12月8日より、ティモシー・シャラメ主演映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』が公開される。本作は、ティム・バートン監督とジョニー・デップが主演を務めた『チャーリーとチョコレート工場』（2005）で知られるキャラクター、ウィリー・ウォンカのオリジナルストーリーを描いたファンタジー作品。ロアルド・ダールの人気児童書を元に、一流のチョコレート店を開くという夢を持つウィリー・ウォンカの「これまで」の物語を色鮮やかに描く。
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『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』でスポットが当たるのは、亡き母との約束を果たすため、世界最高のチョコレート店を開設することを目指す青年時代のウォンカ。彼はその夢を追い求めて、一流のチョコレート職人たちが集まる町に旅立つ。
ウォンカの創り出すチョコレートはすぐに人々の間で評判となるが、長年チョコレートを販売する権利を独占してきた地元のチョコレート組合からは嫉妬の目を向けられることに。さらには過去の因縁から、オレンジ色の小人、ウンパルンパもウォンカを追いかける。様々な追手から逃れながら、ウォンカは夢であるチョコレート店を町に開くために奮闘するのだった。
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『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』は公開前から大きな注目を集めつつあるが、その要因の一つは制作陣の豪華さだろう。本作の監督を務めるのは『パディントン』シリーズでその才能を見せつけたポール・キング。若きウィリー・ウォンカとして、スクリーンに鮮やかな命を吹き込んでいるのは、『DUNE/デューン』で宇宙の運命を背負うポール・アトレイデスを熱演し、観客を魅了したティモシー・シャラメときた。さらに、製作は『ハリー・ポッター』シリーズで名を馳せたデビッド・ハイマンが担当している。これだけでも、話題性は十分だ。
しかし特筆すべきは、本作がミュージカル作品であること、ひいてはジョビー・タルボットの心を揺さぶる音楽が本作において中心的な役割を果たしている点だろう。
ジョビー・タルボットは、ギルドホール音楽演劇学校で磨き上げられた音楽的素養を活かし、1993年から2002年にかけて北アイルランドのSSWであるニール・ハノンのバンド（現在は実質のソロ・プロジェクト）、ディヴァイン・コメディでキーボード奏者兼アレンジャーとして活躍した。映画音楽の分野でも、『銀河ヒッチハイクガイド』（2005）、『ペネロぺ』（2006）、『SING/シング』シリーズ（2016／2021）など、多くの作品でその才能を発揮している。
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ジョビー・タルボットの音楽の特徴は、クリストファー・ウィールドンによるミュージカルとバレエの融合作品『不思議の国のアリス』などの曲を手がけた経験から、舞台音楽の深い理解に基づいたミュージカルの豊かな物語性と華やかさの見事な調和にある。タルボットの音楽は、人々に笑顔をもたらす魔法のチョコレートを音楽で表現しているかのように、観客を夢と希望が溢れるウォンカの頭の中の世界へと誘う。
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一方で、『チャーリーとチョコレート工場』はティム・バートンとダニー・エルフマンの独特のダークでユーモラスなスタイルが特徴だったため、過去作の雰囲気を好む人々には、音楽性の違いを感じる場面もあるかもしれない。『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』は、『チャーリーとチョコレート工場』の前日譚であるという前提があるものの、過去作とは独立したオリジナル作品として楽しむほうがよいだろう。
少なからず好みが分かれる作品ではないかと思うが、現代の技術を駆使し、最高のスタッフによって作り上げられた「若き日のウォンカ」の解釈として、本作は十分に観る価値がある。
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なお、本作の完全吹替版では多彩なジャンルの著名人が集結し、声優のみならず、アーティスト、俳優、芸人…などのスターが13曲を吹替えている。先日、Da-iCEの花村想太が歌う吹替版主題歌「ピュア・イマジネーション」のミュージックビデオが公開された。徐々にテンポが上がるメロディが印象的な本楽曲だが、何より観客の心を掴むのは、スムーズに声を切り替えながら、キャラクターの心情を丁寧に立体的に歌い上げる、花村の「声」だ。
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メジャーデビュー後に多くの音楽賞を受賞している花村は、4オクターブに及ぶ広範な音域の「奇跡の歌声」の持ち主と呼ばれている。その実力は大人気ミュージカル『RENT』で、ミュージカル初出演にして主演に抜擢された過去を持つほど。花村の奇跡の歌声然り、字幕版だけでなく吹替版の音楽にもぜひ耳を傾けてほしい。
個性豊かなキャラクターが、ウォンカとともに歌い上げる数々の楽曲は、まさに時間の流れを超えた音楽の旅をしているかのよう。過去と現在を縫い合わせ、2つの言語による音楽を通じてウォンカの旅路を辿る。それこそが、『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』を観ることの最大の醍醐味なのかもしれない。
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ポストパンクを主に聴いています。毎年苗場で音楽と共に焼死。クラフトビール好きが興じてブルワリー取材を行うこともしばしば。なんでもご用命ください。

星野

ジョビー・タルボットが紡ぐ時を超える音楽のバトン──『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』

ライブアイドルを観て聴いて推す。余暇はもっぱら映画鑑賞。文章を書いたり編集をしたりしながら、今日も推しアイドルのことを考えています。

すなくじら

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ジョビー・タルボットが紡ぐ時を超える音楽のバトン──『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』

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