【連載】宇多田ヒカル/C.O.S.A./ヒトリエ/Pinegrove ──musit的マンスリーレコメンド【2022年1月】

【連載】宇多田ヒカル/C.O.S.A./ヒトリエ/Pinegrove ──musit的マンスリーレコメンド【2022年1月】

2022年1月にリリースされた新譜の中から、musitのレビュアー陣がおすすめしたい作品をピックアップ。全作品にコメントを付けて紹介する。新譜のディスクガイドとして、是非参考にしていただきたい。

1月のレビュアー

安藤エヌ/翳目/對馬拓/仲川ドイツ/Goseki/イエナガ(colormal)/Fg(butohes)

PAS TASTA『turtle thief』(Single)

Self Released
2022/01/05

2020年以降、インターネットとダイレクトに結び付くカルチャーとしてHyperpopが勃興した。国外ではunderscoresやdltzk、glaiveらが昨年断続的にリリースしたほか、米男女デュオ・100 gecsがアルバム発売に先駆けてシングル「mememe」を発表していたのも記憶に新しい。

昨年リリースされた「all night」の制作メンバー(phritz、ウ山あまね、hirihiri、Kabanagu)に加え、yuigotとquoreeが新たに参加。6名体制の音楽企画として始動したPAS TASTA(チーム名は「all night」の歌詞に2度登場するパスタが由来?)。異なるサウンドメイクを武器に持つ彼らが手を取り合うその光景はPapaya & Friendsを彷彿とさせる。

リレー形式的に担当するパートを振り分けながら、各々が制作の根幹に持つ音色をできる限りシームレスに繋ぎ合わせて作られた本作。hirihiriの極端にヴォーカルのピッチを上げる手法や、ウ山の金属音が主体のメロに乗るキュートな日本語詞、そしてラストはKabanaguによる破壊にも似た音を割って生み出されるノイズ──いや、それはむしろ「再生」と表現するのが適切だろうか。

“​​Look ahead for the brightest future / Talking high from behind the bars”
(明るい未来のために前を向いて 塀の中からハイテンションで語り合う)

シーンへの期待は、本作をもって益々高まるばかりだ。

(翳目)

Official髭男dism『Anarchy』(Single)

IRORI Records
2022/01/07

1月7日に配信オンリーでリリースされた本楽曲。映画『コンフィデンスマンJP』歴代シリーズで主題歌を担当してきた彼らが、1月14日公開『コンフィデンスマンJP 英雄編』で再びデンジャラスな騙し合いの勃発する世界に華を添えた。

今作の最たる魅力は、やはりタイトルが「Anarchy」というだけあって、世間にカウンターパンチをお見舞いするようなスパイシーな味付けが随所に施されている点だろう。タイアップ曲ということもあり、本編とマッチする浮遊感のあるサウンドや、遊び心の効いたエッジーなフレーズも楽曲全体を一層際立たせているように思う。

カウンターパンチ、といえば世に颯爽と登場して久しい、今や「すべての若者における代弁者」として活躍するAdoの存在を彷彿とさせるが、Official髭男dismも負けてはいない。彼らが初期にリリースした楽曲を聴いてみると、浮世を憂い、自分を俯瞰するような尖った作品を発表していたことが窺える。3rdミニ・アルバム『REPORT』に収録されている「55」で、「シリアスながらも軽快」に世を渡っていく彼らの音楽性における根幹を見出したこともあり、「Anarchy」は原点回帰のような印象を抱いたのが率直なところである。Official髭男dismのスマート且つエスプリの効いた楽曲たちの誕生には、こういった世情の陰りをアイロニックに歌い上げる作品が欠かせない存在として裏付けられているのだ。

(安藤エヌ)

岩井郁人『タイムマシン』

FOLKS Inc.
2022/01/12

小袋成彬の『Strides』がリリースされた際、収録曲「Work」の“生きるためには働かなきゃな 君のためにも働かなきゃな ”といったフレーズを「時代錯誤だ」などと糾弾する声が一部で噴出した。分からないでもないが、筆者個人としてはそうした意見に違和感がある。大切な誰かに身を捧げてお金を稼ごうと意気込む気持ちは、(旧来的な価値観の延長ではありつつも)多様化する選択肢の一つとして、決して否定されるべきものではないとも感じるのだ。

岩井郁人の初となるソロ・アルバム『タイムマシン』にも似たようなムードが漂っている。本作のリリックには自身の妻や息子に向けた愛が綴られ、また「ボイスメモ」のような赤裸々な内省も存在する。そして愛する者と暮らしていくため、また日々を力強く生きていくためには、お金を稼ぐことが必要だと語っているのだ。

Galileo Galileiのギタリストとしてメジャー・デビュー時から在籍していた岩井は『PORTAL』のリリース後に離脱、その後はFOLKSのフロントマンとして作詞/作曲を行っていたが、彼の持ち味だった実直な詞は、さらにリアリティを帯びた。ネガティブな描写もあるが、根底にあるのはあくまでその先のポジティブなものへの眼差しだろう。

現在はGGのサポートや映像のディレクションなども手掛ける岩井。旧知の仲間や家族と充実した日々を送っていることが作品からも伝わってくる。紆余曲折を経てようやく辿り着いた現在地への祝福──それは自己満足でもなく押し付けでもない、苦悩の末に「死にたくないな」と強く思う全ての人間に向けられた讃歌である。

(對馬拓)

C.O.S.A.『Cool Kids』

SUMMIT, Inc.
2022/01/12

愛知県はレペゼン知立市のラッパー、C.O.S.A.によるニュー・アルバム。昨年7月に先行配信されたKID FRESINOとの共作「Mikiura」ほか、田我流やJJJ、仙人掌らをフィーチャーした楽曲からなる全13曲を収録。彼自身が制作中に「キャリア最重要アルバム」と発言していた通り、本作からは過去のどの作品とも異なる印象を放つ。恥ずかしげもなく赤裸々に綴られるリリックはいわゆるギャングスタ的ではないが、その無骨さこそが聴き手一人ひとりにそっと寄り添い、手を伸べるような印象を受け、日頃ヒップホップに馴染みのないリスナーにとっても耳馴染み良く聴こえるはずだ。

また、全体を通して意図的に韻を踏むことを避け、ストーリー性や彼自身の心境の吐露を優先し楽曲制作を行っている点も今作の特色ではないだろうか。「5PM」や「Feel Like Summer」で綴られる丁寧な風景描写は、1つのショート・フィルムを観ているようにドラマティックな展開が目を引く。

“2050年 そっちの調子はどうだ? 教科書に載ってるか このコロナ ”

本作最後に収録されている「Mikiura」では、今もなお我々から自由を奪い続ける流行病を起点にしてC.O.S.A.にしか描けないであろうパンチラインを連発。本作は彼のパーソナルな部分を見ると同時に、喜びはおろか今目の前にある悲観さえも自身の楽曲へ迷いなく投影させ、どこまでも真摯に歌い上げる稀有なラッパーであることを強く裏付ける作品となった。

(翳目)

Nicfit『Fuse』

Upset The Rhythm
2022/01/14

スタートから耳をつんざく不穏なギターが心地良い名古屋のパンク・バンド、Nicfitの1st LP。2009年にSIKA SIKAや6eyesなど、当時のポストパンク・シーンを騒がせていたバンドのメンバーにより結成。これまでEPやコンピレーションでのリリースだったので、UKのレーベル《Upset The Rhythm》から出た本作が待望のフルレングスだ。

サウンドはタイトで硬質。金属的でノイジーなギター、ソリッドな音質で跳ね回るベース、ドライで疾走感のあるドラム。そしてぶっきらぼうだがクセになるヴォーカルが最高。

冒頭にも書いた通り、バウハウス初期のようなとにかく不穏、不穏、不穏なサウンドと、DCハードコア経由のスリリングな展開が魅力的だが、M9「Anxiety」のRamonesを想起させるようなポップセンスも抜群。また、例えばM7「Stink」などは「もしD’ERLANGERがUSハードコアをやっていたらこんな感じ?」と考えてしまった。

余談だが、2010年前後の中京エリアはZYMOTICSやNORMALS、JUBILEE(と前身のVERTICAL)など、Nicfit同様にパンク/ハードコアに出自を持つポストパンク・バンドが隆盛を極めていた。その一端は2012年に《Knew Noise Recordings》からリリースされたコンピレーション盤『Ripple』で触れることが出来るので是非そちらも聴いてみてほしい。

(仲川ドイツ)

リーガルリリー『Cとし生けるもの』

Ki/oon Music
2022/01/19

フル・アルバムとしては約2年ぶりとなる、スリーピース・ロック・バンド、リーガルリリーの2ndアルバム。『Cとし生けるもの』というタイトルはベースの海によって付けられたもので、「生きとし生けるもの」と元素記号のC(炭素)を掛け合わせた造語。

ポップスとして聴くと少し歪な構成の楽曲もあるが、それが心地良い。何より、ギターの多彩なフレーズやドライブ感を維持したまま細かく楽曲にフックを加えるドラムの間を繋ぐベースのアプローチは聴き所だ。楽曲のメロディと歌詞に寄り添う形で楽曲が作られているからこそのアレンジ、グルーヴなのだろう。

これまでの作品はたかはしほのかの思想や信条、言語化されていない純粋な思考が物語として結実したものだと感じていたが、本作では現実、事実に基づく要素の占める割合が格段に増えている。本作も「私」と「僕」など、1対1の関係性が軸になる楽曲は見られるものの、M2「セイントアンガー」では三人称の視点で主人公と無関係の人物が登場し、“みんな光りかた探していた ”というフレーズで結ばれる。

また、以前よりピュアさから来る神聖さと残酷さ、死の気配があったが、本作では気配ではなく、客観的な事実としての死を示すフレーズが登場する(M4「教室のドアの向こう」)。ここからは個人的な邪推だが、そのフレーズや、各楽曲に重複して登場する言葉(“中央線 ”“窓 ”など)を軸に全体の歌詞を読み直してみると、少し恐ろしくなった。誰かが生きる傍らに常に在る死により、タイトルのコンセプトがあらわになっているとも言えるかもしれない。

(Fg)

Tomggg『counterpoint』

Good Music Party
2022/01/19

トラックメイカー、Tomgggの約2年半振りとなるフル・アルバム。今作はポップ/ソウル方面を舞台に活躍するSSW・kiki vivi lilyやLA在住のアジア系シンガー・Raychel Jay、台湾の人気デュオ・好樂團 GoodBandの活動でも知られるウェン・スーなど国内外で活躍するアーティストをフィーチャーして制作され、国境やジャンルの垣根を超えたアルバムとなっている。

全曲が一貫してポップに振り切り、前作よりもさらに高揚に満ちた本作。そこには彼が制作期間の中で見出した「リスナーとの距離の最適解」が描かれているように感じるほか、昨年phritzとの共作「Love Ride」をリリースした経験も彼の中では大きな収穫となったはずだ。

夢の中で揺蕩うような「Rent a car」は本作唯一のバラード調ながら、LIL SOFT TENNISによるラップパートが挟み込まれることで楽曲全体に緩急が付与され、リズミカルで飽きの来ない構成が目を引く。また、ラストにはCraftCity名義での活動でも知られるビートメイカー・サ柄直生をリミキサーに迎えた「Licence of Love」を収録。オリジナルとは打って変わり、無機質なサウンドを節々に施し、あらゆる方向から音が向かいながら突き抜けていき、彼らしい清濁を併せ持ったリミックスに仕上がっている。余談だが、毎年桜の舞う時候には『Art Nature』を聴きながら穏やかな面持ちで街を歩く。しかし今年は本作がその役を買ってくれそうだ。

(翳目)

宇多田ヒカル『BADモード』

Epic Records Japan
2022/01/19

「早く新作を出してほしい」と勝手に期待するのは、少なからず無責任な行為だろう。待つ側は気楽なものだ。しかし、そんな心配をよそに宇多田ヒカルはラフな部屋着でふらっと現れた。それに、前作から3年も待った気がしないのだから不思議である。

買ってきたばかりの生卵10個入りパックを丸ごと床にぶちまけ、ぐちゃぐちゃになった床に視線を落として落胆、あまりのショックにその場でフリーズし、ようやく漏れ出た言葉が「最悪、BAD入ったわ」──とまあ、完全にフィクションだが、そんな日常生活の失敗もこのアルバムを聴くと、きっと凄すぎてどうでも良くなる。

『BADモード』。アルファベットとカタカナを組み合わせた、実に日本的な字面だ。宇多田の日本人としてのアイデンティティが少なからず現れているように感じる。それだけではない。『関ジャム』の年間ベスト企画でいしわたり淳治が「PINK BLOOD」を挙げた際も言及されていたが、同曲の独特な譜割は英語が堪能な宇多田としても明らかに英詞の方が乗せやすいはずだ。にも関わらず日本語で歌っているのは、(その技術の高さにも目を見張るが)日本語を母語として操る者の矜持ではないか。

A・G・クックが「One Last Kiss」のベースを入れ忘れたエピソード、フローティング・ポインツが参加した「気分じゃないの(Not In The Mood)」に見られるトリップホップのアプローチ、小袋成彬とのタッグ、ヒップホップ的要素など、語りたい部分は山ほどあるが、字数の制限ゆえに別の機会に。Spotifyの「Liner Voice+」も必聴。

(對馬拓)

ヒトリエ『Amplified Tour 2021 at OSAKA』

Sony Music Associated Records
2022/01/19

スリーピース・バンドとして歩み始めることを「curved edge」(2020)で高らかに鳴らし、わずか1年弱。ヒトリエらしさが何なのか心配していたのは決してリスナー側だけではなかったと思うが、バンドが提示してきたのはシンプルにかっこよく楽器を鳴らすことが正解であるという姿勢だった。アルバムのリリース、そしてツアーを経てそのメッセージはさらに説得力を増して投げかけられており、本音源はバンドの最新型を余すことなく味わえる1作となった。

「tat」や「うつつ」と言った、憂いや気怠さを感じさせる楽曲群はライブの場において音源以上の存在感を放っていたし、過剰なまでにフレーズを詰め込むスタイルは「3分29秒」でまだ進化し続けることを期待させられる。変化し続けること、磨き上げること、相反するようにも思えるバンドの喜びを彼らは両立させている。

バンドにとっての代表曲でもある「カラノワレモノ」や「アンノウン・マザーグース」はこれまでで一番に鮮明に同期音源が収録されており、wowaka氏の異常なまでの作り込みの真髄に改めて触れられることも本音源の嬉しいポイントだ。

メンバー全員がコンポーザーを務めた「REAMP」はこれまでにないバラエティに富んだ作品でこそあったが、ひとたび彼らが鳴らせばそれがヒトリエになってしまうという、シンプルながら実力がなければ辿り着けない境地に彼らが達していることを感じることができる記録となっている。

(イエナガ)

Ado『狂言』

UNIVERSAL MUSIC
2022/01/26

これまでボカロ文化にほとんど触れず、ニコニコ動画を開いたこと自体も数回しかない、そんな人間がこうして筆を執るくらいにはAdoという存在に惹かれている。メジャー・デビュー曲「うっせぇわ」が爆発的にヒットした頃はお世辞にも興味があったとは言い難く、「またボカロ界隈で何か流行ってるのか」と斜に構えて随分と失礼なアティチュードを取っていた。

とはいえ、じゃあ『狂言』が最高のアルバムなのかと聞かれても、手放しに肯定するつもりはない。逆張りだと捉えられても仕方がないし、単に筆者の好みの問題でもある。しかし、だ。最近、自宅でCS放送が観られるようになり、スペースシャワーやMTVをよく付けっぱなしにしているのだが、最新ヒットチャートでもカラオケランキングでも、まあとにかくAdoが毎日流れる。ところがもう勘弁、うんざり、とはならず、むしろ「踊」や「ギラギラ」のイントロが流れるのをどこか楽しみにしている自分がいて、そのことに驚きを隠せなかったのだ。

彼女の歌唱には、不意にぐっと惹き付けられる瞬間が時々存在する。時々、というのがとても重要で、「いや、めっちゃ歌上手いな」から「ここ! この部分めっちゃ好きなんだよな」に移行する瞬間を、何度も味わいたいがために繰り返し聴いてしまうのだ。完全にしてやられた、降参である。

あくまで「歌い手」に徹する姿勢。全14曲52分の長尺。どれも時代と逆行しているようにも思えるが、シンガーとしての技術力と何より溢れるボカロ愛で、Adoは売れるべくして売れたということがよく分かるアルバムだ。

(對馬拓)

蒼山幸子『Highlight』

Sony Music Artists
2022/01/26

ねごとの解散から2年と少し。待望の1stアルバムとなった今作から、改めてバンドという生き物が一枚岩でなかったことを再確認できたのと同時に、蒼山幸子のフロントマンとしての魅力とアレンジ力の高さを感じた。

「PANORAMA」は、歌詞の主題でもある「一瞬の全能感」に寄り添うようなドランク気味のドラムや揺れ動くようなベース、一筋縄では解決しない揺らぎのある楽曲構成──初期のねごとにあった魅力をさらに押し進めた内容になっているのが印象的だ。ねごとでは、こういったパターンの楽曲やアレンジは沙田瑞紀の領域だと勘違いしていたところがあった。

タイトル・トラックにもなっている「ハイライト」では、ダンス・チューン的な軽快さがありながらもメロディラインで彼女自身の個性をまざまざと見せつける記名性の高さに嬉しさが込み上げる。ねごと後期の「サタデーナイト」のようなテンション感のある歌メロは彼女の真骨頂であったことに気付く。バンドの中で得たスタイルは個人のものではなく、遺伝子のように引き継がれているのだ。

ギター・ロックからエレクトロまで縦横無尽に駆け抜けたバンド活動を終え、その奔放さを引き継ぎながらも作曲家としてのスタイルの多彩さを提示する。まさに彼女のハイライト的な1枚となったのではないだろうか。

(イエナガ)

Grimes『Shinigami Eyes』(Single)

Nazgul Recordings
2022/01/26

Grimesが日本語を曲のタイトルにしたところで「もう驚かないぞ!」──と言いたいのだが、「シニガミ・アイズ」となれば話が変わってくる。2021年リリースのシングル「Player Of Games」で《4AD》からコロンビア傘下の《Nazgul Recordings》へと移籍したGrimesだが、新レーベル第二弾となる本作は、あの『デスノート』をコンセプトにしているというのだ。

近年のGrimesのモードにも近い、ダンサブルなクラブ・ミュージックを毒々しさのあるポップネスでまとめ上げたサウンドに乗せて、“Got my shinigami eyes on / Got my shinigami eyes on you”と繰り返し歌い続ける。日本のアニメやゲームから多大な影響を受けているGrimesらしい、と言えばそうなのだが、日本語の「死神」をそのままモチーフとした点においては、どこか不意打ちを食らったような驚きも感じた。

さらに、本作のミュージック・ビデオにはBLACKPINKのJENNIEがゲストとして出演。既に聴覚的にも視覚的にも情報量が多い気もするが、「Shinigami Eyes」は新作EP『Fairies Cum First』に収録され、制作中の2枚組のアルバム『Book 1』への布石にもなるという。寿命を半分にしてまで手に入れた死神の目を、果たしてどう使うのか……?

(對馬拓)

Pinegrove『11:11』

Rough Trade
2022/01/28

アメリカ・ニュージャージー州のインディー・エモ・バンド、Pinegroveの新作アルバム。フォークにも通ずる柔らかなサウンドと乾いたギターの歪んだエッジが入り混じったソフト・ロックと、エヴァン・スティーヴンズ・ホールのゆったりとした気怠げな歌声が、リスナーを心地良くさせてくれる。「Iodine」といった、Owenのようにフォーキーなエモの要素を含んだ楽曲も多数あり、Death Cab For Cutieの旧メンバーであるクリス・ウォラがミックスを担当しているのも嬉しいサプライズとなっている。

また、Pinegroveは映像作品に独特の空気感があるのも魅力的だ。1曲目「Habitat」のミュージック・ビデオは8mmフィルム風の映像とチープな合成が90年代を彷彿とさせる。彼らの映像作品には一貫して、どこか非現実的もなチープさがあるのだ。

この空気感は映像の色味や登場人物の表情、カメラワークなどが独特な映画監督、ウェス・アンダーソンの作品から影響を受けているように思える。今作のMVではないのだが、彼らが2021年に公開した音楽映画『Amperand, NY』(同名のサウンドトラックもリリース)もウェス・アンダーソンからの影響を強く感じる作品なので、そちらも是非観ていただきたい。

(Goseki)

musit編集部