継ぎのメンバーには「きっと気にしてしまうかもしれないけど、あなたの歌声は十分魅力的だから自信をもって歌っていいんだよ」って伝えたんです。そしたら少し安心してくれたみたいで。さらに強くなった梨紗、凜、紗凪には期待大ですし、グループに戻ってきてくれた池ちゃん(池田杏菜)も、ブランクがある分、今は人一倍練習して穴を埋めようとしてくれているみたいで。新しく入った(百瀬)芽衣ちゃんも、「歌の練習に付き合ってください!」って積極的に連絡してくれたりとか。私が抜けたことでマイナスになってしまった部分を、皆それぞれの力でプラスに変えようとしてくれてる。その姿を目の当たりにしているので、これからは今まで見たことのなかった景色をファンの方に見せてくれるんじゃないかなと思います。
この卒業は、今よりも高みを目指すためのもの
──まだ決まっていない部分も多いかと思いますが、今後の活動方針について教えてください。
そうですね! 今月や来月はライブだったり、自主企画のイベントだったりは積極的にやろうと思っています。この卒業は諦めるための卒業ではなくて、現状打破というか、今よりも高みを目指すための卒業なので。「樹莉のこういうところが好きだったのに」って言われることがないように…。ルルネージュとしての私はもう見られないけど、今後も別の形でステージに立って、何かを届ける仕事ができれば良いなと考えています。

──シンガーソングライターとしての活動もありますからね。
世の中に溢れている名曲って、アーティストさん自身の苦悩や辛い経験を乗り越えて作られたからこそ良い曲だなって感じると思っていて。だから、良いことも悪いことも頻繁に起きるアイドルを経験している自分なら、その時の感情を歌にして残しておきたい! っていう気持ちが強いんですね。せっかくこんなに色んなことが目紛しく起こる人生だから、曲にしないともったいない気がして。
──苦い経験もあったけど、「苦しかった」では終わらせない、と。
私の曲は自分の経験を元にした曲が多いんですけど、ただ暗いだけの曲は作りたくないので「辛かった時の感情はAメロに書くけど、サビでは明るくなりたいから自分も前を向いてしまおう!」っていう曲が多いんです。ファンの人にも、自分が辛い時に私の曲を聴いて、どんなに辛くても絶対私が手を引っ張ってあげるから! みたいな気持ちで曲作りを続けている部分が大きいですし、これからも毎日の中で大切な何かを探しながら生きていって、そこで見つけた大切なものを歌にして届けていきたいです。やっぱり曲作りは1度止めてしまうと、届けられるものも届かないと思うので…。今は自分の届けたい思いを、一つひとつ歌にしていけたら良いなと思います。
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PROFILE

渡辺樹莉
◯Twitter:@watanabekiri
◯Instagram:@watanabe.kiri
musit編集部




