【レコメンド】國『MOMENTUM』(2022)──軽やかさの中にある緻密性とテクニカルな志向の片鱗

【レコメンド】國『MOMENTUM』(2022)──軽やかさの中にある緻密性とテクニカルな志向の片鱗

無骨なバンドなのかと思っていた。國というバンド名もとい存在をしっかり認識したのは、6月5日に下北沢ERAで開催されたぺんぎんの憂鬱の企画が最初だった。およそバンド名とは思えない漢字一文字を冠し、それだけでも謎めいているが、「國」という字面から連想されるイメージは「国」よりも硬派で、俗っぽい感想だが戦国時代や戦国武将といった勇ましい印象があった。

ライブ当日、特に出演バンドの予習もせずに赴いたため、そもそもヴォーカルが女性だったという新事実に直面し幾らか面食らった。華奢なようで力強く、伸びやかで芯のある歌声。しかし、まだその時点ではバンド名とのギャップを感じていたが、演奏を観るにつれて印象が変化した。ドメスティックな文脈のロックを色濃く継承したサウンドを基調としながらも、その中にポストロック由来の緻密な構築美や緊張感、テクニカルな志向の片鱗を感じたのだ。端的に言えば「低音が強めでゴリゴリ」といった具合である。しかし、それでいてさほど無骨さは感じない。流れるようなヴォーカルと軽やかに聴かせるギターがそうさせているのだろう。

7月6日にリリースされた1stミニ・アルバム『MOMENTUM』を聴いても、やはり同様の印象を持った。特に冒頭を飾る「off」は、全体の音像としては涼風のように流れていくが、刻まれるドラムと互い違いにずれていくようなギター・リフの違和感が秀逸で、バンドが持つ両極端の要素を自然な形で両立させている。一方、「アフターバーナー」で鋭利なサウンドを疾走させ、ベースの低音が効いた「閃々」でシリアスな雰囲気を醸し、「kagerou」で切実なヴォーカル・メロディと終盤で加速するテンポによってセンチメンタリズムを増幅させるなど、曲ごとに異なるアプローチも聴かせる。バンドは2020年から活動を開始したとのことだが、tricotやayutthayaなど影響源を垣間見せながら、たった2年で日本語オルタナティヴ・ロックとしての自らのスタイルを確立しつつあるのだ。さらに気付く、無骨に感じる「國」という文字も、「くに」という発音自体はむしろ柔らかい。バンドの二面性を踏まえると妙にしっくりきた。

ただ、シーンに突っ込んでいく様は当初のイメージ通りかもしれない。タイトルの『MOMENTUM』には「勢い」「はずみ」といった意味がある。今作はバンドにとって大きな機運となるポテンシャルを秘めているはずだ。

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國『MOMENTUM』

レーベル:SHRA Records
リリース:2022年7月6日

トラックリスト:
1. off
2. アフターバーナー
3. 閃々
4. うつろい/ざわめき
5. kagerou
6. on

配信リンク:https://linkco.re/U4RyuSCC

對馬拓