【musitTV 出演アーティスト紹介】Vol.4:the scented / ぺんぎんの憂鬱 / サバシスター

【musitTV 出演アーティスト紹介】Vol.4:the scented / ぺんぎんの憂鬱 / サバシスター

各地のライブハウスを巡りながら、様々なアーティストによる演奏とミニトークをお届けする配信番組『musitTV』。11月に収録が行われたVol.4は、the scented/ぺんぎんの憂鬱/サバシスターの3組がライブハウス・西永福JAMへ一堂に会し各2曲を披露。

ここでは、事前に実施した各出演者へのメールインタビューを元に、それぞれのルーツや音楽性に迫るほか、映像の見所を紹介。収録当日の模様を撮影した写真と共にお楽しみいただきたい。

インタビュー/文=musit編集部
写真=井上恵美梨

the scented

ミヤ(Vo. Gt.)

〈musitTV Support〉
佐々木理久(Gt.) – the pullovers
鴨下支音(Ba.) – asayake no ato / さよなら眼乱こりぃ
あべゆうま(Dr.) – nhomme / YKCM

文=對馬拓

2021年に始動した、ミヤ(Vo. Gt.)によるソロ・プロジェクト。「芳しい」「香りがする」といった意味を持つ形容詞“scented”を掲げ、同年『sent』『scene』と2枚のEPをリリース。ほぼ固定のサポート・メンバーと共に精力的なライブ活動を展開している。

抽象的な歌詞と、耳に残る特徴的なヴォーカルが描き出す景色は、確かに聴覚以外の部分にも訴えるものだ。そして、パンデミックやSNSでのいざこざなど、何かと生きづらさを感じる我々にとっては、一筋の光のようにも感じるかもしれない。轟音と、その中に宿った切実さ、誠実さを鳴らすようなthe scentedのパフォーマンスを観ていただければ、きっとその意味が分かるだろう。そして、今回の映像で何か感じるものがあれば、生のライブも目撃してほしい。「痛み」をアーカイヴし、この時代に足跡を刻もうとするthe scentedの旅は、まだ始まったばかりだ。

【メールインタビュー】

“the scented”というプロジェクト名が意味するように、“匂いのように記憶に残る音楽”、つまり“聴覚以外の部分にも訴えかけるような楽曲制作”をポリシーとしているのが、とても素敵だなと感じています。このようなコンセプトになったきっかけをお聞きしたいです。

私の尊敬するアーティストの楽曲に匂いと記憶について歌ってる曲があって、そこからインスピレーションを受けました。私自身単純にそう体験して今でも覚えてる部分があるので、センテッドの楽曲でもそうなってくれたら嬉しいなという単純な理由です。

1st EP『sent』収録の「明滅」は、the scentedとして初めて世に放たれた楽曲でした。〈指を咥えたまま ただ観ていた 今はどうしようもないことばかり〉というフレーズは、一見後ろ向きに思えて、「観ていた」という過去形や「今は」という前置きから、「これからの未来はどうしようもないことをどうにかしていきたい/していける」という自らを取り巻く状況を変えたい強い気持ちを感じます。この楽曲に込めた思いについて教えてください。

musitさんは私より楽曲のこと理解してて本当にすごいですw その通りですね。やっぱりどうしようもないことって世の中にはたくさんあって、それが子供だとか大人だとかそういう理由のものではなくて。それぞれ自分の位置で感じることがある。でもそれを考えて終わらせるのか、ただ諦めるのか。どうしようもないことをどうするか、そこを考えるのが大切なんじゃないかと思います。そうもがく様子が点滅する光のようで、「明滅」と名付けました。

2nd EP『scene』の冒頭の「海」を初めて聴いた時、1サビ終わりのギター・ソロ、2番Aメロの性急なドラムなどいくつも聴きどころがあり、ライブ映えもするキラーチューンだと感じました。疾走感も相まって〈ただひたすら走る 淘汰される 前に〉というラストのフレーズにもグッときます。ミヤさんにとって、この楽曲はどういった存在でしょうか。

先の見えない未来にただ漠然とした不安と恐怖、言葉にできない何か。そういうものが常に付き纏っていて、私自身もどうしようもないものと戦い続けてます。その中でも少しでも進めるように、何か吹っ切れるきっかけになるように、バンドにとっても自分にとっても一歩踏み出した楽曲になってると思います。

『musitTV』は各地のライブハウスを巡りながら展開していく音楽番組ですが、これまで特に印象深く忘れられないライブを、その際のエピソードを含めて教えてください。観客としてでも、あるいはプレイヤーとしてでも構いません。

the scentedの始動ワンマンですかね。the scentedを始めるにあたって何かインパクトがあることをしたくて、配信は無料でワンマンをやりました。初めてのライブなので観客なんて集まるのか、ほぼ賭けだったので一周回って楽しめた記憶があります。

『musit』は音楽と様々なカルチャーを掛け合わせながら幅広い層へのリーチを目指すメディアですが、音楽以外で最もハマっているカルチャー(または趣味)について具体的に教えてください。

私はアニメや漫画ですかね。この二つは日課です。そこから出会う音楽もあるし、誰かが創造してそこに感動がある。単純にそれが好きなんだと思います。

昔、漫画家さんにCDのジャケットを描いてもらったことがあって、念願だったので今でも忘れられません。音楽と様々なカルチャーを掛け合わすという点は、私にも通じるものがあるなと感じます。

ぺんぎんの憂鬱

たな(Vo. Gt.)

〈musitTV Support〉
yuma kanai(Gt.) – 1994 / Bearwear
サトウヒナコ(Ba.) – くぐり / とがる サポート
あべゆうま(Dr.) – nhomme / YKCM

文=對馬拓

ぺんぎんの憂鬱は、たな(Vo. Gt.)がライブや音源ごとにサポート・メンバーを迎えて展開するソロ・プロジェクト。今年6月に1st EP『曖昧夢』(あいまいむ)をリリース。冒頭の「落ちる」は、軽快でポップなギター・サウンドと、掴み所のないヴォーカルがクセになる1曲で、MVの再生数は既に2.5万回を突破している。

メールインタビューでも回答しているように、MCとのトークでは「道路に穴が空いてると嬉しい」と工事現場への思いの丈(?)を語っていたが、そういうふわっとした雰囲気はライブになると一転、ダウナーでプログレ的な志向も感じさせる楽曲を淡々と披露するステージにやられてしまった。今回のサポート・メンバーはmusitTVのために集まった初の編成なので、その点にも注目していただきたい。ちなみに、今回披露した「延滞」「OCD」は次回のEPに収録予定だとか。自身が掲げる「不穏でかわいい」サウンドに、映像と共に揺られてみてほしい。

【メールインタビュー】

1st EP『曖昧夢』の冒頭を飾った「落ちる」が、MVを含めて特に印象的でした。若干翳りのあるギターの音、軽快なアンサンブル、絶妙な温度感のヴォーカルなど、全体的にふわふわと掴み所のないのもあって、繰り返し聴かせる中毒性を感じさせます。MVもフィクションが交錯するような映像が、楽曲の世界をしっかりと視覚化していると思いました。音源とMVの制作はどのように進みましたか。

ありがとうございます。楽曲自体は3年ほど前には既にライブでも演奏していました。当時はスリーピース体制で演奏していましたが、EP制作にあたって國のレオさんにお願いしてギターを足してもらいました。「不協和音気味にしたい」など、難しくて曖昧な依頼をしたにもかかわらず絶妙に対応してくださり、さすがでした。

MVはEPのタイトルにもあるように「夢」を一つのテーマにしています。暗さをベースに夢や嘘、バグのような明るさが何通りも表現されているイメージです。前作「ペンギン・シンドローム」のMVでもお世話になった大学同期の陰山くんと一緒にプロットから練り、脚本、カメラ、監督までやってもらいました。バグっぽい演出のいくつかは彼のアイディアだったりもします。想像以上の素敵なMVに仕上がって感謝しかありません。

『曖昧夢』は國や50 pears、ハイとローの気分、くらげ計画など、様々なバンドのメンバーをサポートに迎えて制作されています。この柔軟な制作スタイルはソロ・プロジェクトならではだと感じますし、だからこそ生まれたマジックもあったような気がしています。実際に各曲の制作を経て、その辺りはどのように感じていますか。

曲ごと、時期ごとにやりたいことはおそらく変わると思うし、できるだけ人からの良い影響を反映した音楽制作をしたいと思っています。私のやりたいことを実現するには、私だけじゃ実力や知識、アイディア、センスなどが足りない可能性があると思います。私が想像していないメリットが生じることを期待していたし、実際生じたのではないかと思います。

ぺんぎんの憂鬱の音楽性にはシューゲイズやポストロックの要素も宿っていると感じています(事実、ZINE『nelll you』でも取り上げました)。たなさん自身も以前仰っていたように、butohes、50 pears、くぐりなど、シューゲイズを通過した(あるいは掠めた)バンドとの親和性も高く、リスナーとしてはシーンが賑やかになってきている印象です。その中で、ぺんぎんの憂鬱の位置付けについてはどのように考えていますか。

大学時代にサークルにシューゲイズが好きな人が結構いたので、その頃から少しずつ聴き始めました。ライブをよく見ていたきのこ帝国や羊文学、リーガルリリーなども含め、轟音が特徴的な音楽に影響を受けているのは間違いないです。1st EPの音源はシューゲ感はあまりありませんが、ライブでは2nd収録予定の曲を中心にかなり大きな音を出しています。初期の2曲もシューゲイズ要素が強いですね。

空間を埋めるような轟音が生む多幸感とか陶酔みたいなものはたぶんずっと好きです。位置付けというより願望になりますが、私は音が極端にでかくなくてもかっこいい音楽を、でかい音でやりたいです。まあ静かにしたくなるときもあると思いますが…。

『musitTV』は各地のライブハウスを巡りながら展開していく音楽番組ですが、これまで特に印象深く忘れられないライブを、その際のエピソードを含めて教えてください。観客としてでも、あるいはプレイヤーとしてでも構いません。

地元福岡で高校生の時に、友達が見せてくれた音楽雑誌に載っていた弾き語りの女の子のライブを見にいきました。初めてのライブハウスは慣れない場所で居心地が悪かったのを覚えています。今もできるだけすぐ帰りますけど…。笑 はっきり覚えてないし知識もなくてよく分かんなかったと思いますが、かっこよかったのは間違いないです。憧れの人を見に行けるのってすごいですよね。その後も何度か足を運んで、ちょっと話せるようになって嬉しかったです。また会いたいです。

『musit』は音楽と様々なカルチャーを掛け合わせながら幅広い層へのリーチを目指すメディアですが、音楽以外で最もハマっているカルチャー(または趣味)について具体的に教えてください。

地理が好きです。地名や川などが元々好きで、変な地名やかっこいい水辺を見つけると喜んでいます。最近は道路工事を見るとなんの工事か確かめて、気になることがあったら様子を見て工事の人に質問しています。ガス管、水道管、地下鉄などなど、道路の穴にもいろいろ理由があって楽しいです。道路に穴が空いてると嬉しいですよね、非日常的で。最近だと下北沢で電柱を地中に埋めるため(その他もいろいろ)の大規模な工事が行われていてすごいです。

サバシスター

〈L→R〉
るみなす(Gt. Cho.)
なち(Vo. Gt.)
ごうけ(Dr. Cho.)

〈musitTV Support〉
サトウコウヘイ(Ba.)

文=星野

「爆誕新米ガールズバンド」をコピーに掲げる3人組バンド、サバシスター。今年3月の結成からコンスタントなライブ活動をベースに口コミからリスナーを増やしていた彼女たちだったが、サマーソニックの新人発掘枠『出れんの!?サマソニ!?』への出場を機にその名は一気に全国区へ。なち(Vo. Gt.)の時折白い歯を見せて健気な印象とは良い意味でギャップを味わえる芯の太い歌声や、るみなす(Gt. Cho.)の咆哮するようにアグレッシヴなギター、そしてオーディエンスの熱を受けながら走り出すごうけ(Dr. Cho.)の見事なドラムさばき…と楽曲性こそ彼女らが公言している通り00年代以降における国内ギターロック・バンドからのルーツが垣間見られるものの、それ以上に猛烈な熱気を帯びた同時代性を感じるリアリティ溢れる楽曲には、彼女たちが「サバシスター」としてこの先スターダムへ駆け上がっていく強い信念が込められていることを確信するほかない。

【メールインタビュー】

サバシスターの楽曲はどこか懐かしさを感じる4つ打ちのメロディが特徴的で、その親しみやすさがサバシスターの人気を急ピッチで不動のものにしたように感じます。曲作りにおいて心がけていること、あるいは全体に共通するコンセプトのようなものがあれば教えてください。

私はコードや小節などの音楽的な知識がほぼなくて、今でも何も分からないまま作っています。笑 自分の中でのコンセプトは特にないのですが、聴いてくれた人の感想を聞いていると、今まで自分の側にあった音楽が自然と自分の音楽にも現れている部分はあるのかなぁと思います。最近はライブハウスで新しい音楽に出会った時に、こういうのやってみたい!!と思うようになってきて自分にも表現者側の視点があるのだな!と感じました。笑

上記の質問に関連しますが、作詞面では〈思い立ったらすぐに髪を切れるような そんな僕でいれることが今はとても大切さ〉(アイリー)、〈君がそばにいてくれなくても ギターは弾けるもの〉(生活)など、「どんな風が吹こうとも常に自然体でいること」を表した等身大の歌詞が特徴的です。実際にこれらはご自身の性格や心情を反映させたものなのでしょうか?

そうですね。特別意識しているわけではないですが、今の自分を好きでいれるように、なるべく肯定しようとしているだけかもしれないです。笑 前向きと言われたら聞こえが良いですが、ただの言い訳とも言えますね!!

今年8月には1st demo EP『鯖ノ壱』をリリースし、ヴィレッジヴァンガードや各地のCDショップでもプッシュされソールドアウトが相次ぎました。この作品を一言で表すとしたらどのように説明しますか?

なち:『鯖ノ壱』というタイトルに全て込められていると思います。サバシスターの第一歩目、今の自分たちを詰め込んだ1枚です!

ごうけ:壱!って感じです。私たちが今できる最大限が詰まっています。

るみなす:ズバリ「初漁」です! 初めて皆さまに音源を届けられたので! 実はサバはバンド名の由来ではないのですが、店舗でもお魚にまつわる言葉を使ってくださってとっても嬉しいです。笑

アーティスト写真やステージ衣装では、ビッグシルエットやパンツスタイル、曲名にもある「ジャージ」などカジュアルな服装が共通していますが、これらはやはりご自身の楽曲を投影している等意識的なものなのでしょうか? また、「ファッション」と「音楽」にはどのような関係があると思いますか?

なち:私は服大好きで、週2ペースで古着屋に通ってますね! 自分らしさを表現する1つがファッションだと思います。音楽も同じです。ステージ衣装については、私は横山健さんの大ファンなので、Tシャツに短パン!みたいなラフな格好で爆イケプレイをする人に憧れを持ってます。爆イケプレイはできないのでラフな格好だけ意識してます!笑

ごうけ:服は好きですが特に何も意識はしていないです。ライブではただドラムを叩きやすい格好で短パンにTシャツとかです。笑 あとはルーズソックス、レッグウォーマーとかアームウォーマーとかつけてます! 叩く時には外すのでSEの時だけですが笑

るみなす:ファッション! なんとなく好きな系統はありますが、それと音楽が直結しているかは分かりません…。笑 でも普段は暗い色の服装が多いのですがサバシスターの時は明るい色のお洋服が着たくなります!

『musitTV』は各地のライブハウスを巡りながら展開していく音楽番組ですが、これまで特に印象深く忘れられないライブを、その際のエピソードを含めて教えてください。観客としてでも、あるいはプレイヤーとしてでも構いません。

なち:中3の時に観に行ったHi-STANDARDのライブです! 『THE GIFT』というアルバムのツアーで、当時は中学生でファミリー席にしか入れなかったので1番後ろの椅子に座って、タオルを握り締めて、涙を流しました。

ごうけ:amazarashi、Age Factoryです! 本当にかっこいいです。

るみなす:9/29に下北沢SHELTERで開催したサバシスターのツアー・ファイナルは忘れられないライブになりました! ここにいる皆が私たちのことを知っているんだってだけで泣きそうでした。

musitは音楽と様々なカルチャーを掛け合わせながら幅広い層へのリーチを目指すメディアですが、音楽以外で最もハマっているカルチャー(または趣味)について具体的に教えてください。

なち:グラフィックデザインの専門学校に通っているので、デザインの世界には興味があります。1人で美術館に行くこともたまにありますね。あと、服は結構ずっと好きです! 無限に欲しくて困ります。

ごうけ:多趣味なのですが、最近だとレッグウォーマー作りです! いつもライブでルーズソックス風レッグウォーマーを履いているのですが、私の手作りで十数個持っていて、その日のライブの衣装に合わせて履いています。あとは珈琲を挽くこととか、ガチャガチャとか、アニオタなのでアニメを観ること(ヒロアカ(『僕のヒーローアカデミア』が大好きです!)、1人旅行とか、音楽ももちろん好きなのでギター弾き語りも趣味でやっています。 

るみなす:ゲームとかアニメとか好きなものは沢山あるのですが、今はお酒です! 音楽に合うお酒、逆にお酒に合う音楽とかやってみたいです。やらせてください!笑

musit編集部