【インタビュー】「これを最後にできるならやります」──新体制Payrin’sが伝統の中に見出す新たな光
2022年9月にメンバーの入れ替えを経て新体制での活動を発表した、4人組アイドルユニット・Payrin’s。彼女たちは長年「4つ打ちギター・ロック」をコンセプトに、オルタナティヴ・ロックやボーカロイドのエッセンスなども取り入れたパワフルな楽曲のイメージと、儚げで気品溢れるメンバーのギャップから多くの人気を集める存在だ。そんな彼女たちの新体制お披露目ライブ『Abfahrtation』では、新メンバーの瀬川いちかと立花菜波を迎えた「Payrin’sの現在地」を会場に刻む圧巻のパフォーマンスを見せつけた。
そんな彼女たちは、前メンバーの卒業から新体制での活動を決断するに至るまで、個々に何を思い、そして背負ってきたのか。今後の活動に向けた意気込みも合わせて、4人にそれぞれの心境を語ってもらった。

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取材/文=すなくじら
写真=井上恵美梨
編集=星野
「今までとは全く別のPayrin’sとして活動していく覚悟はしていました」
──まずはそれぞれの自己紹介からお願いします。お名前と、好きなものを教えてください。
妃南:じゃあ、自己紹介はいつもの順番で行こうか!(メンバーを見ながら)
──Payrin’sならではの順番が決まってるんですね!
妃南:そうなんです。とはいえ、私からなんですけど…。笑 改めまして、妃南ななきです。好きなことは音楽で、元々バンドもやってました。音楽で生きていこうって思ったことがきっかけで、縁あってPayrin’sにいるくらい音楽は好きかな。じゃあ、次は海ちゃん?(三原を見る)
三原:はい! 三原海です。シルバニアファミリーとミッフィーちゃん、あとは猫が好き。お酒を飲むことも好きです!
──ありがとうございます! 普段どんなお酒を飲まれるんですか?
三原:ビール、日本酒……料理によっては赤ワインも飲みますね。

──チョイスがお酒に強い方の発言です。笑 次はどなたでしょう?
瀬川:順番通りだと私かな? 瀬川いちかです。好きなことは食べることと麻雀。麻雀は3年前くらいからやってて、一度始めると次の日の昼とかまでやることもあります!笑
──次の日の昼!? かなりのめり込んでますね。笑
瀬川:いつもってわけではないですけど。笑 友達と楽しんでます!
──時間を忘れられるほどの趣味があるのは素敵だと思います。では最後に、菜波さんお願いします!
立花:立花菜波です。趣味は登山とサッカー観戦とツーリングと読書かな〜。
──アウトドアな趣味が続くのかなと思ったら、最後は読書なんですね! 読まれるのは小説が多いんですか?
立花:小説も読みますし、読書からは外れちゃうかもしれないのですが、漫画も読みます。自分が読めれば割とジャンルは問わないですね。

──ありがとうございます! 今回のインタビューは「新体制になったPayrin’sに一歩踏み込む」という所で、新メンバーのいちかさん、菜波さんがどんな方なのか既存メンバーのお2人にご紹介をお願いしたく……! 最初はいちかさんについて、ななきさんから紹介をお願いします。
妃南:うーん。いちかちゃんは、見た目はふわふわしてて声も可愛い感じなんですけど、ちゃんと話してみると結構しっかりした子なんですよ。趣味も麻雀だし、初めて会った時から良い意味で印象がちょっと変わった。笑 あとはダンスの上手さが印象的でした。新体制になって、新しいタイプの子が来てくれたなって思って嬉しかったです。
瀬川:ダンスは昔、遊びレベルでチアダンスをやってたくらいで、ほぼ未経験に近いんだけどね。笑
──ちなみにいちかさんから見たななきさんの第一印象は?
瀬川:えっ……。正直怖かったです。笑
一同:爆笑
瀬川:怖かったのは、そもそもPayrin’sってアー写とかも笑顔が少ないショットが多いからその印象も相俟ってかな。笑 もちろん今はそんなことないですよ! あとは、勝手に身長高いのかなって思ってたので、実際に会ってみたら全体的に小さくて可愛いらしいなって思いました。

──今は仲良しで良かったです。笑 では、続いて海さんに菜波さんのご紹介をお願いしてもよろしいでしょうか?
三原:菜波ちゃんはとにかく頑張り屋さん! レッスンも含めて、見えない所で人一倍努力してるんだろうなって思う場面がたくさんあって。あとは……純粋に面白い子。1人でずっと喋ってる。笑
立花:そう?笑
三原:うん。でも面白いからそのままでいいよ。笑 最初は関西から来たって聞いて、勝手なイメージで「気が強い子なのかな」とか「自分と合わないタイプなんじゃないか」って不安もあったんですけど、実際会ったら全然そんなことなかった。
──菜波さんは海さんの第一印象はどんな感じでしたか?
立花:第一印象というよりかは、今でも結構(三原に)言ってることなんですけど、お人形さんみたいだなと思いました。儚くて独自の世界を築いてる。で、とにかく喋らん。笑 でも、海ちゃんって自分の好きな話題に触れた時にはすごいニヤニヤしながら乗ってきてくれるんですよ。それでいて酒飲みだし。儚い女の子っぽい雰囲気なのに、ダンス踊らせたらバッキバキで!笑 このギャップまみれな部分が最高なんですよね。
三原:褒めてくれてる〜!笑 ありがとう。
立花:いや、マジで海ちゃんの「踊ってみた」の3分の1は私が観てる分の再生数。笑 それぐらい海ちゃんのダンスが好きなんです。
──新体制になってからのお互いの印象について、今の会話から伝わってきました。新体制になることを初めて聞いた時の、率直な感想はいかがでしたか?
妃南:前メンバーの桜木もちこの卒業に伴って、ここからどうしていくかを海ちゃんと運営さんと話し合ったんです。これは私個人の話になるんですけど、アイドルがやりたかったんじゃなくて、Payrin’sだからこそアイドルをやりたかった。だからこそ色んな選択肢がある中で、新メンバーを迎えて新しいPayrin’sを作っていく意思は自分の中で固まってました。

──新メンバーのお2人はどのようにして決まったんでしょうか?
妃南:新体制を作っていく時に、どんな人と一緒に頑張っていきたいのかを先に話し合って、そこから今の2人に声を掛けさせてもらいました。Payrin’sという既に完成されたものの中に新メンバーとして入る不安も2人にはあると思っていたので、私たちが迎える場所を作って、今までとは全く別のPayrin’sとして活動していく覚悟はしていましたね。
私と海ちゃんもだいぶキャラが違うんですけど…2人も私たちとはまたキャラが違うので、まだ誰も観たことがないPayrin’sとしてのスタートが切れるかな、と。
──ななきさんの新体制への強い想いを垣間見ることができました。海さんはどうでしょう?
三原:もちこが抜けるって知って、2人には申し訳ないんですけど、素直に私は「あっ、これ解散だな」と思いました。笑 本音ベースで言うなら、やっぱりもちこがPayrin’sの顔として長年舞台に立ってきた事実はどうしても私の中でも大きくて。
──海さんの中で、もちこさんの存在が大きかったことって何か理由があるのでしょうか?
三原:私もPayrin’sに縁あって誘ってもらったうえでの加入だったのですが、当時は「もちこがいる」っていうのがPayrin’sの強みの1つでもあったし、私ともちこはアイドル人生としては同期みたいなものなので「この子の隣でアイドルとしてやっていけるんだったら(加入したい)」っていう想いも少なからずあったんです。だからもちこの卒業の話が出た時、率直に「綺麗に終われるなら」いいかなと思ったんですけど……。

──思ったけど……?
三原:そこでさっきのななきの話に繋がるんです。ななきと運営の「やりたい」っていう真っすぐな意思を聞いて「これを最後にできるならやります」って伝えました。自分自身、そこに対して後悔はなくて。実際に新メンバーとして2人が入ってきてくれた今は、「昔のPayrin’sとの比較」じゃなくて「全く新しい別のPayrin’s」として、ポジティブに生まれ変わった姿をファンの方にも見せることができるんじゃないかなと思っています。

──ななきさんの想いが海さんに届いた瞬間ですね。新メンバーのお2人は、Payrin’sというこの想いと一緒に「継がれていく」アイドルグループに加入することに対してプレッシャーはありましたか?
立花:私は前にいたグループのライブでPayrin’sと対バンしたことがあったので、今の話の内容はすごく理解できます。もちこさんの存在と作り上げてきたものの大きさって、本当に凄まじくて。自分は今まで、アンプの上に足を乗せて煽ったりするような強めのパフォーマンスをする機会が多かったので「Payrin’sはこうあるべき」という概念的なものに対して飛び込む勇気がなく…。声を掛けてもらったあと、実はすぐには返事ができなかったんです。直接2人と会うまではほんまに断るつもりでいました。笑
──そうだったんですね。そこから、加入を決めるに当たって気持ちの変化があった、ということでしょうか……?
立花:話を聞いていく中で、「次のPayrin’sは今までとは全く違うものにしたい」っていうのを耳にして。「菜波さんにはPayrin’sの『動』の部分を担ってほしい」って言われた時に、とてもしっくりきたんです。プレッシャーは今でもないわけじゃない。でも、ここに呼んでもらったからには、期待に応える形で「良い意味で裏切りたい」と思ってます。

──いちかさんはどうですか?
瀬川:私も前体制のことはもちろん知ってましたし、プレッシャーを感じていないと言えば嘘になるんですけど…。 私の場合、今までのアイドル経験が不完全燃焼で終わってしまっていたので、海ちゃんと同じく「ここを最後の場所にする」気持ちでいます。菜波ちゃんとも全くキャラが違うからこそ、私たちが入ることで新しく見せられるPayrin’sもあると信じています。
代々受け継がれる「Payrin’s」の名の下に
──先日、新体制お披露目LIVE 『Abfahrtation』を開催したPayrin’sですが、2023年のワンマンLIVEが決定していますよね。ぜひワンマンに向けての意気込みを聞かせてください!
妃南:私はPayrin’sを、オリジナルからどんなにメンバーが変わっても「代々受け継がれる」アイドルだと思っていて。多分ファンの方もそう思っている部分はあると思います。私自身がもう何度もメンバーを見送ってきて、新しい人が入ってくる……Payrin’sの循環の輪をこの目で見てきたからこそ、余計にそう感じるのかも。でも、その輪を一度断ち切ってみて、新しいものに生まれ変わることもできると思うんです。
モノトーンのコンセプトだったりカッコいい楽曲だったり、Payrin’sの歴史が紡いできたものをこれからも大切に守っていきたいものはたくさんあります。もちろん、それを大切にしているファンの方の想いも含めて。だから、基盤は変えずに新しいものを乗せて良い方向に生まれ変わる。そんな新旧合わせた最強のPayrin’sを来年のワンマンで見せたいと思っています!
三原:今まで応援してきてくれた方も、反対にPayrin’sを観たことがない方も、みんなが今のPayrin’sを感じられるステージにしたいと思っています。新体制を見て「これはこれで(新体制の)良さだな」って心から思ってもらえるはずだし、そうあるべきなので。

立花:私たち新メンバーが入って「何がどう変わった」のかをファンの方に見せることができる最初の答え合わせの場所がワンマンかなと思っていて。私自身も今から楽しみだし、頑張り次第でそこからPayrin’sのイメージを変えることもできると思ってます。だからこそ、自分で自分に期待してます!笑
瀬川:ワンマンは来年の1月ということもあって、自分のPayrin’sでの役目や立ち位置を見つけた上で臨みたいなと思っています。お披露目を見ていいなって思ってくれた人に、更に成長した姿を見せられるようなパフォーマンスをしたいですね。
──ありがとうございます。では最後に、新体制になったPayrin’sからファンの皆さんにメッセージをお願いします! 代表でななきさんにお願いしてもいいですか?
妃南:みんな、間違ってたら言ってね。笑
三原:いやいや、大丈夫だから。笑
妃南:「新しいものを見せていく」という意識でこの先活動を続けていくので、新しいPayrin’sのスタートとこれからの道をぜひ一緒に歩み続けてくれたら嬉しいです。これからもPayrin’sをよろしくお願いします!

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解散、卒業、無期限活動休止……。アイドル現場に通う中で相次ぐ「大切なお知らせ」。自分の推しが永遠にステージにはいられないことを再認識させられた瞬間の、ぎゅっと心臓を握られたような感覚はいつまで経っても忘れられないものだ。
そんな中で、賛否両論が最も分かれるのは「新体制」への考え方だったりするのではないか、と思う自分がいる。好きだからこそグループが続いていくことの安堵感と、新しく生まれ変わっていくことへの不安であれば自然と後者が増幅してしまうのも仕方のないことだ。
今回Payrin’sのインタビューを担当して、感じたことが3つある。まずは彼女たち自身が誰よりも悩み抜いてステージに立つ道を選んだこと。次に、ファンへの誠意。最後は、Payrin’sへの強い愛だ。過去のPayrin’sへ強いリスペクトを抱きながらも、そのPayrin’sの壁を超えることが彼女たちの目標でもある。「敵は己の中にあり」とはよく言ったものだ。4人は過去のPayrin’sの残像を超えるために、ステージに立ち続けている。
この4人が、Payrin’sの歴史に刻むのは一体どんな物語なのか。実際に過去に築き上げてきたものを変えていくことは、容易ではないかもしれない。それでも、強い覚悟を持った4人の少女をファンが信じる限り、彼女たちの「呼吸は止まない」のだろう。
※2023年1月10日(火) shibuya eggmanにて新体制初となるワンマンライブが決定。詳細は後日発表。
※なお、現在musitでは今回登場したPayrin’sほか、現行グループ4〜5組の撮り下ろし写真とインタビューの未公開部分を収録したオリジナルZINEを制作中。販売時期及び値段等、詳細はmusitのTwitterアカウント(@musit7)にて発表予定。ご期待ください。
すなくじら
