【レコメンド】寿々木ここね『FEVER』(2020)──自身のルーツとも接続するバラエティに富んだ6曲

【レコメンド】寿々木ここね『FEVER』(2020)──自身のルーツとも接続するバラエティに富んだ6曲

寿々木ここね『FEVER』

レーベル:TRASH-UP!!
リリース:2020/08/19

「Lo-Fiドリームポップアイドル」を標榜するSAKA-SAMAのリーダー、寿々木(すずき)ここねの1stソロ・アルバム『FEVER』。全6曲/約22分と一見して小品集にも思えるが、ジャンルに囚われず多彩な楽曲を発表してきたSAKA-SAMAの系譜を受け継ぎつつ、寿々木自身のルーツとも接続する濃密な作品となっている。

アルバムはラヴァーズ・ロック「FEVER」で幕を開けるが、この時点で既にSAKA-SAMAとは異なり、寿々木が幼少の頃から親しんだレゲエの流れを汲むような印象を受ける。手掛けたのはポップス・バンド、bjons(2021年12月解散)の今泉雄貴で、SAKA-SAMAの最新シングル「E.S.P.」や、過去には「デジタルリレーション」なども提供している。

続く松尾翔平(ex.Super Ganbari Goal Keepers)による疾走ギター・ロック「彗星まち」や、Daisuke Adachi(EMERALD FOUR)が描く総天然色ドリームポップ「アクア・タイム」は、SAKA-SAMAでの表現の延長と言えそうだが一転、本人が大ファンを公言するボ・ガンボスの「魚ごっこ」のガレージ・ロック風カバー、さらにはアンビエント・ダブ「ライティ・ライト」へ。自身のルーツをキュートなヴォーカルで見事に昇華してみせる。

この「心地良い違和」とでも呼ぶべき感触──決して初めてではない。篠原ともえ『スーパーモデル』だ。ダブを取り入れた篠原の「レインボー・ララ・ルー」を聴いた瞬間、志向する音楽性とアーティストのキャラクター性の絶妙な掛け合わせ具合が、どこか両者とも近しいように感じたのだった。

終幕は佐々木喫茶(レコライド)が手掛け、初期Perfumeを想起させる直球アイドル・ポップ「スイート・セレブレーション!」。単にソロ・アイドルという枠に収まらず、あくまで自然体でありながら、いちアーティストとしての表現の幅広さを見せる怒涛の6曲と言えるだろう。

SAKA-SAMAは2019年に寿々木以外のメンバーが全員卒業したが(※)、本作はそうした状況を踏まえ、自身を見つめ直すといった意味合いがあったかもしれない。また、アルバムに冠した『FEVER』というタイトルも、疫禍において負のイメージを強めたきらいのある「熱」という言葉をポジティブに捉えようとする──といった気概すら感じるのは、少し考えすぎだろうか。

※:寿々木以外のメンバーが卒業した後は、ATOMIC MINISTRYの朝倉みずほをサポート・メンバーに迎えて活動している。なお、新メンバーは募集中とのこと(執筆当時)。ちなみに「Lo-Fiドリームポップアイドル」を掲げてはいるものの、基本的には「コンセプトを作らない」ことをコンセプトとしている。

對馬拓