【フィジカル放浪記 Vol.4】「北関東3県横断3000円ハードオフ」やってみた

【フィジカル放浪記 Vol.4】「北関東3県横断3000円ハードオフ」やってみた

唐突に告白するが、私はハードオフが好きである。

なぜなら特撮フィギュア、釣り具、楽器、オーディオ、そしてレコードなど、好きなものが1ヶ所に揃っているから。

他人のお古ということで敬遠する方もいるだろうけれど、今は発売されていないレアものに出会えることもあるし、中古レコードに関して言えば書き込みされてたり、購入店のレシートが挟まっていたりなど、前所有者の趣味嗜好や生活の一端に触れられる偶然性も新品では味わえない魅力の1つだ(古着ではそういうのは勘弁して欲しいが)。

ハードオフ巡りはフィールドワーク

私の自宅から半径5キロにはハードオフが3店舗もあり、「この店はフィギュアが強い」「ここはレコードがマニアック」「面白いものがあるけど状態が悪いものが多い」など店舗ごとに特色がある。

それによってあくまで想像ではあるけれど、近くにある団地の居住層、土地の成り立ちや繁栄/衰退をイメージさせられるのもプチ文化人類学のようで楽しい。

じゃあ、これを都道府県単位に拡大したらもっと面白いのでは?と考えたのが今回の企画の発端だ。

北関東3県横断3000円ハードオフヴァイナル

私が住んでいる埼玉県東部は利根川を境にして、茨城・栃木・群馬の3県と隣り合わせている。なので3県を短時間で横断すること自体は実はとても容易だったりする。なので少し前にSNSで流行っていた「3000円ブックオフ」を参考に、3県のハードオフをハシゴしてトータル3,000円を目指してレコードを買って、ついでにそれぞれの地域性を発見しようと考えた訳である。

なお、「3000円ブックオフ」及び派生した「3000円〇〇」は、以前musitで對馬さんが書いた記事を参考にしていただきたい。

12月某日、息子2人を連れて決行した。一応妻も誘ったが「全く興味がない」と言われた。そりゃそうか。

《群馬県編》

まずは群馬県大泉町にある「ハードオフ 大泉店」に向かった。

この大泉町は、パナソニックや富士重工業(スバル)の工場がある関係から、ブラジル系の移住者がとても多い土地。ロードサイドにもブラジル料理屋や食材屋を頻繁に目にする。『孤独のグルメ Season2』第4話の舞台と言えば思い出す方もいらっしゃるかもしれない。ここは是非ともブラジリアン・ミュージックのレコードをゲットしたいところだが、果たして──。

店内に入ると、想像通り客層は国際色豊か。気になったのが、12月なのに広々とした女性用水着コーナーがあること。そもそもハードオフの水着コーナー自体が珍しいが、もしかしてサンバカーニバル用だろうか?

レコードコーナーは小さめ。ポップスが少ないうえにビリー・ジョエルが何故か異常に多い。それと横浜銀蝿に永井龍雲。当初の予想通り、ブラジリアン・ミュージックのレコード(というか幅広い意味での中南米音楽)は豊富だった。

何枚かのレコードを手にレジへ向かうと、レジ裏の壁に90年代の円谷プロダクションが手掛けた特撮作品『電光超人グリッドマン』のピクチャー盤サントラを発見! 本来なら買ってしまう所ではあるが、2,000円という絶妙な値付けだったので今回は泣く泣くスルー。これが3,000円ルールの怖いところか。

結局、大泉店では3枚購入、税込330円。

・佐野元春『VISITORS』
・USA For Africa『We Are The World(スペシャル・ロング・バージョン)』
・Los Indios Tabajaras『The Famous Hits of Los Indios Tabajaras』

レコードコーナーは正直パッとしなかったが、エフェクターコーナーは異常なほど在庫が豊富だったので、ギタリスト諸兄は行ってみる価値あり。それと、大泉店では初めてハードオフで値切っている人を見かけた(しかも成功してた)。

《栃木県編》

続いて向かったのは栃木県にある「ハードオフ 佐野店」。佐野ラーメンやアウトレットで有名な佐野市だ。

初めて見て驚いたが、佐野店のレコードのストック量はヤバい! そして陳列は驚くほど綺麗だが、通常のハードオフともレコード屋とも違うちょっと異様な雰囲気。品揃えは歌謡曲やニュー・ミュージックなど和モノ中心。洋楽は極端に少ない。

売り場でレコードを漁っていて気付いたが、おそらくここは中古業者の仕入れの巣窟になっているようで、とても殺伐としている。そうなると当然ながらレア盤も抜かれて焼け野原状態だが、それでも結構面白いものもゲット。そしてここでも横浜銀蝿と永井龍雲が多い謎現象。当時は相当ヒットしたのかな。

佐野店では6枚購入、税込572円。

・冨田勲『惑星』
・冨田勲『火の鳥』
・Yellow Magic Orchestra『増殖』
・佐野元春『No Damage 14のありふれたチャイム達』
・吉川晃司『モニカ』(Single)
・中森明菜『ANNIVERSARY』

今回は「佐野店で佐野元春!」という裏テーマを設定していたので、無事購入できて安堵。やっぱり佐野市に住んでいると佐野元春を聴きたくなるのだろう(ちなみに大泉店で買った『VISITORS』は佐野店で購入できなかった場合の保険だった)。

それはそうと、冨田勲先生の『惑星』のLPもゲットできて非常に嬉しかった反面、周囲のバイヤー達が醸し出す地肉に飢えた捕食者のような空気にヤられ、店を出た頃にはグッタリと疲労困憊。とはいえタイミングが良ければレア盤も引き当てられそうな売り場の雰囲気は感じたので(これを私は<鉱脈の気配>と呼んでいる)、自らもプレデターになれる諸兄は行ってみる価値があるだろう。

《茨城県編》

この企画のラストを飾る店舗は、茨城県南部の古河市にある「ハードオフ 125号古河東店」。

これまでの2店舗と比べると少しコンパクトだが、棚が高いので商品が充実している。レコード売り場も小ぢんまりとしているが、清潔感のある陳列は好感が持てる。そして佐野店のようなサバイバル感はなくて、とてものどかな雰囲気。

品揃えは邦楽、ロック、ジャズ、音響テスト用レコードなど、ハードオフの定番ラインナップ。そしてここでも永井龍雲と横浜銀蝿が多い。これはもはや北関東民のソウル・ミュージックだな。

それにしても、正直ここがラストで良かった。というのも、この「3000円〇〇」は「悩む」行為が重要なのに、実はこれまでの2店舗は価格が安すぎて悩む過程がなかったのだ。ハシゴする順番が逆じゃなくて本当に良かった。

そんな訳で、ここでは4枚購入、税込2,000円。

・『野鳥の歌 vol.1』
・吉川晃司『INNOCENT SKY』
・高中正義『JOLLY JIVE』
・Santana『Caravanserai』

* * *

結果的に3店舗合計して2,902円になった。22円のドーナツ盤や100円のLPを買えば、無理やり3,000円に近づけることもできたけれど、本気でこれ以上買いたいものがなかった訳で。聴くのも大変だし。

ということで、今回購入した中から幾つかピックアップしてレビューしていく。

Los Indios Tabajaras『The Famous Hits of Los Indios Tabajaras』

60〜70年代に人気を博したブラジル人兄弟によるギター・デュオのベスト・アルバム。ライナーノーツによると「ジャングル奥地の出身、探検隊が落としていったギターを拾って弾いてみたら上手かった」という後付けっぽいエピソードで売り出されたらしい。

憂いを帯びた甘い音色のギターの響きを重視したシンプルなアレンジは、エレクトロニカを通過した耳でも充分にフレッシュに感じられるラテン・ラウンジ・ミュージックになっている。

佐野元春『No Damage 14のありふれたチャイム達』

スタイル・カウンシル的なサウンドの「YOUNG BLOOD」しか知らなかったけれど、密かにとても気になる存在だった佐野元春。このアルバムは最も有名であろうシングル「SOMEDAY」も収録された1983年発売のベスト・アルバム。A面を「Boy’s Life Side」、B面を「Girl’s Life Side」と位置付け、収録曲の一部は再録やアレンジ変更を行うなど、ベスト・アルバムながらコンセプト・アルバムのような作りになっている。

「YOUNG BLOOD」こそ収録されていないが、スタイル・カウンシルなど当時のお洒落UKサウンドからの影響も窺える「ガラスのジェネレーション」「Happy Man」を収録。ロカビリーの80’s解釈的な「IT’S ALRIGHT」も面白い。フリッパーズ・ギターがお好きな方も是非。

中森明菜『ANNIVERSARY』

ジャケットの中森さんの可愛さったらヤバくないっすか!? 完全にジャケ買い。“from NEW YORK & NASSAU”とジャケットに書かれているが、収録曲の一部をナッソー(バハマ)のコンパスポイント・スタジオでレコーディングしているらしい(ちなみにニューヨークは撮影のみ)。

言わずもがなだが、中森さんの力強さと儚さが同居するヴォーカルが本当に素晴らしい。そして彼女の魅力を十二分に引き出す、玉置浩二や尾崎亜美、来生たかお、細野晴臣など超一流の作曲陣の起用もエクセレント。捨て曲なしの素晴らしいクオリティだ。特に怪しげなシンセ・ベースが蠢くファンク歌謡「シャット・アウト」は、このキュートな少女が歌っているとは到底思えないやさぐれ感を醸し出していて最高。

Santana『Caravanserai』

むせ返るほどの「愛がメラメラ」なギター・プレイが来るかと思いきや、夜の砂漠を行くキャラバン隊の旅路を連想させる壮大で幻想的な作品。コオロギの鳴き声から始まるオープニングも良い。あ、一応泣きのギターもあります。

マイルス・デイヴィスのアガルタ/パンゲア期、アシュラ・テンペルやクラウス・シュルツェなどのジャーマン・ロックが好きな人におすすめ。野口五郎をイメージしてしまう貴兄も先入観を捨てて聴いてほしい。

高中正義『JOLLY JIVE』

井上陽水作品のギタリストってことで以前から気になってた高中正義。何から聴いて良いものか迷っていたが、ファースト高中は坂本龍一が参加しているこのアルバムをチョイス。とはいえ坂本龍一の参加は1曲だけ。多くの曲で小林泉美(MIMI)がシンセサイザーを担当しているのは私には嬉しい誤算(そういえば以前、DOMMUNEに出演した際に言及していた)。

全体的に夏・南国チックという共通点がある以外は、ちょっと軽薄なフュージョンやディスコ、リゾートテイストのドリーミーなシンセ曲まで曲調は多彩。山下達郎や細野晴臣が参加した名コンピレーション「Pacific」をポップス寄りにした感じといえば良いのかな? 正座して集中して聴くも良し、ラウンジ・ミュージックとしてBGMにするも良し、な作品。

『野鳥の歌 vol.1』

こういったフィールド・レコーディングものとの出会いもハードオフディグの魅力。中古レコード屋ではどこにでも置いてあるジャンルではない。23種類の鳥の声を収録した作品だが、このレコードの良い所は各鳥の声に移る際にナレーションが入ること。鳥の詳しい説明はライナーノーツに記載されているので、女性の声で鳥の名前だけを教えてくれるだけの簡素さが更に良い。

野鳥やセミクジラの声のフィールド・レコーディング系、F1マシンのエグゾーストノートなど、人間の意図が介在しない非楽音の中に脳を揺蕩わせるのはお手軽な現実逃避として私は好きだったりする。

余談

今回の旅でレコードをたくさん買ったが、実はレコードプレーヤーが故障してピッチが安定しないので、レビューした盤はほとんどサブスクで聴きました。

今回の旅ではプレーヤーも良いのがあればと探していたのだが、大泉店ではこんなジャンク品を発見!

いやいやいや、暴走しちゃダメだろ。

仲川ドイツ