【エッセイ】『NUM-HEAVYMETALLIC』と僕の20年──ライブハウスで見たナンバーガールの残響(リリース20周年記念)

【エッセイ】『NUM-HEAVYMETALLIC』と僕の20年──ライブハウスで見たナンバーガールの残響(リリース20周年記念)

「ナンバガやるなら『NUM-AMI-DABUTZ』でしょー」「うーん、できるかな…」

軽音楽部の部室で、そんなナンバガコピーバンド会議をしたのはもう18年くらい前か。ナンバーガールを教えてくれたN君の誘いで、コピーバンドのメンバーと顔を突き合わせたボロボロの部室。N君がヴォーカルでギターが僕。舞台は大学最後の学祭!

「できるかな…」っていうのはN君の発言だった。なにせ、N君のパートはあの向井秀徳なのである。

岸田やナカコーがいなくとも、なんとなく形になるくるりとかスーパーカーのコピーと違って、ナンバーガールのコピーをやってて普通に歌ってたらダサくてしょうがない。所詮、コピーバンドしかいなかった大学の軽音楽部の価値観だけど、そういう音楽の性質の違いみたいなものは感じていた。

真似のできなさでオリジナリティを語るなら、当時のバンドの中ではナンバーガールが一番だったと思う。特にラスト・アルバム『NUM-HEAVYMETALLIC』は。あのアルバムには、USインディーとかオルタナとかピクシーズとかマイナーコードとかペンタトニックとかファズとか、そんなことだけでは語れない新しい鼓動がある。マグマみたいに蠢いて、脳の中でディレイする鼓動が。

だからこそ選んだ。最後学祭で挑戦。要するに、後輩たちが「なんかスゲー」ってなることをしたかったんだと思う。もちろん、こんな舞台に立つのは最後かもしれない自分に対しても。で、練習して、まとまって、なんか違うんじゃないかと崩してを繰り返した我々は、最後の文化祭の舞台で無事大学生なりの「なんかスゲー」を手に入れた。

問題はそれが毒だったこと。エレクトリック混乱主義者になった俺は脳が繰り出す言葉に抗えず、後先考えずアクセル。HAGAKURE理論に基づき走り出した冷凍都市に。

思わずセンスのなさを露呈してしまったが、まあ、要するに、就職せずに上京してバンド活動を始めたってわけ。冷凍都市の暮らし。アイツ姿くらまし。

ライブハウス・シーンは当時、くるりのフォロワーだらけだった。逆に、ナンバーガールのフォロワーにはほとんど会わなかった気がする。今思えば、軽音楽部でナンバーガールのコピーバンドをやるのと似た感覚があったんじゃないだろうか。下手に影響をチラつかせると、大学生の頃の僕みたいに恥ずかしい感じにしかならないから。

2000年代中盤のインディーズ・バンドマンにとって、ナンバーガールはパンドラの箱だったように思う。誰もが次のものを探しながら、誰も見つけられない。2000年代後半、ライブハウス界隈はがらんどうの雰囲気が横たわっていた。

それだけに、2012年か2013年頃に大阪のサーキットフェスに出演した際、初めて観たtricotには衝撃を受けた。確か、まだライブ会場限定のミニ・アルバムくらいしか出してなかった時期だと思うが、既にバンドのグルーヴは鉄壁だった。そのアグレッシブなサウンドやヒリヒリするようで時に怪しく響く歌には、後期ナンバーガールの影響を感じる。だが、同時に全く新しいものであるようにも聴こえた。

笹口騒音率いるロック・バンド、うみのてにも同じことが言えるだろう。その狂熱には確かにナンバーガールを感じるが、叫ぶ言葉は自分の言葉なのだ。ライブハウス・シーンが生まれ変わる音を聴いた気がした。

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10年経って溢れだしたナンバーガールの残響。それはひょっとしたら、シーンがナンバーガールの衝撃を消化するのに10年の月日を要した、ということなのかもしれない。

ちなみに僕が初めて読んだブログは、bounceで連載されていた『向井秀徳の妄想処方盤』。確かZAZEN BOYSが始まってちょっとしたくらいの時期に連載開始したもので、活字を能動的に読みに行ったのはあれが初めてだった。そこからブログを書き始めた僕が、今ではwebライターとして飯を食っているのだから、これも1つの残響と言えるだろう。

「できるかな…」というN君の問いに20年越しに答えよう。できない。我々はナンバーガールにはなれない。君は電気屋で、僕はwebライターの端くれで、無敵だったあの頃想像もしなかった40歳を迎える。

だが、それも悪くない。なぜなら生きているから。俺たちはそんな俺たちのダサさを隠す必要はない。共感をする必要はない。アンチに感化される必要はない。この記事をシェアする必要はない。ただし……

 

あの時感じたマグマのような鼓動だけは覚えておく必要がある。

 

必・要・あるうううううううーーーーーー! ダラララダッダダッダッダ! ダラララダッダダッダッダ! ダラララダッダダッダッダ! ダラララダッダダッダッダ! ダ・ダ・ダ・ダ・ダ・ダ・ダ・ダ・ダ・ダ・ダ・ダ・ダ・ダ・ダ・ダ・ダ・ダ・ダ・ダ・ダ・ダ・ダ・ダッ!!!

 

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中澤 星児