【インタビュー】ライブハウスの『未来』について考える Vol.1 吉祥寺Planet K

【インタビュー】ライブハウスの『未来』について考える Vol.1 吉祥寺Planet K

コロナウイルスの国内流行から約一年が経過した。この一年間、本当に毎日が目紛しく変わっていたな、と思う。私自身、コロナの影響によって余儀なく前職を離れなくてはいけない状況に陥った。今でこそこうして執筆業を続けられてはいるものの、当時は止め処なく溢れ出す漠然とした不安と、SNSに乱立する意見やネットニュースがすべて余計なノイズに感じられて、その両方に日毎押し潰されそうになっていたのを今でも覚えている。

自身の今後に対する不安感と、ほぼ同時に私の精神を削っていたのが‘‘ライブハウスへ行けない状況’’だった。私は初めてライブへ足を運んだのが小学6年生の頃だったから、もう10年以上はライブハウスに通い詰めていることになる。
人より遠回りしてきた不器用な私を、いつも受け入れてくれた唯一の空間がライブハウスだった。悲しいことが続いたときは暖かい空間に励まされ、嬉しい出来事に包まれたときには足取りをうんと軽くして会場に向かった。私がどんな環境にいて、どんな精神状態でいようとも、ライブハウスは常にその扉を開けて待ってくれていたのだ。

決して大袈裟ではない‘‘居場所’’であるライブハウスが、コロナウイルスの流行によって非難の目を向けられ、今現在も三度目の緊急事態宣言(※執筆時)によって危機的状況に立たされ続けている。ライブハウスの閉店は一年経った今でも度々耳にし、遣り場のない怒りと悔しさ、青春を彩ってくれた居場所がなくなる喪失感を同時に味わう日々に居ても立ってもいられなくなり、この取材企画を敢行することにした。

本稿は、ライブハウスの<未来>に焦点を当てたインタビューとなる。コロナウイルスが猛威を奮い始めた昨年春のこと、世間の声と営業継続の狭間で起きた葛藤。また、ライブハウスが今後も生き抜くため、今改めて本当に必要だと思うことについて、取材にご協力いただいた東京、及び埼玉のライブハウス3店舗の統括、また店長に話を伺った。

ライブハウスにも、私たちと同様に未来があり、本企画はその未来を共に迎えるための助走である。三回に分けて掲載するこの取材記事を執筆するにあたり、ライブハウスを含めたエンターテイメントの存在を希薄なものにしたくない、という意味も含めて筆を執った次第だ。私と同じようにライブへ通うことを生命活動の一環として日々を送ってきた人、またそうでない人にも、本企画を通して各々が大切にしている場所を思い浮かべ、何かを感じ取っていただけたら幸いである。

インタビュー/文/写真=翳目

 

‘‘衣・食・住+音楽’’。多様性に富んだ街のライブハウス、吉祥寺Planet K

吉祥寺Planet K(通称:プラK)は東京の‘‘住みたい街ランキング’’でほぼ毎年トップに上がる街、吉祥寺駅から徒歩約3分の場所に位置する。吉祥寺大通りにある果物屋の横を通り過ぎ、ショッピングセンター『コピス吉祥寺』が構えるフードテラスの前を左に曲がればすぐだ。

プラKが入っているビルは上がカラオケや脱毛サロン、地下がライブハウスという構造になっているので、入場開始までの時間、またライブ後の余韻に浸る時間、何度かこのビルのカラオケ店で過ごしたことがある。吉祥寺屈指の飲み屋街‘‘ハモニカ横丁’’でその日出演していたアーティストと鉢合わせに、なんてこともしばしば。井の頭公園へ向かう道なりにある古着屋を行きつけにしているバンドマンも多く、‘‘衣食住’’と‘‘音楽’’が共存した吉祥寺という街に、あるべくして存在するライブハウスなのだ。

第一回目は、そんな吉祥寺Planet Kの統括、また自身でもラウドロックバンド・アラウンドザ天竺でフロントマンを務める、ロンドン田中氏へインタビュー。アーティストに深く長く愛される箱が、コロナ前と以後でどう変わったのか。詳しく話を聞いた。

* * *

最初に緊急事態宣言が出されて「もうできないな」って

--田中さん、本日はよろしくお願いします。まず始めに、吉祥寺Planet Kができた時期、それからこの箱が掲げるコンセプトについて教えていただけますか。

吉祥寺Planet Kができたのは1999年です。僕は当時まだ働いてなかったんですけど、元々のコンセプトは‘‘ミニコンサートができる箱’’だったんですね。ライブハウスというよりかは‘‘大きい規模でやっているコンサートの小さい版’’みたいな。だから、そういう意味で照明の数は他のライブハウスよりも多いんですよ。

--本当だ……。改めて見ると天井一面にみっしりありますね。

そうなんです。なんで、例えばメジャーで活動していた人が段々売れなくなって、(ライブをやる)会場の規模が小さくなっても、うちだったら音響も含めてクオリティの高いライブができるよ、っていう。だから音響や照明設備は結構充実しています。
キャパも280人ぐらい入るんじゃないかな?まあ最大収容人数なので、それだけ入れちゃうともうギュウギュウです。笑 今はこんな状況なんで、半分以下のキャパで入れてやってますけどね。

--プラKが輩出してきたアーティストについてもお聞きしたいです。

それでも世界が続くならは篠くん(※Vo.篠塚将行)が過去にスタッフとして働いてたのもあって、よくライブに出てくれてましたよ。あと‘‘うちで育てて大きくなった’’っていう意味でいうと、andymori、最近でいえばKOTORICHAIあたりですかね。CHAIはまだ売れる前だったかな? 昔、氣志團が一度うちでライブしてくれたこともあって。あとはフラワーカンパニーズとかASIAN KUNG-FU GENERATIONとか…、MOON CHILDのササキ(オサム)さんもよく出演してくれています。
それと、3markets[]はめちゃくちゃ仲良いんですよ。3月のリキッドワンマン(※『一生春休み』振替公演)のときに舞台監督やってたんです、僕。笑

--えっ!そうなんですか…。私もリキッドワンマンには足を運んでたので驚きました。

うちのスタッフ全員つけて。セイメイくんのパネル動かしたり、カザマくんのギター交換をしてたのも僕です。笑

--それでは、早速コロナ関連のお話に移らせていただきたいと思います。昨年2月頃から徐々に国内でもコロナウイルスが流行り始め、ライブハウスにおいても延期や中止が増えていったと記憶しているのですが、その頃吉祥寺Planet Kはどのような状況でしたか。

2月頭ぐらいから「なんかそういうのがあるらしいぞ」とザワつき始めて。でも、最初は全然関係ないと思ってたんですね。だけど2月の中旬頃になって「あ、これはおかしいぞ」ってなって、加湿器とかを買いに行って。でもどう対策したらいいのか全く分からなかったから、とりあえず加湿器置いて店内換気して、消毒液用意して…。それで2月は営業してましたね。

でも3月に入って、今度はもうキャンセルが相次ぐようになって。例年、3月は学生の卒業ライブでホールレンタルの予約が沢山入るんですけど、それも立て続けにキャンセルの連絡があったりして。で、4月になって緊急事態宣言が出されて、ライブハウスへの休業要請があったので「もうできないな」って判断しました。それから配信ライブに切り替えた感じでしたね。

--4月は例年であれば『CRAFTROCK CIRCUIT ʼ20』(※)が開催される予定でしたが、それも昨年は中止になりましたよね…。

昨年は無観客配信に切り替えて進めてたんですけど、もうそれまでは毎日僕がここに来て。店長とどういう風にやるか相談して、配信って形になったんですね。でもうちがラッキーだったのは、昔録画したライブ映像をバンドに売っていたので、元々ライブ映像を撮る用のカメラはあったんですよ。スイッチングとかも。それを引っ張り出してきて配信の準備を進められたから、対応は他の箱よりも早かったんじゃないかと。

※『CRAFTROCK CIRCUIT ʼ20』:吉祥寺のライブハウス6会場を使って毎年行われるサーキットフェス。

--そうだったんですね。私も何度かプラKでの配信ライブは観ていましたが、確かに配信を始めた当初から切り替えが滑らかでアングルも臨場感があり、見やすく感じました。

照明もそうですし、うちはエンジニアも腕が良いのでステージが映える配信にはできているんじゃないかと思います。でも、元々うちにいた照明の子がやっぱりこういう状況になって退職しちゃって…。今も照明は一人いるんですけど、まだ若いので、今は基本外注の照明さんにお願いしてます。

悩んで何もしないぐらいだったら、何かやらないと

--いくら対応が他の箱より早かったとはいえ、配信ライブという初の試みをやる上では多少戸惑いもあったかと思います。

うーん……そうですね。そのときはよく「悩んで何もしないぐらいだったら、何かやらないと」って言ってたんですよ。動き出さなくちゃいけない、と思って。あとはもう気持ち的にじっとしてられなかったんですよね。もやもやするというか。
これまでも色んな事件とか災害とかあったけど、今って人生で一番大変な時期であることは皆一緒なわけだし、だったらもうそんなグジグジすることなくやろう、と。

--無観客配信をする中で、最も強く感じる普段のライブとのギャップはなんですか。

つまんない。笑 あとはやっぱり寂しいです。僕は出演する側でもあるし、撮る側にしてみても「はい終わりー!!」っていう余韻みたいなのが通常のライブだったらあるじゃないですか?ライブが終わったあとここでお喋りして、バンドが出てきて「写真撮ってください」「握手してください」って会話が聞こえてきて……。でも配信では、そういう余韻みたいなのが全くない。「お疲れ!」シーン……みたいな。その空気感がすごく寂しいなと思います。

それにお客さん側からしてみても、配信を観た人は余計ライブに行きたくなるだろうな、とは思いますね。お客さんがライブハウスに来れないから始めたんですけど。

--今現在、営業についてはどのような形をとられているのでしょうか。

やっぱり平日だと20時までの営業は集客的になかなか厳しくて。配信チケットも今は売れなくなってるんで、人件費との兼ね合いもあって、店休日を設けながら要請内容をしっかり守って支援金をいただく、という形で今は動いていますね。

--なるほど。実際に吉祥寺Planet Kでは、どのような感染対策をしていますか?

TIGET(※)で予約を促させてもらってるんですけど、そうするとお客さんの個人情報がもらえるんですよ。どこに住んでるとか。最初は入場時に問診票に書いてもらってたんですけど、それをしてると入場が詰まって密になっちゃうので、予約を入れてもらったらそれをこっちでリスト化して、グループ毎に入場してもらってます。もちろん入場時には手の消毒と、転換中の換気も徹底していますよ。あとは柵から2m分離れて観るようにテープを引いたり、ガイドラインの中に‘‘肩が触れ合わない程度’’っていう記載があったので、本番5分前になったら場内アナウンスでお客さん同士がぶつからないように喚起を促しています。

※TIGET:会員登録制のオンラインチケット販売サービス。

--2mって結構ありますよね…。観客側としても少し演者との距離を感じてしまいそうです。

そうですよね。僕自身もラウドロックバンド(※アラウンドザ天竺)をやってるんですけど、普段はやっぱりお客さんを動かしまくるんですよ。だから本当に…今は閉じ込められてるというか、軟禁に近い状態ですね。笑 横には動かせないので、今は上に飛ばすようにしています。「唯一の遊び場」って呼んでるんですけど。笑

--確かに、上だったら無制限ですもんね。笑 田中さんは箱側でもあり演者側でもあるからこそ、余計板挟み状態というか、どっちつかずになってしまうのではとも思うのですが。

そうですね…。僕も箱側のプロフェッショナルにはなれていないんですよ。どうしてもバンド側の考えに立って箱を運営している節はあるので。他の演者にしてみても、ライブをやりたいってバンドもいれば、実家暮らしだったり、家庭があるって理由で出演を控えてるバンドもいて…。
その中で金銭的な支援をしてくれた人もいて、少なからずその人たちには恩返しをしたいなと思っているんですけど、それもなかなかどうやって返したらいいのかも分からなくて。まあこうして営業を続けていくことが一番の恩返しになるんじゃないか、とも思ったりしますけどね。

--おっしゃる通りだと思います。

結構やんや言う世の中じゃないですか、今のSNSって。だからちゃんと要請内容には従ってるし。その上で「(ライブハウスが営業しているのは)おかしいんじゃないか」っていう声もあるにはあったんですけど、僕の場合はオール無視してましたね。笑 箱側があからさまに無茶なことしてるんだったらそういう声は上がってもおかしくないけど、ちゃんと守った上で野次飛ばされても…と思って。‘‘人は人、僕は僕’’でやってますね。

「何かを変化させることに抵抗をもたない」という意識

--コロナ以降、そういった声がありながらも運営を続ける中で、最もご自身の中で引っかかっていることはなんでしょうか。

僕が一番引っかかっているのは「不要不急」にライブハウスが当てられるのが心外だな、と。俺らがやってることは不要不急じゃないぞ、とは今も思っています。もちろん、ある人にとっては不要不急だけど、ある人にとっては違いますから。政府とかもああやって言わなきゃいけない立場だと思うので、そこに対して「なんだよ!」って思ったりはしないです。けどまあ…やっぱりそうやって一括りにされるのは違うなと。

--私もライブを含めたエンタメ業界に救われてきた場面が何度もあるので、非常によく分かります。

僕自身もこの業界が好きで入ったし…。ぶっちゃけ音楽なんてなくても生きていけるじゃないですか?生命としては。でも僕はあくまで楽しく生きたいから。僕はあまり深く考えられないタイプなので、今後も楽しいことだけやってれば自然と人は集まってくるだろうと思ってますよ。

--最後に、コロナウイルスの流行から約一年が経過して、今改めてライブハウスを運営していく上で最も大切だと感じることについて教えてください。

継続より変化に対応すること。ひとつのことに固執して継続する世の中ではないな、と。何かを変化させることに抵抗をもたない、それに向かって進めていくという意識は常にありますね。今後もすぐ何かが変わると思うし。

--柔軟に対応していく姿勢。

最初にこう決めたからこうやらなきゃ、って意見もあると思うんですけど、「そのときはそうだったけど、もう変わってるんだから自分たちも変えよう」という考え方は大切だなと。一年前と今でも全く違うわけですから。ありとあらゆる変化に対応しなきゃいけない世の中になっているな、とは思いますね。

 

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吉祥寺Planet K

・所在地:〒180-0004 東京都武蔵野市吉祥寺本町1-8-10 八番館ビルB1
・公式HP:http://inter-planets.net/

◯吉祥寺Planet Kへの存続支援金は下記の方法から
【りそな銀行 吉祥寺支店(416)普通口座 1185352 オンエアー プラネットケイ】宛に直接振込
・PassMarketでの投げ銭受付
・Paypayを使った送金(ID[ lovek ]を指定、名前とメールアドレスを入力

 

musit編集部