今をときめくスター俳優は、誰しもが最初から才能を認められていたわけではない。地道な研鑽を積んで、今の地位へと上りつめた努力型の俳優、オーディションで偶然光る原石として発掘され、そこから瞬く間に輝き出した俳優もいる。どこかで「俳優は運試しのようなもの」という言葉を聞いたことがある。始めから成功を約束された道などなく、俳優業に限らず人の人生とは運と努力によって決定づけられるものなのかもしれない。
そんな前置きをして今回紹介したい俳優が、以前こちらの連載でも取り上げたコリン・ファースとの映画『キングスマン』（2015）での共演で、無名の青年から一躍スターとなったタロン・エガートンだ。
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『キック・アス』（2010）、『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』（2011）など、小気味良いアクションが魅力の作品たちを世に送り出したマシュー・ボーン監督。彼が取るメガホンのもとで製作されたスパイ×英国×アクションの融合した『キングスマン』は日本国内においてもヒット。本作で主人公であるスパイ候補生のエグジーを演じたタロンは、60人を超える候補者が集うオーディションで、激戦の末に見事役を勝ち取った。当時タロンは英国王立演劇学校（RADA）を卒業したばかりで、テレビドラマ・シリーズなどでのレギュラー出演は経験していたものの、ビッグタイトルの映画に抜擢されたのはこれが初めてのことだった。
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大御所英国俳優コリン・ファースとバディを組み、多くのシーンで彼と共演したにも関わらず、堂々たる演技を披露したタロン。実年齢を活かしたフレッシュさで映画に華を添え、公開されるやいなや「この青年は一体誰だ？」と映画界をざわつかせるまでに至ったのである。
そんなタロンは『キングスマン』に続く『キングスマン：ゴールデン・サークル』（2017）に出演後も、次々と話題作に登場。公私ともに交流があり、タロン自身が強烈にリスペクトしているという英国シンガー、エルトン・ジョンの半生を描いた自伝映画『ロケットマン』（2019）にエルトン本人役として主演。劇中で登場する楽曲「I Still Standing」をはじめ、彼の人生を飾ってきた名曲たちを、驚くべきほどの歌唱力で歌い上げた。
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何を隠そう、筆者はタロンの歌う「I Still Standing」が大好きで、何度もヘビーローテーションしている。この曲は彼が「彼」だから、そして「彼らしさ」とそこに乗算される「エルトン・ジョンの人生」があるから輝きを放つ曲なのであり、彼以上にこの曲を情感豊かに歌える俳優はいないだろうとまで思っている。ちなみに、アニメーションスタジオ・イルミネーションが製作した映画『SING／シング』（2016）でも彼はこの曲を歌っているが、『ロケットマン』と比較して聴くと彼自身に”憑依”している役柄が両者で異なることに気付く。キャラクターの演じ分けを歌唱で行う、そういった細部に宿る演技のディテールに、改めて彼の役者／歌手としての才能を感じるのだった。
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若き才能をこの目で見て、その活躍を追いかけられることは、映画好きにとっての喜びの一つでもある。これからも研磨されていくダイヤの石ことタロンの輝きに、暗転したスクリーンで相見えるのが楽しみだ。
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ポストパンクを主に聴いています。毎年苗場で音楽と共に焼死。クラフトビール好きが興じてブルワリー取材を行うこともしばしば。なんでもご用命ください。

星野

【スクリーンで君が観たい vol.17】無名の青年から一躍スターへ、研磨されていくダイヤの石──タロン・エガートン

日芸卒フリーライター。「生きづらさと愛を書く」をモットーに音楽、映画、マンガなどの分野で執筆活動中。主な掲載先はrockin’on、リアルサウンドなど。

安藤エヌ

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【スクリーンで君が観たい vol.17】無名の青年から一躍スターへ、研磨されていくダイヤの石──タロン・エガートン

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