【レコメンド】w.o.d.「バニラ・スカイ」(2022)──失ってしまった魂を取り戻すための最高にロックなアンセム

【レコメンド】w.o.d.「バニラ・スカイ」(2022)──失ってしまった魂を取り戻すための最高にロックなアンセム

3rdアルバム『LIFE IS TOO LONG』に見られた、全体を覆う不穏なざらつきはない。M3「楽園」のように‘‘楽園なんて存在しない’’とは歌わない。ここ数年の時代を顧みれば、そんなことは皆が分かっている。だったら背伸びをしよう。空に必死に手を伸ばす。ぎゅっと手を握る。たとえ何も掴めなくても、同じことをしているあなたを見つけて‘‘あなたがいたから 私がいるから’’と分かるだけで嬉しい。そう、私たちはここにいる。それだけでいい。彼ら世代のリアルな諧謔もそこにはない。自虐もない。ただ笑いたいと願う。こわばっていてもいい。微笑みながら唇をぎゅっと噛んで、前を見据える。 

そしてw.o.d.は、4月13日にリリースしたニュー・シングル「バニラ・スカイ」で思いの丈をぶっきらぼうに吐露する。‘‘終わる夢を見ていた 壊れて気づいた’’。今の時代、失い続けるばかりだから、失うことにはもう慣れてしまった。けれど、だからこそ理解できることがあったと歌う。正直に誠実に。だって、どんなに悲惨な状況だろうと人間の魂が滅びない永遠の秘蹟があるはずだから。

朝起きて、歯を磨いてパンを齧り、彼らの曲をオートリピートしながらドアを開けて走り出す。青空はあなたのいる街をどこまでも覆っている。走らなくちゃどこにも辿り着かない。一聴して感じる爽快感は、心の焦燥を消し去ってくれる。くだらない気分を蹴散らし、自分が無敵だと教えてくれる。あとはそれをロールさせ続けるだけだ。そうだ。素晴らしいロック・アンセムはいつだってそうじゃないか。走り続けるからこそ辿り着ける場所がある。だから彼らは「一緒に走っていこう」と叫ぶんだ。

サイトウタクヤ(Vo. Gt.)の声が優しくて無骨で鋭利でクール。そんなカオティックな声が感情を滾らせてくれる。思わず叫び出したくなる。とにかくシンプルな音が耳に残る。イントロの煌めくギターのフレーズ、Ken Mackay(Ba.)の温かみのあるベース、中島元良(Dr.)の柔らかいドラミング。ギター・リフの隙間から朗らかな表情が溢れてくる。彼らはこれまで苛立ちの中に色気を、不条理の中に快楽を求めていた気がするけれど、この曲は人生の不安定さの中に隠れた、ほのかな光に焦点を当てている。w.o.d.がこれまで奏でていたような後悔はあるかもしれないけれど、もどかしさはない。ヒロイックだけれどセンチメンタルではない。

彼らはこれからも走り続けていく。たとえどんなことがあろうとも。「バニラ・スカイ」はw.o.d.の新しい決意表明だ。ひたすら朝から夜まで、走り続けた先に希望を見つけられると彼らは信じている。だからこそこの曲は、そうしていつか辿り着いた先で、ランボーの詩『やさしい姉妹』にある「おゝ汝、悪意なき夜よ。」というべき、誰も目にしたことのない新鮮な景色を我々に見せてくれる。

w.o.d.「バニラ・スカイ」

レーベル:MIMINARI Records
リリース:2022年4月13日

トラックリスト:
1. バニラ・スカイ

配信リンク:https://orcd.co/vanillasky

竹下 力