【レコメンド】すなお『roman』(2022)──淡い記憶を掘り起こし、心を10代に巻き戻す楽曲たち

【レコメンド】すなお『roman』(2022)──淡い記憶を掘り起こし、心を10代に巻き戻す楽曲たち

すなお『roman』

レーベル:FRIENDSHIP.
リリース:2022/04/27

関東を中心に活動する3ピース・バンド、すなおが待望の1stミニ・アルバム『roman』をリリース。優しくもどこか寂しげな大畑カズキの圧倒的な歌唱力と、思い出を呼び起こすような歌詞が、聴く人の心を10代に巻き戻す。

2020年、大畑カズキ(Vo. Gt.)と髙橋雄也(Dr.)により結成。組んだ理由について、「お互い海のある町で育ち、感性が似ていた」と語る。そのためか、海や水を主軸においた楽曲が多いように思える。

2022年には、初ライブからサポートベースを担当していたアミを正式メンバーに迎える。アミが所属するMr.Seasideで大畑がサポートとして参加していた経緯があり加入に至った。活動初期からメンバーのような存在感があったアミだが、正式に加入してからは結束がさらに深まり、バンドとしての完成度が一気に上がった。

レコーディングはクリックを使用せずに一発録りしたという。本来はクリックでテンポを確認しながらドラム→ベース→ギターと順番に重ねていく手法が主流だが、あえて一発録りをすることで、 3人ならではのグルーヴを生み出している。「ひかり」などは分かりやすくテンポフリーな場面が多いが、演奏がしっかりと合うことでむしろヴォーカルを際立たせている。ひとえに3人の結束力の高さゆえだろう。

ライブでは、さらに3人のグルーヴ感が際立つ。音源では伝えきれないパワフルなドラミングとうねるベース・ラインに大畑の歌が乗り、それをギターが包み込む。伸びやかでしなやかな歌声はライブでこそ真価を発揮する。リズムフリーな歌に対しても全くぶれることなく息を合わせ、完璧なグルーヴを生み出す様を目の当たりにし、彼らがライブ・バンドだと気付いた。

また、すなおの楽曲は自然体で、日常に寄り添ったものが多い。聴く人が自分の姿を投影できる歌詞はどこか素朴で、スピッツやandymoriを彷彿とさせる。「なんだっけ」の“熱を出して学校を休んだ 昼下がりにお母さんと観たサングラスのおじさん”という歌詞や、「スイミングスクール」の“夜に冷蔵庫覗くような淡い期待抱いて”など、誰もが経験した少年少女時代の淡い記憶を掘り起こす。

初めて『roman』を聴いた時、自分のことを歌われているのでは、と錯覚した。電車の中で、夕方の川辺を歩きながら、晴れた日に自転車に乗りながら、様々な景色を彩るすなおの楽曲は、今日も私を暖かい気持ちにしてくれる。

Goseki