フルサイズで復刻!KORG MS-20ってなんだ?〈前編〉

フルサイズで復刻!KORG MS-20ってなんだ?〈前編〉

今年もカリフォルニア州アナハイムで楽器の見本市 The NAMM Showが開催されました。

様々なブースの状況がレポートされる中、我が国のシンセ野郎たちの胸を特に熱くしたニュースがKORG MS-20のフルサイズでの復刻の情報だったかと!

その後、KORGオフィシャルサイトで詳細が発表。
https://www.korg.com/jp/products/synthesizers/ms_20fs/

今回の復刻での正式名称は「MS-20 FS」。
発売日未定。数量限定、本体カラーは4色、MIDI IN端子とUSB端子を搭載。ACアダプター電源。
フルサイズの復刻というだけでなく(※1)現代的な機能とオリジナルには無かったカラーバリエーションでの復刻とのことで、オリジナル所有者も欲しくなってしまう仕様。※1:現行品はやや小ぶりのminiサイズ

とりあえずこのヴィジュアル。
アナタがシンセサイザー奏者でなくてもMS-20はちょっと気になりませんか?


無限の可能性を感じる本体右側のパッチ部分、威圧的なビジュアル、「最悪、使えなくてもインテリアでもOK」と思わせるカッコ良さ。(※2)
※2:高円寺にそんな古着屋が実際にあります。
これを突然スタジオ練習に持ち込んだらバンドメンバーも驚くでしょう。

ヴィジュアルだけでなく音も個性的。
Aphex Twinや電気グルーブなどテクノミュージシャン、DAFやKas ProductなどのNW系ミュージシャンをはじめ、今なお数多くのミュージシャンに愛されているシンセサイザーです。wikipediaによると作家の安部公房(ピンクフロイドファン)も所有していたとか。

そんな要注目のアナログシンセサイザー「KORG MS-20」の魅力を熱く(暑苦しく?)お伝えします。
酒屋なのに酒関連の情報一切なし!

KORG MS-20とはなんぞや?

まずはKORG MS-20の概要を説明します。

・1978年に発売されたモノフォニック・シンセサイザー
モノフォニックとは単音での発音。鍵盤を2つ同時に打鍵しても音はひとつしか鳴りません。なのでコードは弾けない。
じゃあ単調な音しか出ない?いやいや、そんなことありません。

・2VCO / 2VCA / 2VCF / 2EG / 1LFO構成。自由自在なパッチングが可能
シンセ使いでないと分かりづらい用語の羅列ですが重要なのは「2VCO」。
VCO=発振器を2つ搭載しているので1回の打鍵で”2種類”の音が発音出来る。ということは、VCO1を根音、VCO2のピッチを変えて5度上、といった使い方でコードを引くことも出来ます(やらないけど)。
その他、各種ツマミの設定やパッチングで多彩かつ複雑な音作りが楽しめます。

・太く粘りのあるサウンド、強烈なアナログ・フィルター
楽器というより「THE電気信号!」といった風合いの、迫ってくるような迫力のある音。
初めてアンプに繋いで音を出した時、それまで使ってたシンセとあまりにも違いすぎて「どえらいモン買ってもうた…」と絶望したのものです。

背面のロゴがデカくてカッコイイ。

しかしそれも最初だけの話。ツマミを捻ったり、パッチを繋いだり色々試すと、本当に素材そのまま!といった趣だった電気音が突然艶やかに響き始める瞬間がある。空間系エフェクターを通すと奥行きが出てまるで宇宙空間のような異次元の音響になる。かと思うとスピーカーのコーンを吹っ飛ばすんではないかと思うほどの暴力的なサウンドをブチかましてくれる。

今となっては逆にデジタル(※3)やアナログモデリングシンセ(※4)が子供のおもちゃに思えるくらい(非常にお世話になったのに罰当たりな話!)、MS-20の魅力にどっぷり取り憑かれております。
※3:デジタル信号処理技術を使って音声信号処理を行なうシンセサイザー。現在ではPCMというサンプリング音源を仕様したものが主流。
※4:ヴァーチャル回路でアナログシンセを再現したシンセサイザー。アナログシンセと同様の音作りを行い、アナログシンセ風の音がする。

実際使ってみて名だたるミュージシャンが使っている理由を私は理解しました。
とはいえ、これには複雑な事情が。発売当初はシンセサイザーブーム、テクノポップブームにのり、比較的安価だったため大ヒット。
しかし80年台中盤にはFM音源のデジタルシンセが登場して世界を席巻。MS-20は時代の波に追いやられ、80年台中盤〜90年台前半は捨て値で中古市場に転がってました。これを金の無いテクノ、ハウスミュージシャン達が使い始めた事により現在の再評価に繋がっています。当初はプロミュージシャンの評価が良かったわけではなかった。
先ほど”捨て値””転がっていた”と書きましたが、私の知り合いは制作スタジオのゴミ箱に捨てられていたものを貰ってきたと言ってました。

 

そんなMS-20もシンセ初心者にはちょっと大変な部分もあります。

KORG MS-20は難しい?

びっくりする人もいると思いますが、MS-20には現在のシンセサイザーでは当たり前であるメモリ機能が付いていません。なのでせっかく気に入った音を作っても記憶できない。次に使いたければ同じツマミ、同じパッチのセッティングを再現しなければならない。
これはライブやDJの時、最初はすごく大変。

しかしですよ。
MS-20というのはアナログシンセサイザーの基本に非常に忠実に設計されておりまして、この機種を使ってアナログシンセサイザーの音作りを学んでしまえば他のアナログシンセサイザー、そしてアナログモデリングシンセはすんなり使えてしまうはず。

そう言った意味ではMS-20はアナログシンセサイザー入門機に最適な1台と私は思います。

過去に復刻もされてるけど。

こんな魅力的なMS-20は当然過去に復刻もされています。

・プラグイン版「MS-20」(2004年)
・iPadアプリ「iMS-20」(2010年)
・オリジナル版の開発エンジニアが責任監修を務めたハードウェア「MS-20 mini」(2013年)
・組立てキット「MS-20 Kit」発売(2014年)

変わりダネとしては姉妹機種 MS-10のソフト版としてNintendo DSソフト「KORG DS-10」なんてのもありました。

 

ここまでは少々形を変えた復刻。
今回の「MS-20 FS」はオリジナルと同様のサイズで、更に最新の機能を備えた進化した復活。
やはり肝心の音がどこまで再現されているか気になります。

それでは次回〈後編〉は実際にMS-20オリジナルの音を紹介します。

仲川ドイツ