【レコメンド】Fábio Caramuru『EcoMúsica | Aves』(2018)──野鳥たちの囀りと日本への憧憬が込められたピアノ・アンビエント

【レコメンド】Fábio Caramuru『EcoMúsica | Aves』(2018)──野鳥たちの囀りと日本への憧憬が込められたピアノ・アンビエント

Fábio Caramuru『EcoMúsica | Aves』

レーベル:FLAU
リリース:2018年5月18日

朝靄烟る森から聴こえてくる鳥たちの囀りと音楽家からのラブソング。ブラジル・サンパウロ出身のピアニスト、Fábio Caramuru(ファビオ・カラムル)が日本の野鳥の声を聴きながら制作したピアノ・アンビエント作品である。

何故今、2018年にリリースされた本作を取り上げるかというと、某CDショップに本作が再入荷した旨をInstagramで見かけたこと。「そういえば…」と、呑み友達の安曇さんが本作リリースに携わっていたことを思い出して、リリース当時の話をDMで改めて聞いてみた、という個人的な事由がきっかけである。

本作リリースの約2年前、アマゾンに生息する絶滅の危機に瀕した(もしくは絶滅した)野鳥を中心としたブラジルの野生動物の声のアーカイブを使って、本作とほぼ同様の手法で制作された『EcoMúsica ブラジルの動物達とピアノの対話』がリリースされた。その作品を携えたジャパン・ツアーとして日本各地を巡る中で着想を得たのが本作とのことである。帰国後、FLAUスタッフが間を取り持ち、NPO法人バードリサーチが所有する、日本国内に生息している20種もの野鳥の声のアーカイブを使用することで本作が完成した。

Fábio Caramuruは同国ではAntonio Carlos Jobim(アントニオ・カルロス・ジョビン)の研究家としても知られているそうだが、レーベルサイトに記載されている彼の言葉「この作品は、“ブラジル的”作品では全くない。普遍的なものであると思う。」の通り、本作ではボサノヴァ的なアプローチは殆ど使われていない。ただ、ジョビンは鳥や森などの自然環境に影響を受けて表現した作品を残しており、そうしたジョビンの精神性を引き継いだ作品とも言えるだろう。

ピアノ・アンビエント、ポスト・クラシカル、野鳥のアーカイブ。そう書くと難しく考えて身構える人もいるかもしれないが、本作はまるでポップ・ソングのような生命感に満ち溢れていて、M10「Hototogisu」では童謡のようにピアノとホトトギスが優しく合唱しているし、M15「Hashibosogarasu」は街中でお馴染みのハシボソガラスとピアノが明け方のレクイエムを奏でている。

遠い南半球の音楽家が届けてくれた、日本の野鳥たちとの共演。そして野鳥たちの囀りの先にある日本のカントリーサイドへの憧憬。いつかまたこの国にピアノを弾きに来てくれることを待ちながら聴き続けたいと思う。

仲川ドイツ