【レコメンド】篠原ともえ『スーパーモデル』(1996)──石野卓球プロデュースで90年代末の雑多性を切り取った1枚

【レコメンド】篠原ともえ『スーパーモデル』(1996)──石野卓球プロデュースで90年代末の雑多性を切り取った1枚

篠原ともえ『スーパーモデル』

レーベル:Ki/oon Sony Records(現:Ki/oon Music)
リリース:1996/10/02

『スーパーモデル』オリジナル盤ジャケット

『スーパーモデル』15th Anniversary Editionジャケット

フワちゃんも「神」と仰ぐ奇抜な原色ファッションで、90年代末に「シノラー」ブームを巻き起こした篠原ともえ。現在も多数の衣装デザインやプロデュース業で活躍、さらには天文学にも造詣が深いことで知られる彼女の原点はアーティスト活動であり、その最初の到達点である1stアルバムが『スーパーモデル』である。

電気グルーヴの石野卓球がプロデュースを手掛け、ピエール瀧や砂原良徳をはじめ、中原昌也、近田春夫、濱田マリなど錚々たる面子が参加し楽曲提供した本作は、とにかく全編に渡り笑ってしまうくらい石野印のテクノ・サウンドなのだが、そこへ篠原のエキセントリックなキャラクターが加わることで狂騒と混沌が渦巻く仕上がりとなっており、耳が忙しい。

M1「クルクル ミラクル」で溌剌とした調子で“イェーイ ねえ みんな しのはらのこと 好き?”などと確認してきたかと思えば、M3「レインボー・ララ・ルー」の冒頭でいきなりダブを取り入れ(この時点でSAKA-SAMAの寿々木ここねのソロ・アルバム『FEVER』とも共通する雑多な志向が嗅ぎ取れる)、M5「チャタレイ夫人にあこがれて」では別人のように落ち着いたトーンで“整形外科のベッドの上で あの夜のことを思い出すの”とスペーシーなトラックに乗せて神秘的に歌い上げる。アルバムの前半だけでもこの振り幅だが、後半以降もことあるごとに“好きになった?”と執拗に確認し(挙句本人も“くどいようだけど”と前置きする)、M9「メルヘン節」やM10「よのさ」辺りでは比較的落ち着きつつ、デビュー・シングルでもあるM11「チャイム」でフィナーレへ向かう(※)。テンションの高低差が極端でちょうど良い部分がなかなかやってこない。

しかし、傍若無人と呼ぶに相応しいそのスタンスがジェットコースターのようにリスナーを振り回し、そこへ背中を預ける快感はなかなかのものだ。当時高校生だった篠原のカリスマ性を見事引き出し開花させた石野の手腕にも唸ってしまう(篠原はその後セルフ・プロデュースで作品をリリースしていく)。90年代のほとんどを小学校入学前に過ごした筆者にとって、当時の世間の空気などほとんど記憶にないため(というより一切正確に観測できていない)、90年代特有の雑多性をキャプチャーした本作は「ないノスタルジー」を呼び起こしてくれる存在でもあり、貴重な1枚である。

※:現在ストリーミングで配信されているのは、本作のリリース15周年を記念した再発盤。M13〜M15はボーナストラックとなっている。

對馬拓