2022年RATの旅──今買うべきRAT系のペダル6選

2022年RATの旅──今買うべきRAT系のペダル6選

みなさんこんにちは。Kensei Ogataと申します。本記事より、musitのライターとして参加させていただくことになりました。

普段は音楽活動やレコーディング/ミックスのエンジニア、ペダルやケーブルなどの製作を行っていまして、musitでは音楽関連やその機材について執筆していく予定です。はじめましての方もどうぞよろしくお願いします。

なぜRATなのか

最初の記事ということで、テーマ選びにかなり悩んだ上に一周回った感もあるのですが、最近エンジニアを担当しているバンドのメンバーなど、知り合い数人から立て続けに「Proco RAT2(と同系統のペダル)が故障したので、どうせなら冒険がてら同系統の良い感じのペダルに買い換えたいのですが、何か良いものはありますか?」と相談を受けて、いくつか個人的に好きなペダルを紹介していました。

RATと言えば、年代やクリッピングなどの違いによる様々な派生機種があり、クローンや本家を発展させていった新興メーカーのバリエーションも考えるとかなりの数のモデルが存在します。サウンドもプリアンプ〜クランチ的なオーバードライブ、中域の張り出した図太いディストーション、ファジーな倍音感など様々な用途があり金字塔とも呼べる、エフェクターの定番と言っても過言ではないでしょう。

ここでは(みなさんを信頼して)RATについて〜とか、系譜や歴史をなぞる〜と言ったやり尽くされた過程はすっ飛ばして、今RAT系のペダルを買うとしたら「これ」がおすすめですよ!という形で、いくつかのペダルを紹介していきます。

2022年おすすめのRAT系ペダル

1. JHS PEDALS PACKRAT

昨年11月に発表されて話題になりました。MUFFULETTA(Big Muff系)、THE BONSAI(TS系)に続くJHS Pedals のてんこ盛りシリーズのRAT版です。これを最初に紹介するのはなんの捻りもないですが、やはり本家RATシリーズ、派生系、発展系のキーポイントとなったモデルを押さえているので、RAT系の基礎として手に取るのも正解かと思います。

クリッピングや回路による違いをデジタル・シミュレーションではなく、40個に及ぶ個々のスイッチを介して261個のコンポーネント(部品)の経路を切り替え、9モードのモデルを再現しています。実際にオリジナルとなったペダルと弾き比べている動画がありますが、かなり肉薄していてブラインドでは判別できる自信がないですね。このペダルを買ったら「もうRAT系は買う必要がない」となるか「オリジナルが欲しくなる」のどちらかでしょう。

個人的に、Deucetone RATに搭載されていた、いわゆるクリッピングを使わないClean RATモードが好きなのですが、その立ち位置としてIbanezのLM-7 LA METALをチョイスしているのが最高でした(もちろん変更されているコンデンサの値などもこちらにRATのままではなくLM-7に合わせているようです)。

国内販売価格は【34,650円】

2. 1981 Inventions DRV

もう本当に「顔」が良い。内部はBondi Effectsとの共同開発、2018年に登場しミニマル・デザイン、ネガティブ・スペースをしっかりと確保したデザインの良さが飛び抜けていて、すぐに話題となりました。

中身はWhite Face期のRATを参考にしているとのことですが、18vに内部昇圧されレンジが広く立ち上がりも速い、ハイファイなヴィンテージ志向と言ったところでしょうか。

音の傾向はハイミッドの抜けが良くトップもカリッと出ています。ゲイン量も低く設定されプリアンプやクランチ・サウンドが得意なベクトルのRATではありますが、DRIVEをフルアップし低音をせり上げた際のレンジ感の広さ故の、他のRATとも違うディストーション・サウンドも好きです(定数的には普通のRATの1/20のゲインに設定されているようですが、フルでも十分なファジーさが確保されます)。

現在はUmbrella-Companyで国内流通されているのでかなり入手しやすくなりました。国内販売価格は【33,000円】

カラーバリエーションの豊富さも特徴で、度々限定色が発売されています(初代のデロリアンカラーを復活させてくれ……)。ライバルと差を付けたい方は、1981 Inventionsのサイトのメール購読に登録しましょう。新入荷や限定色の復刻の際など、製作者のMatthewからメールが届きます。あっという間に在庫がなくなってしまうので、メールが届いたら迷わず決済まで突き進むだけです。

3. Walrus Audio Iron Horse Distortion

https://youtu.be/2sfvfYgw_vs

Walrus AudioのRATペダルといえばこれ。昨年末にV3が発表されましたが、2022年2月現在ではV2もまだ新品の在庫は確保できるようです。

以前レコーディングで使った時の印象ですが、通常のRAT2だとローゲイン〜ミディアムゲインでは音の軽さが気になることが多いですが、こちらはあまり歪ませなくても音の厚みがしっかりとあり、音のキメの細かさも相まって毛羽立ちの少ない音の壁感が得られました(今回は紹介しませんが、Way HugeのFat Sandwichも似たような印象を受けました)。もちろんフルアップすると、かなり図太いディストーション・サウンドも得られます。

V2とV3の大きな違いは以下の通り。

ボードを組むにあたってジャックの向きの重要さはかなり上がってきていますし、年々トップジャックの選択肢が増えているのは嬉しいですね。最後のV3に搭載されたクリッピングの可変ブレンドは、他のメーカーでもなかなか見ない新しい試みで、かなり実用的で面白いと思います。

国内販売価格はV2が【22,000円】前後V3が【26,400円】

4. Black Mass Electronics 1312 V3

2020年の3月に発売され、JHSのPACKRATよりも先にクリッピングを8種類切り替えられるRATペダルとして話題になっていました(先述した通りPACKRATはクリッピング含めて回路ごと切り替えるアプローチです)。

切り替えられるクリッピングは下記の通り。

実際のところ、Proco RATの派生シリーズであるTurbo RAT(レッドRED)やYou Dirty RAT(ゲルマニウム)はクリッピングがRAT2(シリコン)と違うだけなので、こういったクリッピングの切り替えだけでも十分に雰囲気を味わえます。ついでに記載しておくと、非対称シリコンはRAT SOLO、MOSFETはFAT RATで採用されているクリッピング方式です。

DRVと同様、内部で18vに昇圧される仕様になっていますが、こちらの方がゲイン量が確保されしっかりとレンジ感も確保された、本来のRATに近いディストーション・サウンドが得られます。

重要な情報として、このペダルで得た収益の50%はBLMやトランスジェンダーなどに関する人権擁護の活動を行っている団体に寄付されています。ブランドの信念も含めて購入し、音を鳴らすというのはペダルにおいても重要なことだと思っています。

国内での流通もAltergearで開始され入手もしやすくなり、販売価格も【25,300円】とPACKRATよりも手頃な価格設定です。

5. Zander Circuitry – Cranium V2

クリッピングの切り替えが搭載されたRAT系のモデルということで、新興のガレージ・メーカーであるZANDER CIRCUITRYのCranium Murine Distortionも紹介したいです。

コンパクトなサイズながらも、Black Mass 1312のような8種類のクリッピング切り替え、多彩なトーン・コントロールができます。Freqノブはミドルのコントロールというよりも全体の周波数制御を行い、ローエンドをコントロールするBodyノブと共にGainとToneのコントロールと連動するような設計思想になっているようです(簡単に言うと、オリジナルRATから逸脱した音作りが可能)。

切り替えられるクリッピングは下記の通り。

オリジナリティのあったBlack Mass 1312の組み合わせと比べると、Proco RAT本家の派生モデルに準じたクリッピング方式を選択できるようです。

そして、やはり特筆すべきは2つ目のBlastフット・スイッチと連動しているBlastノブの働き。フットスイッチをONにすることでゲインをフルアップし、Blastノブではその音量をコントロールできるので、ローゲインとハイゲインをスイッチ1つで行き来できます。

フットスイッチはリレー回路になっていて、いきなりハイゲインのBlastモードからペダル自体をONにできたり、フットスイッチを踏んでいる間だけBlastモードで使用するようなモーメンタリーな使い方も可能。クランチ的な使い方からハイゲイン・ディストーションまで幅広く対応できるRATだからこそ活きるアイデアで、実際のライブなどで効果的に使える様子が目に浮かびます。

まだ国内流通は始まっておらず、購入する手段は個人輸入になりますが、149ユーロ(2022年2月現在)のレートで【20,000円】前後+送料といった感じで、手頃に入手できると思います。新興メーカーのこれからを見守るといった楽しみ方も乙だと思いますので、少しの手間や不安も含めて個人輸入を楽しみましょう。

6. Caroline Guitar Company Wave Cannon MKII

Caroline Guitar CompanyによってブラッシュアップされたRATインスパイアのモデル。定番になったクリッピングの切り替えはありませんが、通常のTONEノブに加え、中域の調整ができるFOCUSノブ、RUMBLEスイッチによる低域のコントロールが可能です。

実はPACKRATにも、このMK 1も4ノブから3ノブ用にチューニングしたモデルが搭載されていて、JHS基準ではありますが「選ばれた」 RAT発展モデルと言っても良いでしょう。

動画では顕著になっていますが、粒が荒く毛羽立ったファジーな印象を受ける歪み方で、オリジナルやクリッピングの切り替えとも違ったサウンドが魅力です。

そしてCarolineペダルの醍醐味といえる、HAVOCフットスイッチによる発振コントロールが最たる特徴で、Fuzz Factory的な発振サウンドをフットスイッチを踏んでいる間だけ鳴らすことができます。ペダルボードの中でRAT的な役割を担いつつノイズペダルとしても使用できるのは、響く人には響く仕様ではないでしょうか。

Umbrella-Companyで国内流通しており入手しやすいです。販売価格は【27,500円】

旅の終わり、そして始まり……

ここまで、6種類のRAT系ペダルを紹介しました(これらは見た目やサウンドなど様々な個人的バイアスを通過しています)。

もちろん現在も簡単に入手できるオリジナルのRAT2や本家のRAT派生モデル、同価格や廉価版コピーモデルもすごく良いですし、サウンド的に原点に帰ってRATを使うこともかなりありだと思います。

ただ、今回は当初のRATが故障した際の候補ということで、RATを壊す人の多くはフットスイッチを気合い入れて踏むのでスイッチから故障することが多いため、スイッチ周りがオリジナルや廉価モデルでも多く使用されている機械式スイッチではなく、リレー回路を使用したソフトクリックのスイッチが使用されているモデルを意識的に多く選んでいます (PACK RAT、Iron Horse V2、Wave Cannon MKIIを除く)。

オリジナルのロマンも捨てがたいですが、サウンドだけでなく耐久性や壊れた時の修理のしやすさも実用性として大事な要素ですので、様々な観点からRAT探しをしている方の一助になれば幸いです。

Kensei Ogata