【レコメンド】Kroi『telegraph』(2022)──意味性を剥奪した音と歌詞の凄み

【レコメンド】Kroi『telegraph』(2022)──意味性を剥奪した音と歌詞の凄み

彼らのニュー・アルバム『telegraph』を聴けば、サウンドのボキャブラリーが多彩であることや歌詞のニュアンスにおける素晴らしさを感じる以上に、内田怜央(Vo.)、長谷部悠生(G.)、関将典(B.)、益田英知(Dr.)、千葉大樹(Key.)から成るKroiには、「多くの語るべきことがある」という強い印象を抱く。そして彼らにはそれを語るだけの力がある。Kroiのメジャー2ndアルバム『telegraph』は、「自分たちが好きな音楽を奏でて楽しんでいる気持ちをリスナーと共有したい」という想いだけをピュアな結晶としてアルバムに散りばめた傑作となった。

彼らの音楽の魅力は前作の『LENS』から揺るがない。彼らは、ファンク・ジャズ・ヒップホップ・ロック・ソウル・フュージョンなどを素養にしながら、とんでもなくパワフルで個性的な文体を持っていることが強みだ。野球のピッチャーで例えるなら、地上最強の称号を持つデグロムみたいな前のめりの凄みがある。音が鳴れば、声が聴こえれば、誰をもバンドの虜にしてしまう。

「Drippin’ Desert」(M1)は、80年代のフュージョンらしいギターのイントロで始まり、ラップと夏の煌めきを感じさせるファンキーなメロディが絡み合うプログレッシヴな展開の曲。「Juden」(M5)は、160kmの豪速球のような豪快なジャズ・ファンクのナンバー。しかし本作は、各曲を紐解くよりも、居合い抜きのようにたった一曲でアルバム全体をリプレゼントしてしまうイメージもある。それが「熱海」(M7)だろう。美しいソウル・ナンバーで、ただ熱海のことを颯爽と歌う。それだけなのに、我々の目の前に広がる世界が変わってしまったような忘我の感覚を味わわせてくれる。 

言い換えれば、彼らの優れた部分はメンバー全員の卓抜したソングライティングと、生演奏によるリアリズムを突き抜けた地点で展開する、彼らにしか生み出せないヴィジョンを提示できることだ。楽曲自体はリアルなのに、見たことのない魅惑的な音像を浮かび上がらせる。

それは音楽的なダダイズムと言っていいかもしれない。音も歌詞も、あらゆる意味性を削ぎ落とし、音楽に纏わりつく古い観念や情緒を排しながら、彼らは新しい時代の音楽を生み出している。そうしてひたすらリスナーを踊らせる。彼らの音楽は、現代の音楽シーンに対する批評にもなり得ているとも言えるだろう。作品に体ごとぶつかって、既存の音楽を解体していくタフな真面目さこそが彼らの真骨頂なのだ。

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Kroi『telegraph』

レーベル:ポニーキャニオン/IRORI Records
リリース:2022年7月27日

トラックリスト:
1. Drippin’ Desert
2. Funky GUNSLINGER
3. Pixie
4. Not Forever
5. Juden
6. banana
7. 熱海
8. Airport
9. Small World
10. Correction
11. Go through
12. Never Ending Story
13. WATAGUMO

配信リンク:https://lnk.to/telegraph

竹下 力