私を構成する9枚【寄稿/TT編】

私を構成する9枚【寄稿/TT編】

#私を構成する9枚--その文言通り自身の音楽遍歴を語る上では決して切り離せない音楽作品を9枚選ぶハッシュタグ。musitでは書き手自身を掘り下げるべく個人の音楽的嗜好に迫る企画としてお送りしている。

アーティストからリスナーに音楽が手渡される。その過程で物語が生まれ、同じ作品でも受け手の数だけドラマがある。そういった「音楽は個人史である」という側面を、より読者の皆様に広く共有し楽しんでいただきたいという思いから、本企画の寄稿を募集。今回はその公募分から掲載する。選出した9枚の中から、特に思い入れの強い3枚について語っていただいた。

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The Beatles『1』(2000)

私が初めてビートルズの音にぶん殴られたのは「Help!」と「A Hard Day’s Night」の2曲である。なぜかというと、私が通っていた小学校の中休みの始まりと終わりを告げる校内放送がこの2曲だったのだ。という訳で6年間聴き続けたのだが、これが不思議と一向に飽きなかった。ついには、ちょうどリアルタイムで発売されたこともあり、生まれて初めてCDを購入したのが『1』である。ベスト盤という概念もよく分かっていない頃に、なんとまあ良い曲ばかり収録されているものだと幼心に感心し、聴きまくったのであった。輸入盤は安いというのもこのCDに教えてもらった。音楽ファン人生の師匠のような、血肉のようなアルバムである。

Queen『A Night at the Opera』(1975)

第何次かのブームが訪れ、新たに日本の独自ベスト盤も発売され、当時クイーンの曲をTVなどで聴くことは増えていたので、洋楽特有のハードルの高さなど微塵も感じることなく聴けたのが『A Night at the Opera』である。しかし再生ボタンを押して耳に飛び込んできたのは、多幸感溢れる「I Was Born To Love You」のような曲調ではなく、暗くて攻撃的な「Death on Two Legs」だった。これが逆に中学生のハートを射抜くことになり、以来玩具箱をひっくり返したような本作は通学のお供として長く活躍することになった。フレディ・マーキュリーという稀代の天才シンガーがいながら、ブライアン・メイが歌う曲があるのにも驚いたが、この「’39」が実に優しい名曲なのだ。

キンモクセイ『音楽は素晴らしいものだ』(2002)

小沢健二の存在を知るのはずいぶん後だった。相模原出身、つまり私と同郷のアーティストというのは非常に貴重な存在で、それだけでキンモクセイを応援したくなったものだが、それだけでなくヒットした「二人のアカボシ」は非常に良い曲であった。しかし世間の人々と同じく、私もまた彼らを一発屋としてしばらく記憶の片隅へ追いやってしまっていた。時は流れ大学生の時分、音楽に詳しい後輩から「これ良いですよ」と渡された彼らの1stアルバムがキンモクセイとの再会であり、初めてアルバム単位で聴くと同時に、どうしてこれまでちゃんと聴いてこなかったんだと後悔した。70、80年代邦楽のエッセンスが色濃いが、当時の邦楽がそうであったように所々にまぶした洋楽のフレーバーも感じられる名盤である。

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◯執筆=TT
Twitter:@TT09438383

musit編集部