友だちの歌と、私

友だちの歌と、私

シスターフッドとかブロマンスという言葉を、最近何かとよく聞くようになった。「女性同士の連帯をさす……」「利害関係を越えた……」「名前のつけられないプラトニックな……」どうもこの類の言葉にあこがれてしまう。人間として生まれたからには、他者と深い関係を築いてみたいし、「型に収まる」とか「妥協の上にある」とか、そういう寂しいものにならない、温度のある関係を持ってみたい。

そう思うようになったのは、大人になって自分の身の回りを見渡してみて、胸を張って自慢できる友人関係がほんの一握りしかないことに気づいてからだった。もちろんその一握りを大切にはしているけれど、大人になるためには仕方なかったのか、それとも自分からそういう環境をつくってしまったのか。昔遊んでいた公園にはもっと、一緒に遊べる友だちが沢山いたような気がする。

ときどき好きな音楽を聴いていると見つける、「とてもいい感じの関係」……とりわけ私の場合、友情における諸々に、どうしても憧れを抱いてしまう。彼らときたら、本当にGoodな関係なのだ。ヘルシーで、健やかで、心地がいい。彼らの友情について考えているとき、私の心は冬の海のように凪いで、たき火をしているかのように温まる。

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平井堅が歌う「キミはともだち」を、学生時代から今に至るまで幾度となく聴いてきた。そうして思うのは、「写し鏡みたい」に感情のリンクする友だちっていいなぁ、ということだ。たとえば、冬の寒い日に女友達と鍋をつついて、ロマンス映画なんかを観て、同じタイミングで号泣したり笑ったりというような、そんな時間を、贅沢が許されるならば一生やっていたい。

女友達における「共有」とは、異性のそれとは違って、もっと確固たる友情の証という感じがする。化粧品、笑いのツボ、好きな場所……共有できるものがあればあるほど、私たちは上手くやっていける、それこそおばあさんになるまで。これは、ある種の勇気に近い(それほど長く生きる気概がある、という意味で)。

だからこそ「キミはともだち」の‘‘君が笑った 僕もつられて笑った’’という歌詞に、純粋な気持ちで「いいなぁ」と思ってしまうし、きっと私が欲しいのは、そうしてほしい同じ年ごろの男性ではなくて、長年連れ添ってきてお互いが夫婦(めおと)みたいな存在になってきた女友達なのだろうな、としみじみ思う。私が笑う横で一緒に笑う女友達のいる日々は、若かりし時のように箸が転がるだけでも、とはいかないものの、穏やかでつつがない日常なのだ。

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BUMP OF CHICKENの歌う友情には、長年憧れてきた。青春のお化けみたいなものに急かされて、弾けもしないエレキギターを買って練習した「天体観測」。仲の良かった(過去形であるところがミソ)友達が「車輪の唄」を聴いて号泣したと話していた。そんな風に、私の憧れる友情の原点には、いつも煌々と彼らが輝いていた。

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「かさぶたぶたぶ」を聴いた時には、思わず童心にかえって微笑んでしまった。少年の膝にできたかさぶたが主人公となって語られる歌詞に、そういえば私にもイマジナリー・フレンドがいたなぁ、と懐かしくなったものだ。

子どもというものの真っ白さと清廉さに、時たまうっとなってしまうことがある。あまりにもきれいすぎるのだ。そして彼らがジャングルジムや砂場で築く友情に、強烈ななつかしさを憶えてしまう。胸が苦しくなる。戻りたいと願うのに、私がこの先の人生を歩み続ける限り2度と叶わないその夢の儚さと美しさを、「かさぶたぶたぶ」に感じる。大人になって傷を隠す術を身に着けた私にとって、かさぶたができた思い出は遠い昔のように感じる。まっさらだから、傷つく時もある。だけど友情が、その傷を癒してくれる。リカバリーがもたらす1つのエピソード、「仲直り」という物語を、彼らはまっさらな心で歌っているから、私はいつも泣いてしまいそうになる。やっぱり友だちって素敵だと、当たり前のようで忘れがちなことを思う。

私ももう1度、けんかして傷ついて、泣きながらごめんねって謝りたい。LINEじゃなくて直接謝りに行きたいし、仲直りしたあとには甘くておいしいものを一緒に食べに行きたい。かさぶたをひっかいて、いたっ、って言いながら笑いたい。

私が思う理想の友情は、たいてい過去にある。けれど「これから先にも、今にだってあるよ」とBUMP OF CHICKENが歌ってくれる。だから私にとって、彼らも友だちのような気がしている。

 友だちとは、美しい関係だと思う。ささやかで、どこにでもありふれているけれど、特別だ。音楽はそのきらめきを教えてくれる。大それたものでないからこそ日常に溶け込んで、ふと見上げた落ち葉や空の色に気づかせてくれる。世界の美しさについて話したいと思う相手と、私をそっとつなげてくれる。

「突然なんだけど」と言って、秋の好きなところを話し出す私に笑ってくれる。そういう友だちを、ずっと大事にしたい。

安藤エヌ