【インタビュー】「いつかは最高と思える空間に満たされたい」──渡辺樹莉と2021年を振り返る
「自分自身、見つめ直す機会を多く得られた1年だったなと」。
時にアイドルとして、時にシンガーソングライターとして様々な表情を見せながらステージに立つアーティスト、渡辺樹莉。2021年は主な活躍の場を7人組アイドルグループ・ONE BY ONE(通称:ワンバイ)に移し、一層精力的な姿勢を見せていた彼女だったが、グループは同年12月31日をもって現体制での活動を終了した。
活動終了が発表された数日後、今後行く先も公表されていない中ではあるものの、彼女に率直な2021年の総括を行ってもらうべくインタビューを実施した。musitでは今回が3回目の取材となる。
【インタビュー/前編】ルルネージュ ・渡辺樹莉が抱く「弱さの中にある強さ」
【インタビュー/後編】ルルネージュ・渡辺樹莉を取り巻く人、物、空間
【インタビュー】元ルルネージュ ・渡辺樹莉、グループと共に夢を追いかけた3年間を語る
終始屈託のない表情で快活に話す姿が印象的な彼女。しかしそんな渡辺にとっても、2021年は思い悩む場面も多々あったという。今回は、そんなある種特別な年となった1年の振り返りと、今後自身が新たに目指す理想像、また新年の抱負について詳しく話を聞いた。
* * *

取材/文=翳目
写真=本人提供
飲み込んだ言葉も時として口に出すことが大切なんだな、って
──樹莉さんとはちょうど1年振りのインタビューになりますね。活躍の場を移してかなり多忙だったような印象を受けますが、この1年間はどのように過ごしていましたか?
渡辺:なんだろうな…。確かに、暇な時間はなかったと思います。時期的にライブが多いわけではないにしても、考えることが多くて…人生で1番脳ミソ使ったかも。笑
──具体的にどんなことを考えてたんですか…?
渡辺:私は芸能活動を始めて今年で5年目になるんですけど、これまでは自分が本当にやりたいことに近付くためのステップを踏む段階、として進めていて。だけどこの1年で強く思ったのは、(本当にやりたいことの)ゾーンに近付いたとしてもまだなり切れてない自分がいて、その距離をすごく自分の中では気にしてるんだなと。今までの活動で徐々にその距離を縮めてきたことは確かではあるけど、今現在としてはまだそこへの距離が気になってて…前に進むだけじゃない1年でしたね。
──活動の場を移したからこそ現実直視できるようになった、っていう感覚?
渡辺:そうですね。ONE BY ONEが現体制終了になって、その間自分自身も見つめ直す機会として当てていて、改めてこの5年間を振り返った時に「自分が何を、どういうことを今後やっていきたいのか」っていうのを深く考えてたんです。私の悩みは本当に尽きないなって思うし…うん。誰といても、どこにいても悩みって尽きない、むしろ増えていく一方なんですよ。でもやっぱそういうものなんだろうな、とは思うんですけど。
──置かれている環境が大きく変わったからこそ、の部分もあると思います。色んな悩みが尽きない状況だった中で、どうしても今現時点では解決できそうにないかもな、と感じたものはありますか?
渡辺:もっと全部に対して素直になること。別に自分が天邪鬼ってわけじゃないんですけど。笑 結構考えすぎちゃうから。「今自分が言うべきではないな」とか「これを言ったら相手にこう思われるからやめておこう」っていう思考は小さい頃から持ってて、それは時に人として大事な要素ではあるけど、チームとして今後上に向かっていくためにはそういう壁も壊していかないと意思の共有ができないんだな…って思うようになりました。

──なるほど…。でもそれぐらい自身の状況を鑑みながら見つめ直せた時間だったんですね。
渡辺:そうですね。ONE BY ONEはメンバーそれぞれが全く違うキャラクターで。バックグラウンドとか、育ってきた環境も違うし。本当にこのチームに加入してなければ関わってたのかも分からないぐらい皆個性豊かで、もちろん性格も違って…でもだからこそストレートに言ってくれる子もいるし、反対に私と同じでタイミングを見計らいながら喋るタイプの子もいるし。メンバーからも「樹莉って自分が言おうと思ったことも一旦飲み込んで、後々必要なことだけ伝えるタイプだよね」って言われたりするんですよ。でも、その「一旦飲み込んだ言葉」も自分にとっては「言う」ことが必要だって思う部分が大きかったというか。やっぱり捨てきれない部分ってどうしてもあるんだなって。それはほかの何かで補えるものでもなくて。人と一緒に何かを作るにあたって、自分が必要だと思うことは周りに伝えるべきだと感じていますね。
グループとしてステージに立つことは「武器をたくさん持った状態」だと思っていて。反対に、ソロは自分の声と身体と作った歌、ぐらいしか持って行くものがないんですね。ワンバイとしてステージに立つことは、ほかのメンバーのステージ上での構え方も間近に見ることができて、強い気持ちで戦えたんです。自分に足りない部分も補ってくれているような感覚にもなれたし。「7人のONE BY ONE」として見てもらえたことがすごく嬉しかったな、と思います。

最初は「変に浮かなければいいな」と思ってた
──ONE BY ONEの一員として活動を始めてから、グループ自体が持つブランドみたいなものから受けるプレッシャーも少なからずあったように思います。そのあたりはどうでしたか?
渡辺:ほかのメンバーと比べて落ち込む、みたいなことはなかったんですけど…というか「そうじゃないな」って言い聞かせていて。「ONE BY ONE」っていう1つのブランドを背負ってることを考えた時に、もっと自分も皆の力になれるようにしなきゃ! とは思いましたね。デビューしたての頃は特にその気持ちが強くて。馴染めたら良いなというか、変に浮かなければいいなと。笑
──メンバーとのコミュニケーションで苦労したりとか、そういう面では特に悩みませんでしたか?
渡辺:デビューから8ヶ月の間で色んな話し合いもしたし、喧嘩まではいかなくとも意見の相違も時にはあったりして。本当に8ヶ月とは思えないほどの出来事がたくさんあって、でも乗り越えられたからこそ笑いも会話も絶えない環境にいられて。徐々に相手のことを知ることができて嬉しかったです。

──この1年、樹莉さんのファンの方はどんな風に見てくれていた印象ですか?
渡辺:本当に変わらず期待と希望を持って話してくれるし、見てくれるし。ONE BY ONEに加入してから知ってくれた人、それ以前から知ってくれている人、どこから見てくれてるかっていうのはそれぞれ違うと思うんですけど、私に対する熱量の高さっていうのは変わらなくて。やっぱり「樹莉ちゃんがどんな場所にいても応援するし」って言ってくれる声が多くて…。好きなことをしなさいって。
──お母さんみたいですね。
渡辺:そうそう。「あんたが好きなことしなさい!」みたいな。笑 でもそれぐらい愛を持って伝えてくれるから、「まだ挑戦していいのかな」って思えるし。本当に…本当に、存在が大きすぎますよね。
フィジカルとメンタル、それぞれで成長したと思える部分
──ソロ活動の話が先ほど出ましたが、この1年間は曲作りも封印してたんですか?
渡辺:いえ、曲作りは続けてましたね。でもペンを握れなかった時期もあって。
──それはどうしてですか?
渡辺:考えることが多くなってきた時に、こんなに感情が迷子な状態で曲を書いてはいけないってなってしまって。私は基本的に自分が落ち込んだら曲作りを始めるんですよ。作ってる間にだんだん前向きになっていって、私はこうならなきゃ! っていう気持ちで曲が生まれることが多くて。でも、自分の中で答えが出てないとペンも握れないし…。だけどそれを乗り越えて久し振りに歌詞を書き出してみたら、やっぱり止まらなくて。手が。自分が思ってることってこんなにあったんだ!? みたいな。
──それも壁を超える中で生まれた、樹莉さん自身の成長と言える面ですよね。この1年間、パフォーマンスの面で成長を感じる部分はありましたか?
渡辺:前までは歌を褒めてもらうこと多かったんですけど、この1年間はダンスを褒めていただけることがすごく増えたんです。それは講師の方のお陰でもあり、メンバーのお陰でもあるんですけど…ファンの方にも「歌とダンスで1セット」の印象を持ってもらえるようになりました。自分的にはまだまだなんですけどね。

──レッスンが前よりハードになったとか…?
渡辺:いや、というよりかは内容がこれまでとは違くて。踊ったことのないジャンルを踊る機会が増えたので、自分の得意、不得意が明確に把握できるようになったんですよ。自分のダンスの癖って今までは気づかなかったけど、ほかのメンバーと比べてみて気づくようになったり。
内面的な部分だと…何だろうな。前までは流されやすいというか、「確かにそうだよね、でも私はこう思う」ってはっきり返すのがあまり得意じゃなかったんです。でもこの1年間で色んな人と話す中で「自分はこう思う、こうなりたい」っていうのが分かるようになったので、そういう意味でもこの1年は自分自身を深く見つめ直す、知る機会になったなと思います。
──…めちゃくちゃ成長してるじゃないですか。笑 前回のインタビューでは「今よりも上を目指すこと」を目標に掲げていましたが、この1年でその目標に対して100点中何点ぐらいコミットできたと思いますか?
渡辺:…20点、かなあ…。
──低い…!
渡辺:誰かから言わせれば「そんなことないよ!」になるのかもしれないけど…。でもこれで逆に点数高かったら現状満足っていうことになるじゃないですか。この20点は私がまた新しい目標を掲げて進むための数字というか。もちろんこの点数をとるまでも簡単じゃなかったし、周囲の人の力も借りた分を足すならもっと高いんですけど、自分自身を振り返って答えを出すなら20点、ですね。
──なるほど。では次に、今年1年間の活動を通して初めて気がついた「自分の弱点」を教えてください。
渡辺:はっきり怒ること。怒ることができないなって。
──樹莉さんはメンバーに対して怒らない方?
渡辺:怒ってないですね…この1年間怒らなかったと思う。私は「ダメかもよ…? それ…?」みたいなタイプなんだなって気がついて。笑 顔には出るみたいなんですけどね。1番面倒臭いタイプ。笑

──反対に泣くことについてはどうでした?
渡辺:今年はめちゃくちゃ泣きました。何泣きなんだろう? もう気づいたら流れてる。笑 気づいたらチームのこと考えたりとかしてて。でも何も解決しないままでは終わらせたくなくて、どうやったら抜け出せるかなっていうのをずっと考えてました。
乗り越えて強くなった自分を今後も見せていきたい
──この先の理想像について聞かせてください。
渡辺:表現者としての活動は辞めたくないですね。辞めようと思えば色んなことを理由にできるんですけど、今は全然それらが自分にとって必要なことだとは思っていなくて。今はまだ現状に満足できてないし、これから先も多くの人を救える存在でいたい。それはライブだったり曲だったり、とにかく活動を続けることで叶えていきたいなと思います。
でも反面で、現状に満足できる日なんて自分に来るのかな? とも思っていて。笑 だけどまあ…来なくていいのかもしれないです。
──追い続けられるものがある、っていうことだから?
渡辺:うん、うん。そうですね。ファンの人にはもちろん満足してもらいたいし、いつかは最高だって思える空間に満たされたいですけど。そこを目指してまだまだ頑張りますって感じです。

ありがたいのが、特典会とかでファンの人に「今後どうするの?」って聞かれた時に、とりあえずまだ諦めないってことを伝えるんですよ。そしたら「樹莉は本当に強いね」って言ってくれて。そういう存在ではいたいんですよね、やっぱり。自分が悩み抜いて出した答えを皆が知った時に、プラスの感情になってほしいと思うし、乗り越えてちゃんと強くなった自分をちゃんと見せていかなきゃなってすごく思うんですよ。そこは今後も変えてはいけないなって。
ファンの人に「このまま終わったらイヤでしょ?」って冗談半分で言ったら、「当たり前じゃん、そんな人生つまんないよ」って言われて…。改めて自分は人の人生を動かしてるんだなって感じたし、人生の面白くなるうちの1つの要素を私にくれてるんだなってすごく思って。だったらもっと面白くさせたいなって思います。
──まだまだ通過点ですからね。
渡辺:そうです、でもこの1年間で踏んだステップは絶対に間違いではないんですよ。冷静に考えても来るべくして来た場所で。出会った人含め、自分がこの1年で感じたこともそうだったし、それがなかったら生まれてこなかった曲もあるし。だからこそ、今後はもっと飛躍していきたいですね。
──期待してます。では最後に、年始1発目のインタビューらしく…新年の抱負を教えてください。
渡辺:年女なんです! あんまり関係ないか…。笑ここを経験したからこそ見せられる全てがあるといいなって。目指せ、来年の自己評価90点!笑
──長い道のりですから、残りの10点はまた翌年ということですね。ではまた1年後、答え合わせしましょうか!
渡辺:しましょう! よろしくお願いします!
* * *
渡辺樹莉生誕祭『Strawberry Night』

2022/01/19
・会場:新宿MARZ
・op / st:18:10 / 18:40
・ゲスト:戸田ころね
※チケットは下記リンクから
・観覧チケット:https://t.livepocket.jp/e/8snnj
・配信チケット:https://twitcasting.tv/c:marz1210/shopcart/127662
PROFILE
渡辺樹莉

・Twitter:@watanabekiri
・Instagram:@watanabe.kiri
星野

