【レコメンド】TAMIW『Floating Girls』(2022)──己の出自を包み隠さず歌う決意

【レコメンド】TAMIW『Floating Girls』(2022)──己の出自を包み隠さず歌う決意

先頃発売されたTAMIWの1st EP『Floating Girls』は、「今、この時」に鳴らされる音と声が詰まったエモーショナルな素晴らしい作品だ。他者に隠しておきたい心情を白日の元に晒し、その言葉の持つ儚さと脆さに向き合いながら、tami(Vo.)の声は緻密でクールな音に埋没することなく、過去作よりも力強さを増している。TAMIWは不穏な現代をサバイブしていく戦士である。その佇まいがカッコいい。

PortisheadやMassive Attackといったトリップ・ホップに影響を受け、James BlakeやFKA twigsといった、90年代〜2010年代に連なる音楽的歴史をリファレンスし、彼ら特有の透き通った音に合わせてtamiの柔さと力強さを持つ歌声が響くと、この寂寞とした世界の中で生きていくことを肯定されているような凜とした気分になる。特にこのEPではそれが顕著だ。今作をオートリピートするだけで、生きる活力が漲る。

2ndアルバム『future exercise』(2020)に続いて、tamiの実家を改修したスタジオ「Hidden Place」でレコーディングが行われた今作は、先のアルバムを特徴づけた生音を活かしつつも、よりエレクトロニックな音の比率が増し、どの楽器の一音一音にも「この時代に鳴る」必然性がある。さらにAnderson .PaakやRobert Glasperらとの関わりも深いプロデューサー/ラッパーのShafiq Husayn(シャフィック・フセイン)がゲストに参加していることにも注目したい。

その彼が参加した「HAFU」(M3)では、韓国にルーツを持ち、日本で生まれたtamiにとっての出自を正直に吐露する真摯な曲であり、Shafiq Husaynがクールネスを提供するまさにトリップ・ホップ的なナンバー。「昔の友達に『私のお母さんにあなたと遊ぶなと言われた』」という告白は、痛々しさを感じさせるけれど、「だけどあなたと同じようにこの街に生まれた」と返歌し、どんな人だろうと一緒に生きる価値があると歌う。

この曲以外にもジェンダー・バイアスといった昨今の問題に向き合い、「白黒をつけることができない多様性の許容」というテーゼを扱う彼らからは、「現代」の多くの矛盾を孕む世界と向き合おうとする決意を感じる。「PurePsychoGirl」(M4)では荘厳なシンセに絡む多様なビートに乗せて「私たちは本当の彼女を知らない」という歌詞と共に、人間を断罪できる人間など誰もいないというTAMIWなりのメッセージが貫かれている。そう、誰にも誰かの心と体の有り様を決めつけることはできないのだ。 

それでも今作からは、どんな言葉だろうと発せられた瞬間他者対して必然的に抱える「暴力」に気づきながらも、歌うことへの誘惑を捨てきれないTAMIWの「人間らしさ=業」を感じる。彼らは歌の持つ残酷さに傷つき、言葉を捨てて緻密な音に逃げ込み、さらに音を研ぎ澄まそうとする。けれど、音の中にエモーションを発見し、それを言葉にしなければならない想いに駆られ歌を歌ってしまう。そんな人間が持っている本質的な生々しい衝動を臆することなく力強く表現できるようになった。彼らは作品ごとに進化を遂げる稀有なアーティストであり、2022年を代表するメッセンジャーにもなっている。

TAMIW『Floating Girls』

レーベル:Bigfish Sounds
リリース:2022年2月25日

トラックリスト:
1.Lights
2.F_A_T_H_E_R
3.HAFU
4.PurePsychoGirl
5.7 – 5 =
6.The hardest thing I’ve ever done.

配信リンク:https://ssm.lnk.to/FloatingGirls

竹下 力