【インタビュー後編】「ゲットー・サラブレッド」DJ Coreyが見据える、シカゴ・フットワークの未来

【インタビュー後編】「ゲットー・サラブレッド」DJ Coreyが見据える、シカゴ・フットワークの未来

30年近くシーンの最前線を走り続けてきた、シカゴ・フットワークのゴッドファーザー、DJ Clent。その息子であるDJ Coreyは「生ける伝説」とも言うべき父親の薫陶を受けて育った、文字通り「血統証付き」のゲットーDJである。弱冠17歳にして既に14作をリリース、さらにNu Legendsというクルーを主宰し、めきめきと頭角を現している。

彼が手掛ける楽曲はシーンを代表するDJであるTraxman/D.J.Fulltono/Kush Jones/Juke Bounce Work/Sherelleらがこぞってプレイしていることからも、クオリティは折り紙付きであることが十分理解できる。その才能のダダ漏れ具合から『Mix Mag』や有力シカゴ紙の『Chicago Reader』など早耳の海外メディアにも捕捉され始めているのだ。そこで今回は、10月にフル・アルバムのリリースを控えるDJ Coreyに、短いながらも濃密な半生と自身が考えるフットワークの未来を語ってもらった。

▲左上から時計回りにD.J.April/DJ Corey/Ace-up/KING AGee

取材/文=D.J.AprilAce-up
通訳=D.J.April

シカゴ・ゲットーのサラブレッド、日本メディア初登場

──日本のメディアでは初めての露出だよね。まずは簡単に自己紹介をお願いしてもいい?

DJ Corey:はじめまして。シカゴの南部(サウスサイド)出身で、今17歳。ハウスが進化したような、ジューク/フットワーク(以下:フットワーク)っていうダンス・ミュージックを作ってるよ。日本のシーンのことは親父や周りのDJからもよく聞いてるし、色んなDJやダンサーがいて、カルチャーがしっかり作られてるってこともYouTubeとかで見て知っているよ。

──父親がDJ Clentっていうのも相当すごい家庭環境だけど、フットワークに触れたのは何歳? あと、何歳ぐらいからトラック制作を始めたの?

DJ Corey:記憶の中で一番古いフットワークの思い出は3歳の頃だね。親父がDJしてたダンスバトル*『Wala Cam』の会場に連れられて行ったんだけど、大の大人が半分ケンカみたいなノリでバトルしてて怖くて逃げ出したのを覚えてる。笑 でもそのあとバトルの魅力に取り憑かれて、トラックメイクだけじゃなくてダンスも始めるようになったんだよ。

曲を作ったのは…2014年頃だから9歳ぐらいかな。親父は筋金入りのトラックメイカーだし、家のスタジオには機材が山ほどあったから、遊び半分でいじってるうちに…みたいな自然な流れだった。RolandのR-70っていうドラムマシンを使って、親父の「Bob My Back」っていう曲のサンプルで作ったジューク(高速なハウス)だったかな? 俺は知らなかったんだけど、当時親父が勝手にSoundCloudにアップしてたらしい。笑

*フットワークには、パーティ用の「ジュークトラック」とダンスバトル用の「バトルトラック」の2種類がある。一般的にジュークトラックはイーブンキックで踊りやすく、バトルトラックは複雑で変則的。バトルトラックは、90年代末~2009年頃まで上記のダンスバトルでのみプレイされていた。

──今はどんな音楽を聴いてるの?

DJ Corey:一番はフットワークだね。24時間ずっと聴いてるといってもいいぐらい!笑 そのほかは普通に現行のラップとかポップス。たまにドラムンベース、ブレイクスなんかも聴くけど。学校の友達も同じような感じだと思う。あと、サンプルネタを探すのに家のレコード棚でソウルやR&Bをディグってたんだけど、それで古い音楽もめっちゃチェックするようになったかな。最近のお気に入りは、Earth,Wind & Fire、The Isley Brothers、George Clintonとかだね。

──シカゴの歴史には、フットワークを形成しているルーツ的な音楽もいっぱいあるよね。

DJ Corey:そうそう。フットワーク自体は90年代の終わりぐらいに生まれたんだけど、そのルーツにはやっぱりシカゴハウスがあって。だからゲットーハウスとかアシッドハウスとかも自分の血の中には間違いなく入ってると思う。家には親父のオールドスクールなレコードコレクションが死ぬほどあるから、ガキのころから無意識に聴いてるし、そりゃ馴染むようになるよね。笑 ゲットーハウスも良く聴いてるよ。Dance Maniaでも活躍してた、地元のレジェンドでもある*DJ DeeonやDJ Miltonはもちろん、D.J.P.J.(現 DJPJMADEDISTRACK)、DJ Monty、DJ Lemoとか。

*シカゴ・フットワークの直接的なルーツでもあるゲットーハウスの先達。多くがDance Maniaというシカゴローカルのレーベル出身で、「タフなビート・ラフな声ネタ・低音質」という三拍子がそろった素晴らしいハウスを聴くことができる。2001年に倒産。

「若き天才」、その作曲作法とは?

──16歳なのに既に14枚のシングルを出してて、8月にもフリーミックステープをリリースしたばかり。めちゃくちゃ作るペースが速いと思うし、曲も出す度に進化してるよね。

DJ Corey:ありがとう。曲を作るスピードについてはシカゴのDJだったら大体こういう感じじゃないかな…。あんまり難しく考えずに「はい、これで終わり!」って感じ。笑 リリースするかしないかは置いといてね。ポスト・プロダクションにこだわるのは大切だって分かってるけど、まずはリリースして、その中で課題とか改善点を見つけて、次の作品に活かせられればいいかなと思ってるよ。

──家にはプロ用のスタジオがあると思うんだけど、君はどうやって作ってるの?

DJ Corey:ほぼAKAIのMPCで作ってるね。自分の機材は、貯めたお小遣いを全部注ぎ込んで買ったMPC 2000XLが最初。あとはMPC Renessance、MPC 60-I、それに最近親父が買ったMPC 3000かな。3000はマジでいいね。音にパンチがあるし、世界最高のドラムマシンだと思う。あとはAppleのLogicに流し込んで調整だね。

──TraxmanとかRashad、Clent、多くのシカゴのDJがMPCで作ってるけど、フットワークを作るうえでMPCのストロングポイントってなんだろう。

DJ Corey:一番はタイミングとシーケンス。リズムの設定を作りながら直感的に変えられるのと、耳で聴いて手打ちでリズムを構築していくから、演奏に近い感覚で作ることができる。PCももちろん便利なんだけど、目で見て作るからどうしてもフィーリング的にしっくりこない気がするんだよね。

──君は出してる曲のスタイルもかなり幅広いよね。

DJ Corey:そうだね。いわゆるバトル系もジューク系のトラックも作るけど、最近は2000年代初頭のフットワークのスタイルにハマってたんだよ。ちょっとマニアックな話になるんだけど、リズムが複雑なプログレッシヴなスタイルより、イーブンキックに近い160BPMでパーティライクなスタイルのブームが自分の中で来てたんだ。特にDJ Rashadや親父の古い曲がめちゃくちゃ良くてね。*タムがロールしてて、グルーヴがあるんだよ。 

*タムとは、ドラムセットの打楽器「タムタム」を指す。曲制作で使われるキット(音の素材)のひとつで、シカゴ・フットワークでは主にリズムのガイド的機能を果たし、TR-808やTR-606のタムタムが必ずと言っていいほど用いられている。

──2000年前後っていうと、結構ハウスっぽいビートが多い時代だよね。今はもっと変則的で、「踊りづらければ踊りづらいほどいい」みたいな曲も多いけど。

DJ Corey:そうだね。現代のプログレッシヴなトラックにも、フットワークらしさがあると思ってるよ。ただ、2003年頃にDJ Rashadが作った「Say What」っていう曲があってね(未リリース)。個人的にはこの曲に「これこそがシカゴ!」っていうエッセンスを感じるんだ。バイブスとかタムの感じとか。シカゴ・フットワークのカギになるのがタムなんだけど、その使い方っていうのかな? 刻み方とかがとても繊細で素晴らしいんだ。

──曲作りと一緒にダンスもやってるけど、その経験は曲作りにどう活かされてるの?

DJ Corey:バトル用のダンスにはキメのムーブや、相手を威圧するためのキラートリックみたいなのがあるんだけど、そのタイミングとかリズムの乗りこなし方を知っていると、曲で聴かせるポイントやリズムを崩したり変化させたりする所がよく見えてくるんだ。

俺はTS(Terra Squad)に所属してて、ボスのKing AGeeには色々アドバイスをもらってるよ。彼のダンスは最高だし、亡くなったDJ Rashadとも曲作りを一緒にやってたから音楽のキモを理解してる。そういえば、KING AGeeは最近初めてアルバムを出したよ。ぜひ聴いてみてほしいね。

──KING AGeeとコラボでMIXテープ(『4 the Streets』)をリリースする予定だね(インタビュー時点では未リリース)。アルバムではなく、MIXテープという形式を選んだ理由は?

DJ Corey:MIXテープは年に何回か作りたくなる時があって、今回はそのタイミングだったんだよね。ほかにも俺が『Bring The Beat Down』、KING AGeeは『Mr.007』というアルバムをリリースする予定。今回のMIXテープは、この2枚のアルバムのための序章といった感じだね。

ミックスにはそれぞれが収録した30分のミックスを2本入れているよ。年末には俺も参加したBeatDown House(父・DJ Clentのレーベル)のコンピレーションも出るし、現在進行中でたくさんのプロジェクトに取り組んでいるよ。これからもっと世界中の人たちに自分たちのサウンドを届けていきたいね。

自分たちが切り開く、フットワークの未来

──DJ Rashadの話がさっき出てたけど、彼は君にとってどんな存在だったんだい?

DJ Corey:あまりに存在が大きすぎて、言葉では言えないよ。単純な話、音楽がカッコ良すぎるし、シカゴ・フットワークの中でもシンプルにナンバーワンだと思う。全ての曲が素晴らしいけど、特に2001~2003年頃のトラックがズバ抜けてヤバいんだ。曲を作る時にももちろん参考にしてるし、親父と同じくRashadが俺に与えている影響はとてつもないよ。ぶっちゃけパクって作った曲もあるぐらいだよ!笑

──そういえば、DJ Chad(Rashadの息子)と一緒にクルーをやってるんだよね?

DJ Corey:そうそう。クルー名はNu Legendsって言うんだけど、メンバーは俺とChadと、あと*DJ.MCの息子のMarioの3人だね。名前の通り、「新しい伝説」になるっていう気概を込めたんだ。俺たちだけじゃなくて、シカゴでは新たなダンスクルーも増えてて、数だけなら2000年頃より多いんじゃないかな? Chadももうすぐリリースできるし、Marioも才能溢れる若手でいずれリリースすることになると思う。

*2000年代中頃から本格的に活動を開始したDJ。シカゴの中でもドープ系のサウンドが特徴的で、クラシックとなっている曲も多い。9月にはSHINKARONからニュー・アルバムをリリースする予定。

──親父さんもBeatdownっていうクルーを長らく主宰してるけど、アドバイスとかもらうことあるの?

DJ Corey:そんなにないかな。親父は大体俺のことをホメないしね。笑 俺が曲を聴かせて悪ければダメ出しがあるけど、良い感じの時は「ふ~ん」とかいって何も言わないんだよ。まあそのリアクションで「あ、これはイケてんだな」って分かるけど。笑 ま、親父は親父だし、自分が良いと思うものを作っていくつもりだよ。

King AGee:いやー、なんかこの前Clentから電話があってさ。「うちの息子がめっちゃヤベえトラック作ってたんだよ! 聴いてみてくれよ!」って電話口で鳴らしながら、ひとしきりお前のことホメてたぞ!笑

DJ Corey:あ~、それ「Back Up Cum Sucka」(『4 The Street』収録)のことだな。笑

King AGee:「あいつ俺の*ボイスサンプルを勝手に使って曲作りやがって! 今すぐ弁護士に連絡してサンプルの使用料をぶんどってやる!」って息巻いてた。笑 

一同:爆笑 

DJ Corey:そういえば、この曲聴かせた時珍しく「めちゃくちゃ良いじゃん!」って言ってたな~。笑

King AGee:いや、アレはホントにイケてるよ。

*トラックのパーツになる短いラップやかけ声で、シカゴハウスでは定番の要素。この曲では1998年にリリースされたDJ Clentの傑作「Back Up Off Me」で用いられた、Majik Mykeによるボイスサンプルをエディットしている。

──今やイギリスや日本、世界中にフットワークは広がってるけど、まだまだメジャーな世界とはほど遠いよね。

DJ Corey:フットワーク・カルチャーをどうやって広めるかだね。シカゴでももちろんそうだし、LAや日本やイギリス、世界でも、ビッグネームのアーティストに媚びたりしないで、シカゴらしい曲をしっかり作っていくことが本当に大切だと思ってるよ。トレンドに寄せたり、ポップスのチャートっぽい曲を作ったりしても、本質的なスタイルが理解されなかったら意味がないからね。

──シーンとして大きくなるには、何が必要だと思う?

DJ Corey:繰り返しになるけど、まずは小手先のことはやらないこと。そして、シンプルに自分が良いと思うフットワークを作って、新しいサウンドを提示し続けることだと思う。親父を始め、ベテランにはベテランの強みと歴史の中で成し遂げてきたことがたくさんある。俺たちは、彼らが作ってきたレガシーを受け継ぎながらも、自分たちにしかできない新しい歴史を作っていきたいし、今もそう努力しているつもりだよ。コロナが落ち着いたら、近い将来に日本でその成果をシェアできたらいいね!…と言いつつ、実はパスポートは持ってないから、まずそれを取らないとだけど。笑

* * *

最後にDJ CoreyとKING AGeeにそれぞれの考えるフットワーク楽曲のオールタイムベスト3を挙げてもらった。試聴できないものもあるが、本場の人間が作り上げる最高のサウンドを是非聴いてみてほしい。

DJ Corey’s All Time Best

  1. DJ Clent – Fuk’em Up※未発表曲
  1. DJ Rashad – Wild Wild Get Back
  1. DJ Clent – It’s Hot

King AGee’s All Time Best

  1. DJ Clent – 3rd World (Wurle)

  2. DJ Rashad – She A Chicken Head feat.Tone Sko

  1. DJ Rashad – Fly High (Mieh)※未発表曲

* * *

RELEASE

DJ COREY & KING AGee『4 THE STREETS』
レーベル:BEATDOWN HOUSE
リリース:2022年8月14日

1.King Agee – Beatdown Hotline Intro
2.King Agee – Don’t Save Ha
3.King Agee – Is U Cool?
4.King Agee – I Doooo Ft Dj Phil
5.King Agee – Agee Corey Ft Dj Corey
6.King Agee – Get Em Geezy
7.King Agee – Disrespect Da House Ft Dj Corey
8.King Agee – Zooties
9.King Agee – Who Wanna Battle? Ft Dj Solo
10.King Agee – Rocket Love
11.King Agee – There U Goooo
12.King Agee – I Got Heat
13.Dj Rashad – Can’t Handle The Truth
14.King Agee – Lit City Ft Dj Rashad
15.King Agee – WolfPak
16.King Agee – Bussas 2.0 Ft Dj Phil
17.Dj Corey – Bang Da Box Intro
18.Dj Corey – Turn Da Fuk Up!
19.Dj Corey – Work Dat MF
20.Dj Corey – On My Mindddd
21.Dj Corey – Dem Rats Ft Dj Rashad
22.Dj Corey – Bakk Up Cum Sucka Ft Dj Clent & Majik Myke
23.Dj Corey – Ho3
24.Dj Corey – Da Isley
25.Dj Corey – Do You Minddd Ft Dj Mario
26.Dj Corey – Explode
27.Dj Corey – MK3 Shit
28.Dj Corey – C O R E Y
29.Dj Corey – Take It Off
30.Dj Corey – She Ah Eat Ft Jaylo & Dj Mario
31.Dj Corey – We Da Blueprint Ft AngelTSFC
32.Dj Corey – NuLegendz

bandcamp:
https://djcoreybdh.bandcamp.com/album/4-the-streets-mixtape

Dj Corey

Twitter:https://mobile.twitter.com/djcoreybdh

musit編集部