『ワンダー 君は太陽』はなぜ人々に愛されるのか?──心温まる人間ドラマの魅力を紐解く

『ワンダー 君は太陽』はなぜ人々に愛されるのか?──心温まる人間ドラマの魅力を紐解く

『ワンダー 君は太陽』は2017年に公開されたアメリカ映画だ。昨年公開された『ディア・エヴァン・ハンセン』(2021)でも監督を務め、過去に名作青春映画『ウォールフラワー』(2013)も手掛けたスティーブン・チョボスキーがR・J・パラシオの小説『ワンダー Wonder』を映画化。興行収入は当初の予想を大きく上回り、批評家からも絶賛の声が多く上がった。

本作は国内の上映作品が日々変動する中でも常に安定した話題性を獲得し、日本の映画ファンからも高評価の声が上がっている。国内映画情報サイト『Filmarks』での評価は2022年11月時点で5点中4.3と高く、鑑賞した所本作には大きく分けて3つの魅力があることに気付いた。本レビューではその魅力を綴っていきたいと思う。

まず魅力の1つとして挙げられるのが、キャスト陣の演技力だ。主人公オギー(オーガスト)を子役であるジェイコブ・トレンブレイ、その母親役イザベルに世界的ヒット作『プリティ・ウーマン』(1990)主演のジュリア・ロバーツ、父親役ネートにはコメディからシリアスまで多彩に表情を使い分けるオーウェン・ウィルソン、姉のヴィア(オリヴィア)をイザベラ・ヴィドヴィッチがそれぞれ演じているほか、オギーの親友・ジャック役に子役のノア・ジューブと、実力派俳優が勢揃いしている。

ジェイコブとジュリアは映画『ルーム』(2015)でも親子役として共演を果たしており、その高い演技力が注目され話題となった。また、家族や学校の教師を演じる大人の俳優たちに負けず劣らず、堂々とした演技を披露するジェイコブやノアには驚かされた。学校でいじめを受け、孤独を感じながらも自らの勇気をもってして本当の友達といえる存在を作り、明るく過ごすジェイコブの悲喜交わる絶妙な演技にぜひ注目していただきたい。

次なる魅力は、先に挙げたキャスト陣が織りなす「主人公のみをフォーカスしない、登場人物それぞれが織り成す人間ドラマ」だ。

本作は主人公であるオギーを中心に物語が展開されていくが、決して彼だけの視点に注力せず、姉のヴィアやその親友ミランダ、オギーの親友であるジャックの視点も盛り込み、物語の厚みを構成している。オギーの周囲にいる登場人物たちは、オギーの存在、あるいは自分自身の立ち位置に対して様々な感情を抱えて生きている。彼らを主軸として描写することで、オギーの知らない彼らの複雑な感情や人間性をも観客は知ることができるのだ。    

 複数の登場人物から見た世界を描くことで、観客はオギー1人だけではなく、多くの登場人物のバックグラウンドを知るため、自然に感情移入ができるようになる。映画を観ることで芽生える感情の種類や、解像度がぐっと増していくのだ。

本作が最も素晴らしいのは、この2つ目に挙げた魅力なのではないかと思う。いじめのシーンを始めとした辛い感情をもたらすシーンばかりを描くのではなく、多角的な視点でオギーとその周りを描いていくことで、一辺倒かつ均整化された作品に留まらず、人間性溢れるドラマチックな仕上がりになっているのではないかと感じる。

本作におけるストーリーは王道に沿い、ラストにかけて感動的な波を生んでいく、という筋をとっている。それ故、観客の中には鮮やかなハッピーエンドに懐疑を抱く人もいるかもしれない。「はたして障害を持つ人々は、この映画のように本当に周りから愛され幸せになれるのだろうか?」と訝ってしまう人もいるだろう。

しかし『ワンダー 君は太陽』が素晴らしいと思える理由は、障害を持つオギーはもちろん、ほかの登場人物に対しても「生きるうえでままならないと感じる関係や苦しみ」を共通して抱かせ、ないがしろにすることなく描いた、という点なのではないだろうか。

家族や周囲の人間がどのように日々を感じて生きているかを描く、その構成ないし脚本が最も特長的であり、称賛するべき部分であると筆者は思う。

3つ目の魅力としては何よりも、この映画は家族で観るのに適した映画である、という点だ。

家族一人ひとりがどのように互いを思いやって毎日を生きるか、生きる上で人と接することが不可欠な状況で「人を想う」ということの素晴らしさを、本作は描いている。 普段、忙しなく日々を過ごしていると忘れがちなことを思い出させてくれる映画としてこれ以上に観るべき映画はないだろう。大人になるにつれ、一番身近にいる家族ともなかなか素直に心の内を打ち明けたり、話したりする機会がなくなってしまう。しかし、だからこそ、本作を観て家族という繋がりの温かさを感じるべきなのではないだろうか。

『ワンダー 君は太陽』は、観終わったあとに自分でも驚くほど「素直な気持ちを取り戻すことができる」映画だ。心苦しい現実が押し寄せる状況の最中でも心の余裕を失ってしまわぬよう、「勇気と優しさを持ち、人を想う」ことの大切さを忘れないよう、大切な人たちとテレビを囲みながら本作を観てもらいたい。

安藤エヌ