【ミニレビュー】butohes「Pluto」(2022)──孤独の宇宙で軌道を描く「冥王星な君」へ

【ミニレビュー】butohes「Pluto」(2022)──孤独の宇宙で軌道を描く「冥王星な君」へ

2021年。にわかにTwitterのTLを賑わせた、とあるバンドがいた。butohes──不思議な字面だが「ブトース」と読むらしい(暗黒舞踏が由来だとか)。1st EPが話題を呼んでいるようで、ジャケットに惹かれたので試しに聴いてみた、瞬間、ぶち抜かれた。潜在的に求めていたものが突然、豪速球で懐に飛び込んできたような感覚だった。『Lost in Watercycle』と名付けられたその作品を一言で表現するのは難しいが、水のように湧き上がったクリエイティヴィティを、ポストロック、シューゲイザー、J-ROCKなどに接続し、無駄のない回路を構築するような美しさがあった。流麗かつ低体温なヴォーカル・メロディ、響きを重視したような散文的リリック、テクニカルなギターのフレーズ、それらを取り巻くアンビエンス。それぞれが回路を通して聴く者の身体を巡っていく。ここで鳴っているのはロスト、つまり喪失の音ではない。失われ、補給され、また失われ。その循環の中で生きる我々を讃えようとする、ある種の試みとしての音楽なのではないか。私はそう解釈している。

1930年。宇宙の遥か遠方に冥王星が発見され、長らく太陽系の9番目の惑星とされてきた。しかし、2006年に準惑星に再分類、太陽系から外されることとなる。butohesの新曲「Pluto」は、そんな不遇の星を慰撫するようなギターのリフレインから幕を開ける。そのループがドラムやベース、そしてもう1つのギターと螺旋状に絡み合っていくことで、孤独の宇宙で軌道を描くドワーフ・プラネットの姿が浮かび上がってくるようだ。サウンドは1st EPの「Aquarium」などで示されていたアンビエント成分の延長線上にあるようにも思えるが、楽曲の原型は1st EPの制作当初から存在しているらしく、ライブでも度々披露されてきた。アレンジは彼らのレパートリーの中でもミニマル志向で、『ANSWER』期のスーパーカーをよりアブストラクトな方向へシフト・チェンジしたような趣がある。そして何より、優しい。ディレイの効いたギターもそうだが、ベースは柔らかな絨毯のように横たわり、ドラムは孤独の中で俯きがちに踊るようにそっと駆けていく。そして断片的なイメージを切り取ったような言葉たちが、僕らを労わるように、しかし過剰に干渉することなくさらりと流れていく。凍てつくような疎外感に苛まれる「冥王星な君」が、また立ち上がるための融解の音。やはりbutohesは喪失の先に光を見出そうとしている。

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butohes「Pluto」

レーベル:Self Released
リリース:2022年12月7日

配信リンク:https://friendship.lnk.to/Pluto

對馬拓