今もなお抱える蒼い孤独を、Souvenir 1stEP『近況報告』が拭うなら

今もなお抱える蒼い孤独を、Souvenir 1stEP『近況報告』が拭うなら

人付き合いが今ほど得意ではなかった10代の頃、私が心の安寧として好んで聴いていたのは、plentyやSack a stew Dry、ゆるふわリムーブ、andymoriなどといった、蒼々とした孤独を歌う音楽だった。まばゆい光のような楽曲よりも多少翳りのある方が、当時悶々とした思春期を過ごしていた自分にとっては、いっとう心地が良かった。

時に陰鬱と評される彼らの描く歌詞を反芻しながら聴いていたのは、自分を救うことにほかならなかった。しかし大人になり、苦しみや痛みの類は余裕がないことを理由に、箪笥に押し込んで隠し通すようになった。次第に明るい音楽を選んで聴くようになったのは、下手に転けてボロを出さない為、と言ってもあながち間違いではない。

そんな風にして平穏を貫き過ごしていた最中、Souvenirの1stEP『近況報告』リリースの報せが届いた。聴き終えたとき、目の前の鏡に映る自分は紛れもなく、得体の知れない孤独心を抱えていた、当時10代の自分だった。

 

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Souvenirは、ポストロック/シューゲイザーバンド・剥製の空でもボーカルを務める杉山悠佑と、ex.alcaの近藤空良からなるオルタナティブ・ロックバンド。先月末に1stEPとなる『近況報告』のリリースを発表し、同時にアーティスト写真、公式Webサイト、そして本作のリードトラック『能く或るうた』のMVも公開した。

(引用:Souvenir公式YouTube channel-Souvenir 「能く或るうた」

『近況報告』に収録されている楽曲は、計5曲。約20分間のEPの中で、杉山と近藤が表現するのは‘‘拭い切れなかった弱さ’’の部分だ。人を愛することや許すことすらも上手にできず、孤独さを拭えないまま大人になった事実を俯瞰して見ることで、自身の内なる影の部分を受容できるようになっていく。

‘‘大人になったって わからないことだらけで
傷跡 噛み跡 一つも残せない’’(『近況報告』)

大人になれば、上手い具合にこの世を渡り歩けるようになるだろうと思っていた。でもその憶測は間違っていた。年の数を増やしたからといって、人間的成長を遂げることにはならない。現に、私は今も人より多く藻掻き、暗中模索の日々を過ごしている。

自分が今、鬱屈さと焦燥感の狭間で唸っていた10代の自分と出会うなら、何も伝えられず俯いてしまうと思う。近況報告をしようものなら呆れられてしまうだろう、と。

だから、大人になった私がSouvenirと出会って、心底安堵し、救われたのだ。
この1stEP『近況報告』が、今の自分と当時の自分が対面するときに仲介役を買って出てくれるような作品である、と感じたから。

 

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アーティストが楽曲の中で生き辛さを描くことは、ただの承認欲求に過ぎないと淘汰されてしまうだろうか。少なくとも私はそうは思わない。幾多の葛藤に悩まされていた頃、共感が人を生かすということを、確かに私は知っていたからだ。

‘‘全部僕が悪いことは わかってるから
また自分を責めては自己嫌悪 そんな日々の繰り返しです’’(『近況報告』)

調子が良いふりをしていても、空振り三振の日々を送っていることがある。社会に出れば、尚更その頻度は上がる。思い通りにならなくとも、それは自分の責任であり、あえて誰かに言わないだけだ。だからこそ彼らの奏でる楽曲が、年を重ねてもなお生き辛さを抱える人々の耳に届くことには、強い意義があると思っている。

また、作詞作曲を手掛ける杉山が描く負の感情は、シンプルかつエッジの効いたギターサウンドと不思議に相性が良い。

‘‘ロークオリティ ハイコスト
来世で取り戻そう 大赤字の人生’’(『不等価交換』)

鬱屈とした胸の内を吐露し、抒情性をもつ歌詞とは裏腹に、比較的キャッチーでポップネスなメロディラインが撫でるように耳へと入り込んでくる。生き辛さを描きながらも、Souvenirが表現しているのは不安や寂寥、その他抱え切れない焦燥感からの解放。所詮最後は生きる選択肢をとらなくてはいけないことは分かっているから、せめて冷めた目で見ていたいのだ。自分が生命として身を置く場所と、嘘や争いが絶え間なく飛び交う、悪夢にも似た日々のことを。

‘‘何でもないよと笑って 悪い夢を すぐに終わらせてよ
ただ 毒を出すだけ ただここにいるだけ’’(『能く或るうた』)

 

杉山と近藤は本作のリリースを皮切りに、新たな舵を切った。二人が手をとったのは、深い毒が蔓延する中でも音楽は絶えず生まれ、人々の側で鳴り続けていることを、自身の音楽経歴から身を以て知ってこその手段であろう。
既に見限っているはずのこの世界で、彼らが奏でる音は他者へのプレゼントではなく、自らを救うべく用意した贈り物だ。けれど、それが同時に長い間‘‘蒼い孤独’’を抱えていた私たちにとっての讃歌ともなってくれるのならば、この先も彼らと同じように、臆せず根を張って生きていたいと思う。

 

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RELEASE

Souvenir 1stEP『近況報告』

※各種サブスクリプションはこちら
https://linkco.re/2esGYXNB

PROFILE

Vocal,guitar:杉山悠佑
Bass:近藤空良


【Official Website】https://souvenir-official.vercel.app/
【Twitter】https://twitter.com/Souvenircb

翳目