【レコメンド】藤井風『LOVE ALL SERVE ALL』(2022)──人を救う若き菩薩が遊び心をスパイスに創り出した、「愛」についてのアルバム

【レコメンド】藤井風『LOVE ALL SERVE ALL』(2022)──人を救う若き菩薩が遊び心をスパイスに創り出した、「愛」についてのアルバム

今一番会いたい才気迸るアーティスト、藤井風の2ndアルバム『LOVE ALL SEAVE ALL』はまごうことなき名盤だ。「無駄な曲は1曲も作りたくない」と言う彼が有言実行の名のもと、肥沃な精神性とそこから生み出される楽曲性を余すところなく表現したアルバム。これはまさに彼の心の中を覗く深窓としてのプロダクトであるし、またリスナーは彼の海よりも広い懐に抱かれ、呆気なく世を生きる苦悩から救われることだろう。

「第2のデビュー曲、とでも言ってもいいくらい今の自分にとって大切なお祝いソング」と語るリードシングルの「まつり」(M2)は、祝い事に心躍らせる日本人の精神を歌った、ジャポニズムの精神に溢れた1曲。毎日が誰かの「まつり」であり、ハレの日であり、そこに煩わしい感情は介在しない──。〈あなたの心の中咲かせな〉とのびやかに歌う藤井風の姿から、改めて彼の中に吹く悠久の神風を感じることができる。何にも囚われることなく自由に生きる人生に導く、船頭人としての藤井風。悩める人々を衒いのないクリエイティブで救う、希代の手腕を実感することのできる楽曲となっている。

ボタニカルな命の息吹、そして彼自身の死生観が窺えるM6「ガーデン」やポエトリーな精神世界が際立つM9「それでは、」と、アルバム全体において菩薩のような風貌を覗かせている藤井風だが、遊び心に富んだパーティーチューンM7「damn」では、一転して人間じみた側面を見せる。

思わず縦揺れしてしまうような浮ついたメロディに乗せて歌われるのは「『誰か』に執着する『俺』」。これまで楽曲に通底させてきた「愛や人間に執着しない」という思考から、実に人間らしく、酩酊しながら人生のままならなさをぼやいているかのような1曲に仕上がっている。

もちろんこれは意図的であり、彼なりにアルバムにおけるスパイス的な役割を持たせた故のクリエイトなのだと推測する。清廉潔白、無味無臭の「風」だけでなく、地に足をつけ時に情けなく酒を煽り、煩雑に人々と交流したのちに後悔の辛酸を舐めることになる経験も、人間を人間たらしめ成長させるものである、ということを彼は知り得ているのだ。

〈全て流すつもりだったのにどうした? 何もかも捨ててくと決めてどうした?
明日なんか来ると思わずにどうした?〉

ここで歌われているのは悟りきれずに日々を過ごす私たちである、という安堵が、藤井風とリスナーの距離をより近くしていく。

「全てを愛し、いつも救ける」──時代の寵児によりこの世に産み落とされた2つのアルバムに冠されたタイトルは、座右の銘や願いなどではなく、藤井風という人間が成し遂げている偉業そのものを意味した言葉なのかもしれない。

藤井風『LOVE ALL SERVE ALL』

レーベル:ユニバーサルミュージック
リリース:2022年3月23日

トラックリスト:
1. きらり
2. まつり
3. へでもねーよ (LASA edit)
4. やば。
5. 燃えよ
6. ガーデン
7. damn
8. ロンリーラプソディ
9. それでは、
10. “青春病”
11. 旅路

配信リンク:https://fujii-kaze.lnk.to/LASA

安藤エヌ