なぜ星野源を聴いてしまう?イエロー・ミュージックで日本中が踊り出す

なぜ星野源を聴いてしまう?イエロー・ミュージックで日本中が踊り出す

今回ご紹介するのは、今やミュージシャンだけでなく、俳優や文筆家などマルチな才能を発揮する星野源です!

なぜ彼が現在も日本の音楽シーンで第一線として活躍し、老若男女問わず高い人気を誇る人物となったのでしょうか?
今回は、そんな星野源の魅力に迫っていきたいと思います!

星野源とはどんな人物?

星野源は、2000年にインストゥルメンタル・バンド、SAKEROCKを結成し、2015年の活動終了までギターやマリンバを担当していました。今でこそ歌手というイメージの強い星野源ですが、意外にも最初はギタリストだったのです。

そして、2010年に1stアルバム『ばかのうた』でソロデビュー。
現在では音楽家としての活動に加え、俳優として多くのテレビドラマや映画に出演、また文筆家としても多数のエッセイやコラムを執筆しています。

音楽だけでなく、演技や文章など様々な形で表現する、まさにマルチな才能に富んだアーティストなのです。

星野源が創り出した「イエローミュージック」の魅力

星野源が制作した楽曲はイエローミュージックと呼ばれており、ブラックミュージックでもJ-POPでもない、全く新しい音楽とされています。ですが、星野源のルーツとなる音楽を探ると、マイケル・ジャクソンやアース・ウィンド・アンド・ファイアーなどのブラックミュージックだったそう。

ファンクやソウル、R&Bなどのブラック・ミュージックは、独特のグルーヴ感やビート感、美しいメロディが特徴的。国内でも多くの人々に好まれているジャンルの1つです(もちろん僕も大好きです)。しかしブラック・ミュージックは「日本人には聴き慣れない音楽」であると、なんとなく敬遠している人もいるのではないでしょうか。

さらに、国によって伝わってきた音楽がそれぞれ異なることから、日本人がブラック・ミュージックを演奏しても、どこか真似し切れない部分があります。

そこで星野源は、大好きなブラック・ミュージックをそのまま再現して演奏するのではなく、より日本人に適した音楽に昇華させるべく、「イエロー・ミュージック」という新しいジャンルを独自に創り出し、追求し続けているのです。

星野源が生み出す楽曲の特徴

では星野源の楽曲は、具体的にどのような特徴があるのでしょうか?
星野源が今までに発表したヒット曲とともに、特徴や魅力をご紹介していきたいと思います。

改めて考える「恋」の凄さ

 

「恋」は2016年10月に発売された星野源9枚目のシングル。星野源と聞いて、この曲を連想する人も多いのではないでしょうか。

この曲は、星野源自身も出演したテレビドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』の主題歌でした。エンディングで流れる「恋ダンス」は社会現象となり、自分たちで踊った動画をSNSにアップする人が続出したのも記憶に新しいですよね。

ですが、これまで数々のダンス・ミュージックが発表されたのになぜ「恋」だけがこんなに多くの人を踊らせたのでしょうか?
もちろん、ついついチャレンジしたくなるような振り付けも理由の1つでしょう。しかし僕は、「恋」という曲自体が僕たち日本人の心を底から揺さぶる楽曲、つまり「イエロー・ミュージック」だったからと考えています。

まず「恋」には日本の民謡や童歌、唱歌などに見られるヨナ抜き音階が使われています。ヨナ抜き音階とは、ファとシを除いたドレミソラの5つのみで構成された音階のこと(キーがCメジャーの場合)。
そのため、恋を聴くと小さい頃に日本の歌を聴いた時の記憶が刺激されるのだと思いました。

また、イントロやサビなどで二胡が使われているのもポイント。二胡は日本のお隣の国、中国の伝統的な楽器で、女性の歌声のような艶やかな音色を奏でるのが特徴的です。日本人にはあまり馴染みのない楽器なので、1度聴いたら耳に残る理由の大きな要因は、曲中に二胡を取り入れたことが理由なのではないかと思います。

さらに「恋」のBPMは160と、比較的アップテンポで速い楽曲です。
BPMを160に設定した理由は、星野源が「自分にとってワクワクする曲」をテーマに恋を制作している際、試行錯誤を重ねた結果、BPMを160にしたときが最もワクワクしたためだそうです。

そこにあの振り付けですよ。
それはもう、大人も子どもも皆踊り出したくなるのは当然ですよね(あとガッキーがただただ可愛い…)!

ちなみになぜ曲のタイトルが「恋」なのかというと、「(愛は英語に訳せるけど、)恋は英語に訳せないから」という理由が込められているからだそう。

どこまでもこだわる星野源に脱帽です。

「アイデア」を聴いた時の衝撃

「アイデア」は、2018年8月に配信限定で発売されたシングルです。NHK 連続テレビ小説『半分、青い。』の主題歌だったため、1度は聴いたことがあるという人も多いのではないでしょうか?

「アイデア」は、まさに曲自体がアイデアの塊。
1番では星野源らしいバンド・サウンドが主体のポップ調ですが、2番に入ると一転、打ち込み主体のダンスナンバーに変わります(ちなみに2番終了後のダンスを振り付けたのは三浦大知で、こっそりPVにも登場しています)。

さらにCメロはガットギター(クラシック・ギター)の弾き語り、最後には1番のバンド編成に戻っていつもの星野源らしい締め括りと、最後まで聴く人を飽きさせません。

これまで僕は、アレンジが曲中でコロコロ変わる楽曲を聴いたことがなかったので、初めてこの曲を聴いた時は衝撃が走りました。
音楽についての造詣が深いだけでなく、多種多様な表現方法を身に付けている星野源だからこそ制作できた、唯一無二の楽曲なのだと思います。

「うちで踊ろう」で日本中が踊り出した

「うちで踊ろう」は、新型コロナウイルスの影響による外出自粛を受けて、2020年4月3日に星野源のInstagramへ投稿された楽曲。
楽曲が発表されてすぐにSNSやYoutubeで拡散され、一般の方からアーティストまで多くの人が演奏を重ねたり、カバーをしたりして話題になりました。

また、演奏やカバーだけでなく、踊る人やコーラスを重ねる人、ベースやドラムを足し合わせる人など様々な形で動画が拡散されていきました。中には「豆腐を開けるのに悪戦苦闘する星野源」のようなユーモラスなものもあり、自粛生活で鬱々とした人たちをクスリと笑わせる動画も数多く発信されました。

「うちで踊ろう」のコード進行は、アコギ経験者でも練習し甲斐のある難易度。そのため外出自粛期間中に演奏技術を高めた人も少なくないはず(ちなみに僕はこの曲のおかげで、やっとゴーストノートを覚えました)。

このように「うちで踊ろう」は、ダンスができる人もそうでない人も、自分の持っている能力やアイデアを生かして「それぞれの形で踊ることができる」最高の楽曲であると感じました。

星野源の表現力の凄さ

星野源の楽曲は、全般的に高度な歌唱力や演奏技術が求められます。しかし、星野源はそのハードルを易々と飛び越え、テレビ番組やライブでもCD音源と同じように披露。
それだけ星野源は超一流のセンスを持っており、歌の巧さはさることながら、演奏技術に長けた人物なのです。

また、星野源の歌はキーがそこまで高い訳でもなく、かといって低くもありません。男性がちょうど歌いやすいキーか、少しだけ高め程度だと思います。
星野源の歌声は、しっかりと耳に残る唯一無二の声質であるだけでなく、歌が上手い人に共通しているリズム感やグルーヴ感があります。そのため、思わず踊り出したくなるような「イエロー・ミュージック」の表現者として最適です。
自分が作った音楽の表現者として最適な人物が自分自身とは、最高にかっこいい…!

演奏技術については、冒頭で記述したようにインストゥルメンタル・バンド、SAKEROCKで約15年間ギターを弾いていたこともあり、安定性が抜群です。涼しい顔をして実際にはテクニカルなプレイをしていることも度々見受けられます。

さらに星野源のサポートメンバーも、河村‘‘カースケ’’智康やハマ・オカモト(OKAMOTO’S)、長岡亮介(ペトロールズ,東京事変の元メンバー)など、確かな技術を持つ一流ミュージシャンばかり。
テレビやライブでのパフォーマンスがCDと同じ、またはそれ以上のものに聴こえるのは、星野源自身だけでなく、楽曲を支える強力なメンバーにもよるものなのでしょう。

まとめ

今回記事を執筆するにあたり、僕なりに星野源という人物を分析してみて、いかに星野源が魅力と才能に溢れるアーティストなのかを再認識しました。

日本中の心を鷲掴みにする星野源から今後も目が離せません。

僕自身も「次はどんな楽曲でワクワクさせてくれるのだろうか」と、新曲の発売を心待ちにしています。

小林だいさく