【連載】colormalイエナガの頼むから聴いてくれや Vol.1

【連載】colormalイエナガの頼むから聴いてくれや Vol.1

大阪の4人組バンド、colormalのイエナガが筆を執る(多分)マンスリー連載がスタート。最近聴いた新譜の中からイエナガ的おすすめを選出して紹介する。今回のセレクトは、笹川真生、キタニタツヤ、UlulU、TTUD、kurayamisakaの計5作。

笹川真生「ためらいあいいたい」(Single)

Self Released
2022/06/01

僕の友達でもある笹川真生のニュー・シングル。

mao sasagawa時代にボーカロイド音源としてリリースされた「mentir」を真っ先に思い浮かべさせられるような、大衆性とモラトリアム感を往来するメロディセンスが冴え渡っている。アウトロで盛大に盛り込まれたOasisまんまのギターがかなり「ワンダー」なアレンジだけど、それよりも全体的な編曲の偏差値が高い。

ヴァーチャル・シンガーである花譜をはじめとした楽曲提供の経験が活きていることは容易に想像がつくし、昨年夏にリリースされた「異邦人」以降のレコーディング・メンバーやスタジオを含めた体制が盤石になりつつある充実感が耳から伝わってくるようだ。まどろっこしい言い方をしたけど、とにかく音が良い。この体制で放たれる彼の今後に期待がどんどん高まるシングル。

キタニタツヤ『BIPOLAR』

MASTERSIX FOUNDATION
2022/05/25

同じくボーカロイド周りからのアーティストで、笹川真生と同居していたことのあるキタニタツヤのアルバムもすごかった。特筆すべきは、J-POPど真ん中の良曲とオルタナティヴな楽曲の比率がこれまでの音源とひっくり返っていながらも、アルバムを通して彼の新たなディスコグラフィーとして難なく受け入れられるところだと思う。「夜警」のような従来リスナーのライブラリを賑わせる楽曲もあり、個人的に嬉しい。

先日、ツアー大阪編となったZepp Nambaの公演を観に行ったのだが、タイアップ曲である「プラネテス」やTHE FIRST TAKEでの披露も話題となっていた「ちはる」など、秀逸な編曲を堪能できる最新曲と併せてもボーカロイド時代の楽曲に違和感を感じないことが印象的だった。彼自身の活動が地続きであり、かつサポート・ミュージシャンからの理解度がそれを実現していたように思う。端的に言って、これから上手く行くビジョンしか見えないライブでした。

UlulU『UlulU』

Mastard Records
2022/05/25

ここ最近のリリースでハートを撃ち抜かれたのがこのアルバム。Sundae May Clubなんかも最近そうだったんだけど、まっすぐな歌い方が変なフィルターを介することを拒んで聴き手に伝えてくる強さは時代が求める所でしょうね。随所に出てくるギター・ソロなんかは、毛羽立った質感の音色に面食らってしまうけど、まさに盛夏を迎えつつあるここ最近に聴きたかった音でしかなく。

<iframe title="【1st Full Album" width="500" height="281" src="https://www.youtube.com/embed/qH3nrQvHe5I?feature=oembed" frameborder="0" allow="accelerometer; autoplay; clipboard-write; encrypted-media; gyroscope; picture-in-picture" allowfullscreenululu"】全曲試聴トレーラー">

「君と過ごした夏」や「指定席」あたりが顕著ですが、終始景色の見える演奏ですよね。シャンソンの有名曲「愛の讃歌」のカヴァーも、これを聴くことで相対的に他のアルバム曲の緻密な和音感に注目してしまうあたり、必然的な収録だなと思いました。総括するとバンドとしての演奏がすこぶる上手い!

TTUD『TTUD 2』

Self Released
2022/05/18

TTUD、良いよね。

「昔フジテレビで放送してた『FACTORY』って音楽番組、TTUDの出演回でYouTubeにあるやつめっちゃ観てたよ」とか言ってしまいそうなくらい僕らの血肉になっているオルタナティヴ。このかっこよさでリリースしてくれるのは彼らだけでしょう。

個人的には「Days Slipped By」と「まなざし」がお気に入りです。予測が働かないコード・バッキングとリフの間を行き来するギター、堅実ではありながら楽曲のストレンジさを強調するリズム隊の組み合わせ。決して聴いていて安心感があるわけではないんだけど、フルサイズを危ういまま渡り切れてしまう平衡感覚が素晴らしい。

kurayamisaka「farewell」(Single)

Self Released
2022/03/26

今年のベストトラック候補です。

リリースは本楽曲を含めて2曲だけなんですが、その2曲目が和田あき子のカヴァーだったり。

「メンバーは全員AI」なんて噂も立つほど謎に包まれたバンドですが、春頃にワンフレーズのみTwitterに公開された動画だけで界隈が色めき立っていたので、秋リリース予定のアルバムにも期待が高まります。

声質にも相性バッチリのダブリングが終始施されたヴォーカル、ストイックだけど切ないフレーズ満載の楽器群……。 「オルタナ版PUFFY」だの「J-POP版toddle」だの友達と話したりしてました。

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イエナガ

大阪を拠点に活動するバンド、colormal(カラーマル)のフロントマン。元々はイエナガによる宅録プロジェクトとして2015年より活動していたが、2021年からイエナガ(Vo. Gt.)、やささく。(Gt.)、マツヤマ(Ba.)、田井中(Dr.)の4人編成に。同年『losstime EP』をリリース。関西〜関東を中心にライブ活動も精力的に行う。基本的にサビがとてもいい。

Twitter:
colormal@colormal
イエナガ@clm_yeng

musit編集部