【レコメンド】downt『SAKANA e.p.』(2022)──自らのサウンドを模索/追求する姿勢が貫かれた躍動のEP

【レコメンド】downt『SAKANA e.p.』(2022)──自らのサウンドを模索/追求する姿勢が貫かれた躍動のEP

“あの屋上には僕が行くからさ あの屋上でまた話せたらいいな”(「111511」)──無垢な幼さが感じられる一方で、過ぎ去った青春を憂うような雰囲気も醸すヴォーカルの求心力。そうした「歌もの」を志向しながら、裏方的に刻まれるベースとドライブするドラムの包容力。スリーピースのギター/ヴォーカルらしからぬ、単純なコード弾きに甘んじないリフを弾きまくるギターのエモーション。インタールード的に挟まる過剰なほどセンチメンタルなインスト。結成からたった半年、2021年10月にリリースされた1stアルバム『downt』を初めて聴いた時、とんでもないと思った。やばい、よく分からないけれどやばい。音楽はよく分からないけれどやばい時が一番やばい。初音源らしからぬ完成度とハイペースのライブで、downtは国内インディー・シーンにおいて重要な存在となっていった。

そんな3人組の次なる一手は6曲入りのEP。まず「シー・ユー・アゲイン」では、スローダウンしたBPMと同じリフを延々と繰り返すギターの効果によって、富樫(Vo. Gt.)が紡ぐヴォーカル・メロディが際立ち、downtにとって「歌」の重要度が高いことが改めて示される(なお終盤は軽快に弾き倒されるギターと共に加速していく)。一方、転がるように疾走する「minamisenju」や、グランジ/シューゲイズの香りを漂わせる「Fis tel」など、ロック・バンドとしての躍動も止まらない。そして、相変わらずセンチメンタルなインスト・ナンバーに胸がギュッとなる(個人的には「-.5.-」でアジカンの「ソラニン」を想起した)。仮のものをそのまま採用したような曲タイトルも、バンドの飄々とした雰囲気によく似合っている。

EP全体を俯瞰すると、サウンドやアレンジがより削ぎ落とされた印象がある。前作で得た(想定外の)リアクションの大きさに良い意味で囚われることなく、あくまで自分たちのサウンドを模索/追求していこうとする姿勢が本作では貫かれているのだろう。一方で、唐突に具体的な「I couldn’t have done this without you.」というタイトルが端的に象徴する、短期間ながらも大きな飛躍を遂げたdowntの現在地と未来への眼差し、そして周囲への感謝の意も(富樫の「ひとりじゃなにもできなかった」というツイートにしたってそうだ)、本作の持つ重要な意味なのではないだろうか。未だバンドは過渡期、いよいよ水を得た魚のようにシーンを泳ぎ回る姿をじっくり追っていきたい。

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downt – SAKANA e.p.

レーベル:ungulates
リリース:2022年6月22日

トラックリスト:
1. -.1.-
2. シー・ユー・アゲイン
3. minamisenju
4. Fis tel
5. -.5.-
6. I couldn’t have done this without you.

配信リンク:https://lnk.to/downt_SAKANA

對馬拓