【レコメンド】ヨルシカ「ブレーメン」(2022)──分断と混沌の世を渡る、グルーヴィーでチルな音楽

【レコメンド】ヨルシカ「ブレーメン」(2022)──分断と混沌の世を渡る、グルーヴィーでチルな音楽

「又三郎」「老人と海」「月に吠える」と続いてきたヨルシカの文学オマージュ。7月4日、新たにリリースされたシングル「ブレーメン」は、グリム童話『ブレーメンの音楽隊』をモチーフにした楽曲だ。

これまでにも名だたる文学作品たちを「ヨルシカ流」にアレンジしてきたsuis(Vo.)n-buna(Gt./Composer)の2人だが、今回も動物たちが奏でる音楽を現代に呼応したグルーヴィーなサウンドとして生まれ変わらせている。

〈愛の歌を歌ってんのさ あっはっはっは〉

「愛」というテーマで音楽を創造すると、どうしてもシリアスなトーン、あるいは愛の下で輪をつくる人間賛歌のような世界観に向かう傾向があるが、ヨルシカの歌はそうではない。あっけらかんとしていて、楽観的で、笑い飛ばすことによって生まれるライトな余地を包含させているのだ。

しかし考えてみれば、我々現代人はこうした姿勢を忘れがちなのかもしれない。忙殺される毎日、厳しい世界情勢。様々なものに摩耗されながら生きる人間にとって、『ブレーメンの音楽隊』という物語が差し出してみせたハッピーエンドと、そこから紡がれたヨルシカの音楽は心に残るものがあるのではないだろうか。

彼らの楽曲において代名詞ともいえる浮遊感をもったサウンド、そして軽やかなビートと口ずさむようなsuisの歌声は限りなくヘルシーでウェイトを落とした音楽なのだが、それでも確かに現代人の胸に刺さる一撃がある。

〈明日は何しようか 暇なら笑い合おうぜ〉

そんな歌詞に、はっとする。忘れかけていた大切なものが、そこにはある。紛争が起こり、政治が変革か停滞かの転換点を迎えようとし、日々めまぐるしくニューウェイヴが生まれようとしている今。首脳陣の会合や演説で訴えられるような「皆が幸せに生きられるためにどうすればいいか」という問いに対して、少しだけ酔ったようなチルなスタイルで、しかしそれでもしっかりと答えを差し出してきてくれる、「ブレーメン」のような楽曲が必要なのかもしれない。

私たちも、1人漏らさずきちんとハッピーエンドを迎えなければならない。

そのためにまずやるべきは、彼らの楽曲に耳を傾け、身体を揺らして隣人と語り合うことではないだろうか。

ヨルシカ「ブレーメン」

レーベル:UNIVERSAL J
リリース:2022年7月4日

トラックリスト:
1.ブレーメン

配信URL:https://yorushika.lnk.to/Bremen

安藤エヌ