【インタビュー】ジャンルを越えた架け橋に──岐阜のレコードショップ・CATNOISEが提示する「ヤバかわいさ」

【インタビュー】ジャンルを越えた架け橋に──岐阜のレコードショップ・CATNOISEが提示する「ヤバかわいさ」

名古屋駅から約30分、JR東海道本線で岐阜駅へ。駅前から名鉄岐阜駅を通り過ぎて徒歩15分ちょっと。シェアスペース「カナゾノコレクティブ」の最奥に、その店はある。

「CATNOISE(キャットノイズ)」は、2021年12月にオープンしたレコードショップだ。岐阜市を拠点に活動する音楽家/コラージュ作家、そしてノイズ/エクスペリメンタル系のリリースを中心とした音楽レーベル《obakekoubou》の運営など、多岐にわたって活動するhotaruが店主を務めている。

2019年リリースの『長良川のエレジー』において、エクスペリメンタル作品らしからぬローカルな叙情性をパッケージングしたりと、独創的な表現活動を行ってきたhotaru。彼が「人生を模索する中でスタートした」と語るレコードショップの目指す方向性とは。

インタビュー/文/写真=仲川ドイツ
編集=對馬拓

ドープさよりふらっと入りやすい店を目指した

「カナゾノコレクティブ」看板

オーガニック食料品店やセレクトショップを通り抜け、かすかに漂ってくる幻想的な音に誘われて辿り着いたCATNOISE。店頭に立ち、ふと右に目をやると、猫コーナー?

猫以外にオバケのQ太郎の姿も

hotaru:猫好きやからね。自分では飼ってなくて、野良と遊んだりだけど。自分で飼うと先に死んだ時に悲しいからね。

SNSでも垣間見えるhotaruの優しい人柄が表れている。猫コーナーには猫モチーフの雑貨や猫関連書籍だけでなく、『ビクター 野鳥の声 vol.2』など教材系やほっこりするレコード、写真集や美術関連の本も並んでいる。探究心の強いhotaruならではの品揃えと言えるだろう。個人的には水生昆虫図鑑がおすすめだ。

そして、棚に並ぶ現代アートのようなレコードやカセットなどのジャケット。漆喰塗りの壁と色とりどりのタイル、展示されたコラージュ作品。レゴブロックのようにカラフルなレコードボックス──。

ここにもオバQらしきイラストが

ノイズ/エクスペリメンタルと言うと、とっつきにくい印象を持つ方もいるかもしれないが、まるで音楽が好きな親戚のお兄さんの部屋に遊びに行ったような、どこかノスタルジックな温かみがCATNOISEにはある。

hotaru:僕も専門的な店は好きだけど、自分がやるならドープな感じより、誰でもフラッと入りやすい店の方が良いかなと。僕はポップスもハードコアも好きだし、ノイズやエクスペリメンタルなんかの非楽音みたいなのも好きだから、店として(ジャンルを超えた)架け橋になれたら良いな、と思うよね。自分はそういう(非楽音のような)音楽をやってるけど、岐阜ではまだまだ好きな人が少ないから。「ちょっと間違えた!」みたいな感じで帰っていく人もいるけど。笑

とはいえ、CATNOISEでの出会いをきっかけにコアな音楽の世界に足を踏み入れる人も少なからずいることだろう。オーディオ入門セットも販売しているのでレコード初心者にも優しい。

内装で表現されたDIY精神

続いて、CATNOISE開店のきっかけについて尋ねてみた。レーベル《obakekoubou》のスタートから10数年、hotaruにとって自身のショップを持つことは次のステップとして昔からの夢だったのだろうか?

hotaru:いや全然、そもそもレコードショップをやろうとは考えたことはなくて。2021年8月に個展《嫉妬》をslow room(同じ岐阜市内のカフェ&バー、レコードショップ)でやっている時に、slow roomの店長から「レコード屋やってみいひん?」って誘われたんだよね。その当時は介護の仕事をやってたんだけど、ちょうど退職を考えてたタイミングで。本当は仕事を辞めて、しばらくはのんびりとやりたいことをやろうと思ってたんだけど、(経営や仕入れ方法など)何も分からないままレコードショップをやる話がスタートして。

hotaru氏

hotaru:最初、僕はどこかに雇われるのかなって思ってたんだけど、話し合いの時に「雇われるのと自分でやるの、どっちが良い?」って聞かれて、とっさに「自分でやる」って言っちゃったんだよね。(営業を)辞めていったレコードショップも知ってるし、お店を続けていくのが難しいことは肌で感じてたから、言ったあとに怖くなっちゃったんだけど、やるからには続けたいじゃない? それに、自分にはミュージシャンとして活動してきたっていう強みがあるから、そこを活かしていけば面白くなるんじゃないかな、と思ったんだよね。

音源のジャケットや装丁まで自身で手掛けるDIY精神に溢れた彼の音楽活動と同様に、店の内装もセルフリノベーションしたという。

hotaru:電気工事以外は自分でやったよ。お店をやることが決まった頃はまだ前職を辞めてなかったから、昼間の仕事が終わった後に店に来て、ボロボロの壁紙を剥がしてシーラーを塗って。一旦、白いペンキを塗ったんだけどイメージしてたのと違ってたから、そこから漆喰を塗って、床を剥がして。そんな感じでやっとったら11月に予定してたオープンに間に合わなくて12月になった。笑

アーティストとしてのhotaru

店内に飾られたhotaru氏のコラージュ作品

hotaru個人の活動についても聞いてみた。コラージュ作家としての近年の作風は、静寂を感じさせるシンプルでプリミティブな印象を受ける。以前はもっと鮮やかでパンキッシュな印象だったが、どのような変化があったのか?

hotaru:他と差別化したいっていう思いだよね。コラージュは誰でもできるし、誰でも簡単に格好良くなるパターンがあって、それを組み合わせるとそれっぽく見える。だからそういう作品と一緒にされたくない。僕のコラージュで重視してるのはバランスなんですよ。それと「余白を活かしたい」って考えがある。僕、北園克衛(三重県出身の詩人/写真家/デザイナー)が好きなんですよ。

北園克衛全写真集

hotaru:北園克衛はお兄ちゃんに教えてもらったんだけど、ものすごく影響を受けて。この人と山下清が大好き。だから貼り絵とコラージュの中間を狙ってやってます。それと自分の場合、どこかの時代の遺跡を見た時だったり、人間を見た時に「あっ、このパターンだな」って思い付くことがあって。これは言葉にしづらいんだけどね。……プリミティブ。プリミティブな感じは大好きだね。

余白、バランス、プリミティブ──時にフィールド・レコーディングした音素材を取り入れた彼の音楽作品も、そういったキーワードが当てはまるのかもしれない。どこかの街で録られた音素材は、元々その音が存在していた背景=余白を想像させるし、フィールド・レコーディングは意図が介在しないプリミティブな音である。そして、それらを素材として料理するバランス感覚も。

hotaru:聴く人の時間軸を狂わせたいんですよ。フィールド・レコーディングの音もそのまま使うんじゃなくて、一旦カセットにダビングして、テープの再生スピードを一番遅くしてみたりとか、色々試すんだよね。テープレコーダーを3台使ってミックスしつつ、自分の音に足してみたり。

更なる「ヤバい」×「かわいい」魅力を

本人曰く、1年前にはレコードショップを経営することさえ想像していなかったとのことだが、今後のショップの展望は?

hotaru:すごくマニアックなものを置いている店ではないからまだまだ弱い部分もあるけど、自分がライブで繋がってきた友達の音源とか、どんどん置いていきたい。中古に関しても自分が好きなものをもっと仕入れていきたいと思ってるよ。

2022年は《obakekoubou》としても楽しみなリリースが控えており、まだ詳細は言えないがコラージュ作家としてもちょっと驚きのコラボがあるらしい。コアな音楽ファンのみならず、アルコールマニアの貴方も是非hotaruの活動をチェックしてもらいたい。

そして「マニアックではない」と本人は謙遜するが、「かわいらしさ」と「ヤバさ」が独特の感性で同居したCATNOISEは十分に唯一無二の魅力を持ったレコードショップであり、インスタレーションなのだと、私は思う。

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CATNOISE

所在地:岐阜県岐阜市金園町3丁目22
営業時間:土・日・月 12:00〜19:00

・Twitter:@catnoiserec
・Instagram:@catnoiserecaudio

※「モジャ」より「CATNOISE」へ店名を変更済。看板は現在準備中とのこと。

obakekoubou

・オンラインショップ:https://obakekoubou.buyshop.jp
・Twitter:@obakekoubou

仲川ドイツ