【musitTV 出演アーティスト紹介】Vol.3:Ellen Ripley hypersleep / Jan flu / Palastleben
各地のライブハウスを巡りながら、様々なアーティストによる演奏とミニトークをお届けする配信番組『musitTV』。8月下旬に収録が行われたVol.3は、Ellen Ripley hypersleep/Jan flu/Palastlebenの3組がライブハウス・池袋手刀(チョップ)へ一同に介し各2曲を披露。
ここでは、事前に実施した各出演者へのメールインタビューを元に出演者自身のルーツや音楽性に迫るほか、映像の見所を解説する。
Ellen Ripley hypersleep

〈L→R〉
Shuntaro Nakamura(Ba.)
Yusei Tsuruta(Gt. Syn.)
nk(Vo. Gt.)
Shuichi Ohata(Dr. Cho.)
文=對馬拓
1組目は2022年始動の4人組、Ellen Ripley hypersleep(エレン・リプリー・ハイパースリープ)。SFファンなら途端に色めき立つようなバンド名はもちろん、映画『エイリアン』シリーズのヒロイン、エレン・リプリーが由来(個人的には2が好きだが、陰鬱な3も嫌いじゃない)。sugardropのドラマーでもあるnk(Vo. Gt.)を中心に、17歳とベルリンの壁のYusei Tsuruta(Gt. Syn.)のほか、nkも在籍し、9月7日に惜しくも解散を宣言したalicetalesのSuntaro Nakamura(Ba.)、I’d tap thatのShuichi Ohata(Dr. Cho.)が集結した。
バンド結成のきっかけはnkのデモ音源。詳しい経緯はnkのソロ・インタビューも参照されたいが、10年以上前から録りためていた宅録の音源が、まさに長期間のハイパースリープから目覚め、晴れて日の目を見ることとなった。
撮影時に改めて感じたのだが、バンドのコンセプトとして「ポジティブな懐古主義」を掲げている通り、80年代のニューウェイヴやネオサイケ、ポストパンクなどの影響を、衒いもなく表現していく様がとても清々しかった。さらに、収録時点(8月末)では出演したライブはたった一本だったにも関わらず、どこか既に貫禄を纏っており、メンバーそれぞれが積み上げてきたものがバンド全体に上手く作用していることが感じられた。映像を観れば、その意味がお分かりいただけるのではないだろうか。
なお、番組では今年2月にリリースした1st EP『Ripley』より、「walt」と「sanatorium」を披露。異なるテイストの2曲で、まずはクールなポップ・ソングを鳴らす彼らの魅力に気付いてほしい。
【メールインタビュー】
Q1.Ellen Ripley hypersleep(以下ERh)はそれぞれ別のバンドに所属するメンバーが集まって結成されていますが、これまでそれぞれが培った経験や感覚は、ERhの活動において、いかに作用していると感じますか? あるいは自身のキャリアにおけるERhは、どのような位置付けにあるバンドでしょうか?
nk:自分のキャリア的に見たら、曲調や演奏方法的に自身のダークサイドな部分の表現と捉えられるかもしれませんが、実は自身の一番根幹となるポップな部分のアウトプットをしたがっているんです、ということを、事実として頭の片隅でイメージしてもらえたら嬉しいです。
Yusei Tsuruta:バンド全体のサウンドデザインを考えるのが得意なので、このバンドでも積極的に意見するようにしています。キャリアについての位置付けは考えていないです。
Shuntaro Nakamura:プレイヤーとしての旨みを残しつつ、どうアプローチするのがバンドにとってプラスになるかを意識してきたので、その感覚は活きていると感じます。ERhはその中でもやってみたかったことを積極的に試せるバンドだと思っています。
Shuichi Ohata:ドラムというパート柄、これまで様々な音楽ジャンルのバンドに関わってきたので、良くも悪くもちょうど良い感をプレイに出せているのかなと思っています。あとは、バンドイメージに沿ってメンバーがプレイしやすい雰囲気を心掛けています。
Q2.バンド名は映画『エイリアン』の登場人物(2作目からは主人公)であるエレン・リプリーが由来で、どこかバンドを象徴する存在/イメージとなっている印象です。皆さん自身の音楽人生を象徴するようなアーティスト/音楽作品は何でしょうか?
nk:すみません、人生を象徴するくらい好きな音楽が多過ぎて決められません。
Shuntaro Nakamura:現時点で音楽人生の象徴を決めるのは難しいですが、強いていえば『L’Arc~en~Ciel/1999 GRAND CROSS CONCLUSION』(ライブ映像作品)です。このVHSを見てベースをやりたいと思いました。
Shuichi Ohata:雑食なので、これだ!というモノはないですが、ドラムを始めて初めてバンドでコピーしたのがELLEGARDENで、今でも聴いて初心に戻ったりしてます。
Q3.ERhはコンセプトとして「ポジティブな懐古主義」を掲げていますが、皆さん自身における懐古主義的な側面があれば教えてください。
nk:音楽以外なら洋服と文学ですかね。なんだかんだ90年代っぽい服装好きです。リアルな90年代ではないんだと思いますが。小説とか詩集に関しては古いものばかり読んで、新書で話題のベストセラーとか、新しいモノにはあまり進んで手をつけられません。
Yusei Tsuruta:スニーカーは無意識に80~90年代の復刻モデルばかり買っています。またスマートフォンの見た目がどれも同じだと感じていて、所謂ガラケーを選んでいる時は楽しかったなと思っています。
Shuntaro Nakamura:94~99年くらいのアニメのOPや劇場版の作画の雰囲気が好きです。
Q4.今年2月には初音源となる『RIPLEY e.p.』がリリースされました。実際に完成してみて、手応えはどう感じていますか? また、このEPを踏まえて次なるバンドの展望をお聞きしたいです。
nk:バンドのこういった音楽性と自分のヴォーカリゼーション、共にどこまで受け入れられるか不安ではあったのですが、リリースとライブを行った結果、周りからは割と良い評価を頂けているようで、そこは手応えと安心を感じています。次はまとまった作品にはせず、シングルを何ヶ月か連続で切りたいなと思っております。曲は揃ってきてるので、もう少し待っててください。
Q5.『musitTV』は各地のライブハウスを巡りながら展開していく音楽番組ですが、これまで音楽人生を歩んできた中で、特に印象深く忘れられないライブを、その際のエピソードを含めて教えてください。観客としてでも、あるいはプレイヤーとしてでも構いません。
nk:何年か前にあった、Rideの再結成後初の来日公演。すごく感動したのは間違いないのですが、東京公演で「Like a Daydream」やらなかったのが最低でした。未だに恨んでます。
Yusei Tsuruta:昔の『BAYCAMP』で見た髭(HiGE)のライブです。オールナイトイベントでトリだったので朝焼けの時間帯ということに加え、会場が工業地帯の公園だったのでライブ中に船が見えるなど特別な体験が多かったです。
Shuntaro Nakamura:『FUJI ROCK FESTIVAL’13』のThe Cureのライブです。モッシュピットの結構前の方にいたのですが、後ろからぐいぐい人を押しのけて私の前まで来たのがチバユウスケさんでした。「Just Like Heaven」を演り始めた瞬間興奮しすぎて立入禁止の柵を超えてしまい、ガタイのいいガードマンに止められたのも記憶に残っています。
Shuichi Ohata:数年前の『SUMMER SONIC』で観たUNDERWORLDです。いつもライブは後ろの方で静かに観るタイプなのですが、このライブはステージングも音も雰囲気も全てが最高で、友達と踊り狂いました。その日に限って卸たてのスニーカーを履いていたので、足の指が内出血して苦しみながら帰路に着いたのもいい思い出です。
Q6.運営母体の『musit』は音楽と様々なカルチャーを掛け合わせながら幅広い層へのリーチを目指すメディアですが、音楽以外で最もハマっているカルチャー(または趣味)について具体的に教えてください。
nk:ポケカとWeb漫画。ヤニすう(『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』)って漫画が良いので読んでください。
Yusei Tsuruta:『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』、ポケカ。
Shuntaro Nakamura:映画はずっと好きですね。洋ホラー、特にB級と評されるホラーが好きですが、最新のものは全く追えていません。あとはYouTubeでかわいい犬の動画を観るのにハマっています。
Shuichi Ohata:ゴルフとサウナとゲーム。特にサウナは生きがいになりつつあります。現時点では佐賀県にある御船山楽園ホテルの「らかんの湯」がマイベストサウナです。
Jan flu

〈L→R〉
P.Necobayashi(Gt. Vo.)
Kubo(Gt.)
Junya(Ba.)
Takuro(Dr.)
文=翳目
4人組サーフポップ・バンド、Jan flu。彼らが奏でるのはトロピカルな親しみやすいインディー・ポップ・ソングが主体だ。
今回は「動物愛」をモットーに制作された2ndアルバム『Discoveri ch.』からリードトラック「Doggg runnn」、またKubo(Gt.)が最も好きな動物(その理由は動画内で明らかに…!)がタイトルに冠された「Beaver creek」の2曲を披露。日曜の野原で犬が悠々と駆けるように躍動的な楽曲群は、リスナーへ味わったことのない独特の高揚感を分け与えてくれる。
Beach Fossils直系の美しい憧憬が宿るドリーミーな質感と都会的でコミカルなインディー・ロックの良いとこ取りはもはや閉口するか唸るしかないといった所だが、動画内では是非個々のプレイヤーとしての力量にも注目されたい。収録開始時から「楽しくやろう!」とハイセンスなグルーヴを生み出し、「これ以上やっても良くはならないから」と誇らしく満足気に一発撮りで撮影を終えていたのが印象的だった(また、「Beaver creek」では直前にアウトロをこれまでにない轟音に…と即興の作戦会議も。映像越しでは伝わりきらないのが残念)。
P.Nekobayashi(Gt. Vo.)がマイク越しに晴れやかな表情で言い放つ「ARIGATO〜」に至るまで、良い意味で「いつも通りの」終始平和的で幸福度の高いステージを本企画でも展開してくれている。今年も厳しい暑さが続いた。日本で過ごす極上のビーチスポットは今、ここしかない。
【メールインタビュー】
Q1.甘美でドリーミーな雰囲気を持ちつつ爽やかなサーフ・ポップの印象もあり、聴き手によって解釈が変わる音楽性が魅力的です。Jan fluはそれぞれにどのような影響を受けながら独自のサウンドを確立させていったバンドなのでしょうか?
P.Necobayashi: 僕が始めた当初は、分かりやすくCaptured Tracksに所属のバンドから影響を受け、楽曲に反映していました。具体的に、Beach FossilsやDIIVというバンドですね。しかしメンバーと曲を作っていく中で、(1st EPの)『Sports』以後はどのバンドから影響を受けたというものは薄くなっていき、Janらしさというものができ始めました。少しのコミカルさ、キッチュでポップな、単音ギター・リフがメインと、ゴリゴリベースと、刻みの綺麗なビートと、変なヴォーカルって感じですかね。
Q2.DIY精神を感じるユーモアに満ちたMVも魅力的です。特に「KARATE」はパンジーの精霊(?)が孤独心から街を彷徨う姿にストーリー性を感じると共に、なぜこのような構成に…とクエスチョンも抱きます。このようなリスナーを惹きつけるユニークなMVを作るにあたって、心掛けていることはありますか?
P.Necobayashi: 元も子もないですが、監督たちがそう着色してくれて僕らは嬉しいんです。主に最初から撮ってくれているマスダレンゾ君と、Takuroの友人の中田無二ちゃん。心掛けていることとすれば、ユニークさこそ僕らのインパクトであり強みだと思って、作っていくという所ですかね。
Kubo:実際の所監督をしてくれている人たちのアイディアが面白くてそれがそのまま表現されているところが大きいのですが、そういう表現をできる方と一緒に制作ができているのはとてもありがたいことですよね。心掛けていることは特にありませんが、ユニークさを出していくことにストップはかけないようにしています。
Takuro: Jan fluってもともとは架空のソロ・アーティストっていう設定で始まったプロジェクトで、アートワークに一貫して出てくる髭メガネのモジャモジャ白人男性がそうなんですけど、この人ならどんな作品を作るだろうと、想像して考えていくことが多いです。だから自分たちにはないユーモアも盛り込んでいけるのかもしれません。
Q3.これまでリリースした楽曲のタイトルにはどれも固有名詞が含まれていますが、一見歌詞とは関連性のないもののように思えます。Jan fluの楽曲において「タイトル」と「歌詞」、それぞれの位置付けを教えてください。
P.Necobayashi: なるほど、固有名詞。意識してなかったですが、結果的にそうなっていますね。「タイトル」については、アルバム/EP単位でのコンセプトを固めるためのものですね。コンセプト(これはアルバム/EPタイトルにも表れています)の要素として、スポーツ名や動物名があります。「歌詞」は、その楽曲でイメージする音素や単語を使っています。はっきりいうと、「タイトル」「歌詞」「楽曲」は統一されてません。統一するために僕らはコンセプトを考えていて、どんなコンセプトなら皆に興味持ってもらえたり、スッと入ってくるかな……と。
Q1.『musitTV』は各地のライブハウスを巡りながら展開していく音楽番組ですが、これまで音楽人生を歩んできた中で、特に印象深く忘れられないライブを、その際のエピソードを含めて教えてください。観客としてでも、あるいはプレイヤーとしてでも構いません。
Kubo:プレイヤーとしてですが、2020年にJan fluが1st EP『Sports』をリリースした際に下北沢THREEで開催した配信ライブが印象的でした。コロナ禍ということもあり無観客で配信のみだったのですが、グリーンバックを持ち込んで合成しながら配信をして、配信独自の面白さを出せたのではないかなと、印象に残ってます。
P.Necobayashi:一番ってなるとKuboと一緒ですね。緊張したライブとか逆に忘れられないイベントはほかにありますが。Jan以外では、学生時代に演奏したthe telephonesのコピーバンドも印象深いですかね。楽しく演奏するのは、ここから始まってるような…。
Junya:『Sports』をリリースした時の配信ライブは普段と違ったこともあって緊張したし、楽しくもあったのでよく覚えてます。ほかだと大学時代にコピーしたSonic Youthですかね。ギター3人が爆音の中で、極悪かつ抜けるベースの音が出せたと思うので個人的には満足できたライブです。
Takuro: 高校生の時、初めて見たマキシマム・ザ・ホルモンのライブです。自分のルーツはホルモンで音楽的には今やってることは全く違うんですが、反骨精神をエンタメに昇華するクリエイティビティのスピリットは今でも大きく影響を受けてると思います。
Q6.運営母体の『musit』は音楽と様々なカルチャーを掛け合わせながら幅広い層へのリーチを目指すメディアですが、音楽以外で最もハマっているカルチャー(または趣味)について具体的に教えてください。
Kubo:自分は音楽をやりすぎてて音楽以外にコレと言った趣味はないんですが、釣りが好きでたまにマス釣りに行きます。コロナ禍になってしまったり忙しかったりで全然行けてないですが気分転換にはとても良いです。
P.Necobayashi:ジムとサウナですかね? 趣味なのか分かりません。日課になりつつありますね。ダイエットに成功したので、次はマッチョを目指して。
Junya:サッカーですかね。小さい頃から浦和レッズを応援してます。高校生までサッカーをやっていたこともあってなのか、逆にサッカーをあまり観たくなかったのですが、最近になってまた観たいと思うようになりました。近々観に行こうかなと。そしてプレイヤーとしてもサッカーができたらいいなと思ってます。運動不足なので。
Takuro: お笑いとF1を観ることです。コロナ禍で生活が一変した際にハマって、F1に関しては今年の日本グランプリ観に行くほどです。お笑いはいくらでも話せる人がいますが、F1はなかなか周りに好きな人がいないので苦しいです。
Q3.8月3日には2枚目となるフル・アルバムをリリースしました。今後の活動目標やJan fluとして今後表現していきたいことを教えてください。
Kubo:野外でライブがしたいです。変なギターの音出せるように頑張りたいです。
P.Necobayashi:Janならではのアプローチが増えました。Jan-ism、「ジャニズム」を確立したいです。
Junya:個人的には今まで勢い任せに演奏していた所が多かったのですが、歳を重ねたこともあり、大人っぽいニュアンスも模索していけたらと思ってます。
Takuro: 来年こそフジロック出たいです。
Palastleben

〈L→R〉
竹内理恵(Sax.)
Shinpei Mörishige(Gt.)
マリアンヌ東雲(Vo. Syn.)
Shintaro(Dr.)
ハセガワスズナ(Ba.)
文=對馬拓
優雅で自堕落な5人衆、Palastleben(パラストレーベン)。ドイツ語で「宮殿の暮らし」を意味するバンド名を冠し、ステージドリンクとしてワインを持ち込むなど、何やら不敵な輝きを放つ奴らだ。今年4月に初のシングル「Monaural / Danse.Karma」をリリースし、いよいよ活動が本格化。7月には第2弾シングル「Neon Escape / New Order」をドロップ、その暮らしぶりが明るみになりつつある。
Palastlebenが奏でるのは、メンバー各々が持つ音楽要素を昇華させ、ニューウェイヴ、ポストパンク、オルタナティヴ・ロックを混ぜ合わせた、レトロ・フューチャーなハイブリッド・サウンド。というのもバンドの構成メンバーは、マリアンヌ東雲(Vo. Syn.)、Shinpei Mörishige(Gt.)、Shintaro(Dr.)、ハセガワスズナ(Ba.)、竹内理恵(Sax.)と、様々なキャリアとバックグラウンドを持った、異色のメンバーが集結しているのだ。そして、今回披露した「New Order」「Neon Escape」のいずれも、サックスの即興的かつ有機的な音色が絶妙に華を添えており、大きな見所の一つとなっている。
トークでは、主にマリアンヌ東雲の奔放(?)な発言が、その場に居合わせた演者とスタッフを大いに湧かせたものの、YouTubeの尺的にもカットせざるを得ない部分があり、全てを伝えきれずなかなか悔やまれるところではある。その辺りの空気感は、5月にmusitで別途インタビューも行っているので、下記のメールインタビューと併せて嗅ぎ取っていただきたい。
【メールインタビュー】
Q1.Palastlebenはマリアンヌさんの「ちょっと力を抜いて純粋な気持ちでバンドを楽しんでみたい」(※インタビューより)という思いから結成されていますが、メンバーの皆さんはそれぞれPalastlebenをどのようなバンドだと感じていますか? あるいは、Palastlebenの魅力はどういったところにあると思いますか?
Shinpei Mörishige:華麗なる掃き溜め。お互いを高め合う関係って、社会に出たら嫌でも人生の中で経験すると思うのですけど、低め合う関係って自分らしくいられそうな気がして自分に合ってる気がします。下流の宴というか、お客様もメンバーも含めて皆の避難所というか。意識高い人も意識低い人も、いつでも来れる場所。そんなゆる〜い宮殿があったら良いですよね。いつまでもダメなままでいれる場所が欲しい。だから別に華麗じゃなくても良いか…。
竹内理恵:スタイルも出自も全く違うメンバーが集まって、それぞれの個性を活かしながら絶妙なバランスで成り立つ音楽性を楽しむバンド。
ハセガワスズナ:多くの方が思っているのではと思いますが、日本ではなかなかない音楽をやっているバンドだと思います。また、無機質ながらも各メンバーの人間らしさも垣間見えて、このメンバーだから出せているフィーリングも魅力かと思います。
Shintaro:夢で2ヶ月に1回くらいで行くバーに行ったらなぜかいつもいる常連の飲み仲間と近況とか今ハマってることとかを語り合うんだけど、翌日起きたらその夢の内容はほとんど忘れてる、みたいなバンド。
Q2.バンドとしての明確なコンセプトは持っていないとしつつも、ニューウェイヴやポストパンクを通過したサウンドや、メンバーの佇まい/アートワークなどヴィジュアルの面でもどこか一貫したこだわりが感じられます。シーンや文脈におけるPalastlebenの立ち位置について、どう考えていますか?
マリアンヌ東雲:今のところは特に意識しておりません。これからの活動の中で見つけていければと思います。
Q3.Palastlebenの音楽性や活動内容は、今後どのように変化していくと思いますか? あるいは、バンドとしての展望も念頭に置いたうえで、どう変化させていきたいと考えていますか?
マリアンヌ東雲:パッと聴いただけで我々の音楽だとすぐ認識していただけるような一貫性を保ちつつ、自分たちでも予想できなかったような楽しいハプニングを沢山経験していければと思います。海外のリスナーからも反響をいただいているので、情勢が落ち着いたら海外公演もしてみたい。
Q4.皆さんにとっての音楽人生における師、もしくは「神」的な存在はどなたでしょうか? その理由や、実際に受けた影響も含めて教えてください。
マリアンヌ東雲:神という表現は好まないのですが、強いて挙げるならば遠藤ミチロウさん。音楽的にというよりはむしろ、狂気・色気・知性を持ち合わせた佇まいに衝撃と感銘を受けました。とにかく色気がある方が好き。
Shinpei Mörishige:真っ先に思い浮かぶのはガンダム。ガンダムの宇宙のシーンを観ていると、不思議と音が見えてきて楽器を触りたくなってくるんです。『ブレードランナー』とか『惑星ソラリス』みたいなSF映画とかもそう。
実在する憧れの存在や影響を受けたという意味では具体的な名前を挙げたらキリがないのですが、自分にとって存在の実感が湧かないくらい遠い存在で言えば、子供の頃から好きなバロック音楽の作曲家、ヨハン・ゼバスティアン・バッハです。いくつもの旋律が重なりあって生まれる美しいハーモニーや、技法、教会音楽としての音に込められた意味を知れば知るほど深遠で、彼の残した曲、その音に宿るものを神と呼んでも良いのかもしれません。奏者によって表現は違うけれど、ピアニストのAlfred Brendel氏、Glenn Gould氏の演奏が好きです。Palastlebenではギタリストとして参加してますが、ロックやギター以外からの影響も強いです。
ロックは好きだけど神ってよりは、むしろ「お前もやっちゃえよ」って悪魔の囁きみたいな方がピンとくるかな! 子供の頃に見た化粧をした男達が音を鳴らして狂う姿は私にとって悪魔そのものでした。
竹内理恵:クラシカル・サクソフォン奏者の原博巳氏。学生時代、音楽性やお人柄から沢山のことを学びました。惜しまれつつ急逝され、あまりに早く、本当に神様になってしまった、と思っています。
ハセガワスズナ:キノコホテルの元従業員、ジュリエッタ霧島さんに出会って人生が大きく好転したので、彼女はかなり大きい存在です。好きなベーシストで言うと、前から好きでしたがPalastlebenをやっていくうえでより意識し始めた人はJAPANのミック・カーン。あの異質さは結構理想ですね。
Shintaro:Brian Chippendale(Lightning Bolt)。自分は音楽の源流がパンクなのですが、パンクを掘れば掘るほどサウンドではなく思想とか構造に対する反骨性とか独自性だという事に気づいて、そんな中で「パンクとは何か」という問いへの1つの答えだと思っているドラマーです。
Q5.『musitTV』は各地のライブハウスを巡りながら展開していく音楽番組ですが、これまで音楽人生を歩んできた中で、特に印象深く忘れられないライブを、その際のエピソードを含めて教えてください。観客としてでも、あるいはプレイヤーとしてでも構いません。
マリアンヌ東雲:沢山ありすぎて絞れない! ですが今パッと思い付いたのは2017年のマカオ公演。海辺の野外イベントに呼んでいただいたのですが、機材トラブルが発生したうえに前のバンドが押しすぎたせいでワタクシのバンドの出番がなんと翌日に変更。その夜は急遽主催がホテルの延泊手続きと帰りの便を変更してくれて、夜景を眺めながらセレブリティーな時間を過ごしました。
Shinpei Mörishige:初ワンマンや結成ライブや、生誕ライブ、憧れの人との共演、フェスや目標にしてた大きな会場でのライブやライブハウスでのカラオケなど色々あってなかなか1つには決められませんが、中でもFOXPILL CULTというバンドをやってた時、最後の曲でボーカルが床に向かってニードロップして膝の皿を割り全治一年の骨折をしたことは記憶に新しいです。ライブハウスに救急車を誘導したり、救急隊の方と彼を持ち上げたり、私も大活躍でした。むしろステージにいる時より輝いていたかもしれません。あと今回収録させていただく手刀での思い出は数え切れません。
竹内理恵:プレイヤーとしてもお客さんとしても数え切れないほどありますが、昨年11月にTuba & Baritone Sax duo “MUSIC for ISOLATION”として参加した「朗読と音楽」(朗読 : 串田和美/小林聡美)で、幼い頃からの憧れのお二方と共演させて頂けたことは一生の宝物です。
ハセガワスズナ:最近ふと聴いているのもあり思い出したのが、2016年、真夜中のヘヴィロックパーティーで観た灰野敬二さんですね。グルーヴって深いなと改めて思い知らされました。
Shintaro:同じメンツの対バンで地方を何ヶ所か回るツアーをやった時、前日の打ち上げで対バンの人たちと仲良くなって、翌日の京都かなんかのライブで対バンの全バンドにドラムで乱入的に参加した思い出があります。
Q6.運営母体の『musit』は音楽と様々なカルチャーを掛け合わせながら幅広い層へのリーチを目指すメディアですが、音楽以外で最もハマっているカルチャー(または趣味)について具体的に教えてください。
マリアンヌ東雲:韓国ドラマとパンダ。
Shinpei Mörishige:これも一個を決めるのはとても難しいです。ロードバイクやスケボー、料理、食べ放題、ジブリ、ムーミン、SF映画、あと最近ではミニ四駆がリバイバルしています。どれも自分との対話でもあるし、音楽との相性も良く、皆んなでやっても1人でやっても楽しいのが良いですね。休みの日はよく1人でムーミンをしたりしてます。次は是非みんなでムーミンしてみたいですね。あと全国のディープスポット巡り。古く怪しい街を歩くの楽しいです。これもムーミンとの相性も抜群です。
竹内理恵:眉毛&まつ毛パーマ!
ハセガワスズナ:漫画ですね。安達哲、山本直樹など、青くてドロっとしたものを読むと初心を思い出せるので、リフレッシュした気持ちでベースにも生活にも向き合えます。
Shintaro:自分はIN OUT DESIGNという性器だとかがモチーフのジュエリー・ブランドのクリエイティブ・ディレクターでありクラフトマンでして、音楽とは別軸で割とガチめに活動してるのですが、日々製作に追われていて趣味どころじゃない、というかそれが趣味ですし、もっと言うとドラムも趣味です。けど、やってること的に一番趣味っぽいのはスケボーで、近年「趣味」の意味がどんどん分からなくなってきてる。ハマってるカルチャーで言うと、昔からカウンター・カルチャー全般にハマり続けています。
musit編集部




