【レコメンド】ART-SCHOOL『Just Kids .ep』(2022)──疼いた心は癒されずに傷跡になったとしても…

【レコメンド】ART-SCHOOL『Just Kids .ep』(2022)──疼いた心は癒されずに傷跡になったとしても…

子供から大人になるにつれ、自分の存在が世界からはみ出したような違和感や孤独に苛まれた時、僕らは思春期を生きることになる。「自分とは何?」。そんな答えのない問いかけをし始めたティーンの心象を美しいスケッチにしていたのがART-SCHOOLだった。彼らはずっと、思春期に湧き上がる胸の疼きを鳴らしていた。膨れ上がった自意識を制御できなくなって、自己欺瞞に陥っても、彼らは抱きしめて癒してくれた。

インディー時代のEP『SONIC DEAD KIDS』(2000)収録の「FIONA APPLE GIRL」(M1)を聴いて泣いたり、1st EP『DIVA』(2002)に見られる、U2からの影響を受けた歌詞を読んで胸をときめかしたり、フロントマンである木下理樹と著者が同い年だからという理由で、「今、ここで」鳴らしてほしい音を鳴らしてくれると勝手に思い込んでいた。我々同年代にとって彼はヒーローだった。自意識の高い音を鳴らしていた分、彼の一挙手一投足にのめり込まれてしまうのだ。

だから、2019年春に活動休止した時、何となく自分の青春が終わってしまったと思った。そんなことは、何十年も生きていれば慣れていたはずなのに、心にぽっかり穴が空いたような気がした。それぐらい残念だったし、その後の彼の状況をnoteで読んで胸を痛めていた。だけど、信じてもいた。絶対に戻ってくる、と。そんな簡単に終わらせてたまるかという個人的な意地もあったかもしれない(彼らにこんな想いは届かないかもしれないけれど)。

そんな彼らの待望の復活作が届けられた。「Just Kids」(M1)には「Kids」と言葉が入っている。それだけで感動してしまう。ギターのアルペジオもベースのフレーズも、「FIONA APPLE GIRL」を感じさせる疾走感に溢れている。この1曲で音楽を奏でる理由を取り戻したのだ。彼らは成長の過程で必然的にイノセントが失われていく悲しさをずっと曲にしている。それが嬉しい。

「レディバード」(M2)は〈傷跡〉〈愛し合う〉と木下にとっての必殺のフレーズが出てくる。まるで骨と皮だけで作ったような、虚飾が一切ない曲。そして「ミスター・ロンリー」(M3)では〈この傷はきっと きっといつか癒えるだろう〉と歌う。この曲は、木下自身が療養から復活することの希望を感じさせる以上に、救いへの願望に普遍性を感じさせる。それは誰にも当てはまる願いになっている。ART-SCHOOLは今作で、永遠に「あなただけ」の存在になりたかったのだと思う。

最終曲の「柔らかい君の音」(M4)も彼ららしい語感のタイトルだし、「愛されたい」という言葉はずっと木下が歌っていたことだった。彼が歌いたいことと、歌わなくちゃいけないことが合致した偶然は、不幸かもしれないけれど奇跡となって我々の胸を突き刺す。このEPは、木下が苦難の末に筆を取り、何かに縋りつくように描いた素描のようなシンプルで美しい楽曲群だし、彼の声はこれまでになく透き通り、療養を乗り越えた力強さと同時に、本質的に併せ持つ儚さも感じさせる

彼らの活動はこれからどうなるのかは分からないけれど、こうして作品を残してくれたことを祝福したい。そして青春の疼きは、いくつになって抱いたとしても間違ってはいないのだ。僕らの思春期は永遠に終わらない。だからこそ、彼らもまた存在していくのだ。

* * *

ART-SCHOOL『Just Kids .ep』

レーベル:UK.PROJECT
リリース:2022年7月13日

トラックリスト:
1. Just Kids
2. レディバード
3. ミスター・ロンリー
4. 柔らかい君の音

配信リンク:https://art-school.lnk.to/justkids

竹下 力