森山直太朗の世界観に惹き込まれる

森山直太朗の世界観に惹き込まれる

皆さんは国民的歌手の森山直太朗を知っていますか?
森山直太朗と聞くと「『さくら』が売れた一発屋」と思う人もいるかもしれませんが、決してそんなことはありません。

彼は間違いなく音楽の天才。

誰にも真似できない世界観を持った、唯一無二の存在なのです。
今回は、僕が敬愛するアーティスト・森山直太朗について、その世界観や魅力をたっぷりお伝えしていきます。

森山直太朗をきちんと聴いたことがない人は、この記事を読んでいただき、是非「さくら」以外の曲も聴いてみてください。

森山直太朗とは

 

森山直太朗は、1976年生まれのシンガーソングライター。
父親はミュージシャンのジェームス滝、母親はシンガーソングライターの森山良子という音楽一家に生まれました。
森山直太朗が学生の頃は、あの玉置浩二も自宅に遊びにきて、一緒にお風呂に入るほど仲が良かったのだとか。

プロの音楽家に囲まれて生活を送っていた森山直太朗ですが、小さい頃から音楽の英才教育を受けていたわけではなく、学生時代は音楽よりもサッカーにハマッていたそうです(ちなみにサッカーはプロを目指していたほど打ち込んでいたのだそう)。

その後、大学の頃から音楽を始め、井の頭公園で弾き語りをしながら曲作りを始めました。そして2001年3月に「直太朗」名義でアルバム『直太朗』を発表。
続いて2002年10月にミニアルバム『乾いた唄は魚の餌にちょうどいい』でメジャーデビューしました。

ちなみに『乾いた唄は魚の餌にちょうどいい』には、後にシングルカットされて大ヒットとなる名曲「さくら」が収録されています。ただしこのアルバムに収録されている「さくら」はバンドアレンジで、ピアノアレンジのシングルバーションとは雰囲気が大きく異なります。
気になる方はぜひ両方の音源を聴き比べ、その違いを実感してみてくださいね。

そしてシングルカットされた「さくら」は、2020年4月時点で約120万枚の大ヒットを記録し、歴史に残る名曲となりました(ちなみに同じくシングルカットで大ヒットとなった、SMAPの「世界にひとつだけの花」と発売日が一緒、ということでも界隈では広く知られています。今もなお受け継がれる名曲が同日に発売するということは、もはや奇跡だとすら感じてしまいますよね)。

しかし先ほどもお伝えしましたが、森山直太朗の魅力は決して「さくら」だけではありません。
森山直太朗の楽曲には、それぞれに独特の世界観があります。

こちらも詳しく見ていきましょう。

森山直太朗の楽曲の世界観

森山直太朗の最大の魅力は、独特の世界観ではないでしょうか。

時に芸術的で時にユーモラス。
特に歌詞は「日本語」が持っている力を、ひしひしと感じさせられます。

歌詞に魅力があるのは、間違いなく共同作業者である詩人、作詞家の御徒町凧の力でしょう。
森山直太朗の楽曲のほとんどが、実は御徒町凧との共作なのです。

ここでは森山直太朗の世界観が存分に味わえる楽曲を、その魅力と共に紹介していきます。

「人間の森」

「人間の森」は、2018年8月に発売されたフルアルバムである『822(パニーニ)』の3曲目に収録されている楽曲で、このアルバムでリードトラックとなっている作品です。

「人間の森」の魅力は、詩の内容とそれを表現する壮大な森山直太朗の歌唱力、そしてなんといってもストリングスアレンジでしょう。
壮大なストリングスアレンジによって、曲を聴いただけで、深い緑に囲まれた森をイメージすることができます。また、Bメロやサビでのファルセットは、日本が誇る一級品といっても過言ではないでしょう。

「人間の森」では、人を木に例えて、人間で溢れ返る世の中を森と表現しています。
特に印象的なのがサビの歌詞。

‘‘綺麗なだけの蝶々を追って 迷い込んだ人間の森 月並みな夢に 絆されて
傷つくことを忘れた僕は 名もなき外国の鳥 答えのない世界 折に触れ’’

社会人になると、働けば働くほどお金をたくさん稼げて欲しいものが手に入り、理想の暮らしに近付けると思って毎日を過ごしています。
この欲しかったものや、理想の暮らしが歌詞の中にある‘‘綺麗なだけの蝶々’’であると感じました。

しかし誰が正解で誰が間違いというわけではなく、皆それぞれ異なる道を歩んでいます。

改めてこの歌詞を見た時、大学を卒業して社会人になる人の心情を描いたものではないか、と思いました。
夢だったような大学生活が終わり、これから多くの人と同じようにスーツを来て会社に出勤する…。

僕は一時期この曲を聴きながら会社に出勤していたのですが、たくさんの人で溢れる梅田駅がまさに「人間の森」に見えたのを覚えています。

「生きとし生ける物へ」

「生きとし生ける物へ」は、2004年3月に発売された5枚目のシングルで、生命力や森羅万象をテーマにした歌です。

この曲の凄さは、テーマがとても大きいものであるにも関わらず曲として成立していること。
サビの歌詞は

‘‘生きとし生ける全ての物へ 注ぐ光と影 花は枯れ大地は罅割れる そこに雨は降るのだろう’’

と、まるで人間が誕生する前の本来の雄大な自然が鮮明に思い浮かべるような内容となっています。
なぜサビで歌詞の情景が思い浮かびやすいのかを考えたところ、Aメロの「意味不明さ」に原因があるのではないかと思いました。

‘‘これじゃまるでピエロか占い師 子等の放った御影石”
‘‘かつて猿が手にした玉手箱”
‘‘数の足りない七並べ”

ぱっと聴いただけでは、何を歌っているのか全くわかりません。
そのため聴き手側は情景をなんとかイメージしようと頭が働いている状態でサビの歌詞が入ってくるため、情景をすっと思い浮かべられるのでしょう。

最後は「もはや僕は人間じゃない」という歌詞で締め括られます。
解釈は色々ありますが、僕は「自分は人間じゃなく自然の一部に過ぎない」という意味だと感じました。

「うんこ」

衝撃的なタイトルである「うんこ」は、2010年12月に発売された『レア・トラックス vol.1』に収録されています。

『レア・トラックス vol.1』は、これまでシングルやアルバムに収録しようとしたものの、ボツになった曲で構成されています。
そのため、「うんこ」以外にも「トイレの匂いも変わったね」「どうしてそのシャツ選んだの」など、一風変わったタイトルの楽曲が収録されている点が特徴的でしょう。

で、「うんこ」ですが、なんと曲の時間は1分20秒程度と非常に短い楽曲です。歌詞はなんと42文字。
しかも歌っているのは、楽曲の前半部分のみで、後半は壮大なストレングスアレンジが続いて終了するという、どこまでも変わった楽曲です。

歌詞の内容については個人によって見解が分かれるところです。
僕自身は、言い様のない切なさに包まれました。

出てくるまで自分の体の中におり、共に生きていたはずなのに、出てきたらその醜悪さによって、とことん嫌われる存在…。これが何かの例えなのか、それともその存在を哀れんでストレートに歌ったものなのかは、作った本人にしか分かりません。

ちなみに「うんこ」はキャリアの10年目で制作された楽曲で、本人曰く「『うんこ』も『さくら』も大切な作品の1つです」だそうです。

「生きてることが辛いなら」

「生きてることが辛いなら」は、2008年の8月に発売された16枚目のシングルです。
発表当時‘‘生きてることが辛いならいっそ小さく死ねばいい’’と、歌詞が自殺を助長すると物議を醸しました。

しかし最後まで聴くと分かりますが「死んでも何の解決にもならない、それなら生きていよう」というメッセージが込められています。

「元気を出そう!頑張ろう!」などと励ますのではなく、「死にたい気持ちを抱えて生きても大丈夫だよ」と、優しく伝えてくれる楽曲だと感じました。そのため歌詞を評価する声も多く、第50回日本レコード大賞ではこの楽曲が作詞賞を受賞しました。

「群青」

「群青」は、「人間の森」と同じく2018年の9月に発売されたアルバム『822(パニーニ)』の1曲目です。

シンプルなアコギのイントロから始まるこの歌で、最も特徴的なのは、サビの‘‘Hey siri’’でしょう。
このSiriはご存知の通り、iPhoneの音声アシスタント機能です。

群青に出てくる主人公は、おそらくさまざまなことに疑問や悩みを抱える思春期の学生。
誰に聞けば良いかわからず、Siriなら教えてくれるかもしれない、とSiriに話しかけている姿がサビで表現されています。

‘‘Hey Siri 僕の悩みを聞いてくれよ Hey Siri 誰にも言えないことなんだ
Hey Siri 生まれてきて死ぬだなんて Hey Siri ところで君はどんな気分だい’’

ちなみに群青のイントロは、アコギにカポタストを5フレットに装着し、FM7→Cのコードを弾きます。
この時、どちらのコードも中指を押弦せずに開放弦にすると群青のイントロになるので、是非弾いてみてください。

まとめ

森山直太朗の楽曲を聴くとその世界観にきっとハマッてしまうはずです。
「さくら」はあくまで彼の世界観の1つに過ぎません。

森山直太朗の楽曲は、各音楽サブスクリプションサービスで聴くことができます。
もし「さくら」しか聴いたことがない人は、是非森山直太朗のほかの楽曲も聴いてみてください!

「生きてることが辛いなら」「うんこ」「生きとし生ける物へ」はこちら

「人間の森」「群青」はこちら

 

小林だいさく