MY HOME TOWN【Ot3編】

MY HOME TOWN【Ot3編】

土岐麻子のカバーアルバム『HOME TOWN 〜Cover Songs〜』に触発され、プレイリストを組んで“空想のロケ地”を語る連載企画【MY HOME TOWN】。

第四回は、都内楽器店員のOt3による六曲をお届けします。

前書き

年齢を重ねると、音楽というのは当時を思い出す大事なものになってくる。
楽しいことも辛いこともあったけれど、どれも自分なりにはベストを尽くし、それが人生を彩ってきた。

音楽はいつでも支えてくれた。
今回私がお届けするMY HOME TOWNは、そんな思いを乗せて綴っていきたい。

そして、少しでも共感してもらえたら幸いである。

①サザンオールスターズ『希望の轍』

【ロケ地】鎌倉県稲村ヶ崎

幼少期の記憶にあるのは、車で走る海岸線と忘れられぬメロディライン。
当時、桑田佳祐が初めてメガホンをとった『稲村ジェーン』という映画が我が家では流行っており、そのサントラがドライブ中にヘビーローテーションで流れていた。

‘‘夢を乗せて走る車道 明日への旅’’

今でもドライブするときにサザンオールスターズを選曲してしまうのは、この曲の影響が大きい。
幼少期に聴いた音楽というのは、魂に刻まれるものなのだろう。

②CHAGE and ASKA『SAY YES』

【ロケ地】東京都台東区浅草

筆者が初めて購入したCDは、CHAGE and ASKAの『SAY YES』だった。
『SAY YES』は武田鉄矢が主演を務めていたドラマ『101回目のプロポーズ』の主題歌で、それに惹かれてこの曲の8cmCDを購入したのだ。

今では知らない子も多いだろうけど、30年近く前までは買ったCDを一度カセットテープにダビングし、ウォークマンに入れて持ち歩いていた。
この曲を聴くとみんなでウォークマンを持ち寄っては「こんな曲知ってるんだぜ」と自慢しあった頃のことを思い出す。

そのCDを購入した店も、今はもうなくなってしまった。けれど、CDショップに行ってはワクワクしながら次に出る新譜をチェックしていた当時のことは、未だに懐かしい記憶として心に残っている。

③B’z『おでかけしましょ』

【ロケ地】東京都台東区山谷

誰から借りたかはもう覚えていないのだが、筆者はアルバム『RUN』でB’zを知り、その二年後に発売された『the 7th Blues』は筆者にロックとの出会いを与えてくれた。

『the 7th Blues』の前まで、B’zはデジタルミュージックの上にギターを乗せたような、いわゆる‘‘売れ線を意識した音楽’’というイメージだった。しかし、このアルバムから生バンドを起用したロックなサウンドが中心となり、筆者はこのサウンドに憧れてギターを始めたのだけど、まさか当時は楽器を専門に扱う職業に就いているとは思いもしなかった。
どんなことが転機になるか分からないのが、人生の醍醐味だ。

④Steve Vai『Bad Horsie』

【ロケ地】秋葉原楽器館(※編注:後に『MUSIC VOX』と店名を変更。秋葉原→新宿へ移転。)

高校時代、偶然訪れた楽器館で流れていたビデオに映っていた、凄まじくトリッキーなギターを掻き鳴らすSteve Vaiの姿に釘付けになった。
全身を銀色で塗りたくったギターから放たれるのは、極めて重たいリフと、メロディアスなタッピングからスライドバーのプレイ、独特なワウペダルの使い方。そして、曲名通りに馬が嘶くようなサウンドを出すピッキングハーモニクスと、ワーミーバーを絡めたプレイに相当な衝撃を受けて、そのビデオにずっと見入っていた。

翌月のバイト代でそのビデオを購入して、VHSが擦り切れるまで観ていた夏の日。
結局全然弾けるようにならなかったが、楽しい思い出である。

⑤Björk『Play Dead』

【ロケ地】雨の新宿

音楽専門チャンネル『MTV』で初めて観たBjörkの圧倒的な歌唱力とMVの完成度に、当時高校生の筆者はすぐさまノックダウン。

‘‘死体を演じていれば痛みも消える’’と歌うBjörkに感銘を受けた雨の日。速攻でCDショップに走り、Björkのアルバム『Debut』を購入し、その日は一日彼女の世界に浸っていた。

その後、『MTV Unplugged』で行われたライブが放映されると知ったときは、原曲のシンセサイザーや打ち込みの音をアコースティックでどう再現するのか気になっていたが、グラスハープやチェンバロで見事に再構築しており、そのシンプルなサウンドがBjörkの力強い歌唱力とマッチして、素晴らしいライブになっていた。

⑥TM NETWORK『Still Love Her(失われた風景)』

【ロケ地】新宿西口 秋から冬へ移り変わる頃

最後に鳴り響く歌は、やはりこの曲だろう。

『Still Love Her(失われた風景)』は言わずと知れた名アニメ『シティハンター』のエンディングテーマだった。当時小学生だった筆者は、主人公の冴羽獠の格好良さと、作者の北条司が描くお洒落な女性キャラクターにハマっており、ビデオに録ってはよく見返していたものだ。

大事な人に想いを伝えられないという、少し大人びた歌詞に子供ながら共感していたのかもしれない。子供の頃はさすがに一人で新宿へは行けなかったので、代わりに妄想ばかりを膨らませていた。新宿という街が自分の中で特別な場所になっているのも、そんな背景があるからだと思う。

銀杏が綺麗な頃に新宿を歩くと、未だに冴羽獠が問題を解決した後、この曲のイントロと共にフェードアウトしていく映像が頭の中に思い浮かぶ。

やはり10代の頃に聴いてきた音楽は心に残っているものだ。
そして、これからもまだまだ色々な局面で彩ってくれることだろう。

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Ot3